「白」を活用したマンガアクションエフェクト
みなさんこんにちは。
エキストリーム納豆と申します。
今回はマンガのエフェクト表現、
それも「アクション用の」「白を使った」
ものをテーマとして解説させていただきます。
「白」の視線誘導効果
まず黒や濃い色の中に白いスポットを置くことは、強烈な視線誘導効果があることを覚えておきましょう。
今回挙げていくほとんどの使い方でこの効果が生きます。
また、アクションではないドラマの演出としても「ここに注目せよ」等を読者に投げかける上で非常に有効ですので覚えておいて損はないです。
「白」のアクションエフェクト実例
オーラ
格闘漫画等で一定以上の実力があることを示すオーラ表現。
いわゆるオーラというのは実際には肉眼では見えない(少なくとも私には見えない)ものですが、漫画の上では立ち上る湯気のように描かれるのがよくあるアイコン的表現として確立しています。
ただ魔法のある異世界を舞台にした作品のような場合、魔法的な何らかの力と見分けがつきにくいので「強者が放つ雰囲気」としては使いにくいものと思われます(不可能ではないですが)。
パンチ、打撃
ボクシング漫画風の例。
パンチの軌道、および打点から白く爆発するようなエフェクトを書き入れています。
このパンチ用のエフェクト表現はキックや軽い打撃武器にもそのまま使用できます。
漫画の絵的表現とは描きやすさと記号性と視認性を同時に成り立たせるためのデフォルメを突き詰めたものであり、当然ながらエフェクトもそういう種類の工夫がなされています。
ではここで何を誇張=デフォルメしているかと言いますと、まずパンチの軌道ですね。リアルではこんなに見えるわけがありませんが、わかりやすさと迫力のためにあえて描写しているわけです。
そしてまるで爆発するようなエフェクトが殴られた顔にかかっています。
これは打撃による衝撃を大袈裟に描き、また飛び散る汗なんかとも絵的に融合させているわけです。
この「複数の現象や物を同一のものに融合させて描く」というのが、エフェクトに限らず漫画のデフォルメの上でよく行われている事なのです。
そしてこの白い打撃の軌道と言うのは非常に使い勝手がよく、世界観等を問わずに違和感なく使用できます。
またちょっとしたテクニックとして、背景の代わりに擬音を置いてその上に白い軌道を書くという手法なんかも存在します。
ちょっと特殊(しかし割とメジャー)な例としまして。
東洋武術の達人による打撃は衝撃が正面から背中に突き抜けると言われており、これはそれを漫画的に表現したものです。
背中から白い打点エフェクトを発生させるだけなので描画の労力は上で出したパンチよりも楽なぐらいです。
基本的には決定的あるいは致命的またはそれらに近い一撃の表現であり、食らった側がそのまま敗北するなり「アレを食らってまだ立ち上がる、だと?」からの最終的な局面に展開するなりします。
剣
十分に訓練を積まれた剣は剣先の動きが目で追えないとされており、つまり左上の例も漫画のために見えるようデフォルメされているものです。
刀身に反射した光と切り裂かれた空気を合わせ軌道を見せたエフェクトですね。
物体を斬った表現として白を使う場合は刀身の軌道に沿った斬撃エフェクトそのもので対象に切れ込みを入れる(または輪切り)か、またちょっと凝りたいなら右の図のように土埃のようなものを描くとよいでしょう。
なお剣の達人の表現として「斬った」という動作やその描写すらなく敵が倒れるというのがあります。
あまりにハイレベルすぎて剣先どころか剣を振る動きそのものが敵にとって察知不能だからそうなるのですが、これをやられると剣用エフェクトの出番はほぼなくなります。
槍
槍は刃物にも鈍器にもなりますがその用途でのエフェクトはそちらに譲るとして、ここでは最もイメージ通りの突きについて。
鋭い突きを白エフェクトでやる場合、絵と穂先が一瞬溶け合って混然一体となるような描写となるでしょう。
また突いたらすぐ戻すのが基本なので、軌道の表現としては突いた遠端に穂先の形を残すのもそれっぽい表現となります。
巨大な打撃武器
巨大で重量のある打撃武器は剣や槍のように見えない速度で飛んでくるというより「食らったらただでは済まない」感が一目でわかるニュアンスを出しましょう。
ここでは、軌道が白く見えるのはパンチと同様ながら空気を押しのけて標的に迫る描写のエフェクトを足しています。
また地面を叩く衝撃は同心円状にいくつか発生させるなどすれば迫力が出ます。
地面を破壊までするとなるとまた別の描画上の工夫が必要です。
こういった巨大な打撃武器のエフェクトは大型のモンスターやロボット、またあり得ないぐらい巨体の人間による素手素足の攻撃にも適した表現です。
打ち合い
パンチの応酬の方はリアルな格闘というより漫画的表現です。
拳同士の当たったであろう所に打点の衝撃エフェクトを発生させるだけですが、シンプルで描画の労力が低いながらも戦闘の迫力を出せる表現です。
剣の打ち合いの方は刀身の反射光と切り裂かれる空気に加え、発生する火花もデフォルメで融合される要素に入っています。
人間離れしたダッシュ
人間の身体能力では出せない速力の表現として、地面に衝撃波のような土埃を描くというのがあります。
ここでは巨大な打撃武器の例でも使った押しのけられる空気も加えています。
武器の先端の速度としては鈍重でも人が駆ける速度としてはあまりに速いですからね。
サッカー
サッカーのようなリアルなスポーツの漫画表現においても白のエフェクトは有効です。
ボールを蹴るところなどはすでに解説したパンチと同様のエフェクトでいいですが、ここでは地面を走るところについて。
地面を蹴ったところに土埃っぽい白いエフェクトを書き入れています。
「このキャラはここを走り移動しました」という説明的かつ記号的な表現も兼ねていまして、土グラウンドのみならず芝でも有効です。
コマによっては特定のキャラにだけ地面を蹴るエフェクトを強く付けて「このシーンではこの選手の動きに注目してください」という演出も可能です。
バイク
バイクと言うのはライダーが自分ので風を感じる乗り物であり、その感覚を漫画的にデフォルメするとこのように空気に見立てた白い膜をかぶったような表現になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は「アクション用の」「白を使った」エフェクトというテーマに絞って私が知る物を色々と紹介してきましたが、漫画の歴史の中で発明されてきた膨大な表現技法の中ではほんのごく一部にすぎません。
とはいえこれをヒントにあなたの漫画表現の幅が広がるなら、こんなにうれしいことはありません。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
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