絵本作家デジタル作画を語る/ながしまひろみ×まつながもえ対談【読者と選ぶあたらしい絵本大賞】
いま本当に「読みたい」「読んであげたい」絵本を、あなたの手で創り、あなたの目で選ぶ。
スマホやタブレット、PCからだれもが気軽に参加できる、新しいスタイルのデジタル絵本コンテスト、『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』
本コンテストの開催を記念し、最新のデジタルツールを駆使して創作をされる現役絵本作家に、普段の制作の様子や、デジタル創作ならではのポイント、CLIP STUDIO PAINTの活用機能をお伺いしました。
これまで絵本を描いた事がない方も、ぜひ新しい創作に挑戦してみてください!
プロフィール:ながしま ひろみ
北海道生まれ。マンガ家、絵本作家、イラストレーター。
絵本『まっくらぼん』(©「まっくらぼん」ながしまひろみ/岩崎書店) 、『ぞうくんはいちねんせい』(©「ぞうくんはいちねんせい」ながしまひろみ/アリス館)など
プロフィール:まつなが もえ
第10回MOE創作絵本グランプリ:グランプリ受賞(2021)。
絵本『かっぱまきください!!』(©「かっぱまきください!!」まつながもえ/小学館)、『からっぽのにくまん』(©「からっぽのにくまん」まつながもえ/白泉社)など。
ながしま ながしまひろみです。私は最初に漫画でデビューして、仕事しているところに絵本の編集さんが声をかけてくださって、それをきっかけに絵本を描き始めました。
まつなが まつながもえです。私が絵本作家になったきっかけは、絵本講座に5年ほど通っていて、そこから作品をコンペにいくつか出して、大賞になったものが絵本になってデビューできました。
どうやってお話を考えていますか?
ながしま 私は自分が子どもの頃に感じた気持ちや実際にあったことなどを思い出しながら、それをきっかけに絵本を作るようにしています。
まつなが 私は神社や商店街など自分の好きな場所に足を運んで絵本を思いつくことが多くて、「今日はお話を作る日」というのを決めて足を運ぶようにしています。
クリップスタジオはどう使っていますか?
ながしま クリップスタジオを使い始めて多分5年ぐらいです。漫画を描くためにクリップスタジオを使い始めました。イラストのお仕事もするので、そのラフと下描きにも使っています。
まつなが 私もクリップスタジオを使い始めて丸5年ぐらいです。絵本ではラフから本画の提出まで全部クリップスタジオだけでやっています。
以前はデジタルではないもので描いていたんですが、友達からクリップスタジオをすすめられて使い始めたのがきっかけです。
デジタル制作をしてみて感じたことは?
ながしま クリップスタジオはラフと下描きで使っているので、喫茶店などでラフを描いたり、そういうことができるのがいいなと思っています。
まつなが そうですよね、どこでも絵が描けるというのが隙間時間を使えていいなと思っていて、私もよく気分転換で喫茶店などで描いたりしています。
ほぼデジタルでしか絵を描いていないので、逆に紙で描いている時にデジタルの感覚で「あっ、戻せないんだ」という時があります。
ながしま ありますよね。私は保存しないでキャンバスを閉じちゃったりとか、上描き保存してしまうことがあります。
まつなが データって一瞬にして消えてしまうので、それは恐ろしいですよね。
アナログの質感や原画がある感じとか、そういうのはやっぱりデジタルで描いているといいなって思うことがあります。
ながしまさんがアナログとデジタル両方で描かれているのは、そういう質感を意識されているんですか?
ながしま そうですね、鉛筆の線がすごく好きで、そこだけはアナログにしているんですが、他の作業をデジタルにしています。
最初は全部紙で下描きをしていましたが、紙のゴミと手が真っ黒になるのが大変だったので、デジタルにしてそういうところはすごく便利になりました。
まつなが 私は下描きから最後まで全部デジタルで描いています。
ながしま ボローニャ絵本の原画展に行ったときに、絵本は原画展を開けるし、アナログの方がいいのかなと思っていたんですけど、海外の方でデジタルで描かれている方がすごくいっぱいいて、気にしなくていいのかなという感じがしました。
まつなが 私も最近は振り切っていて、デジタルでとことんアナログっぽく見えるように追求していけばいいのではないか、ということを思い始めました。
ながしま 私も、ものによってはフルデジタルにしてみたいなっていう気持ちでいます。
まつなが アナログだと失敗しちゃったらどうしようって気持ちがあって、びっくりした顔、シュールな表情などの顔の表情が思い切って描けなかったんですけど、デジタルだと勢いのある表情や動きが描けるようになって、私は絵の感じがすごく変わったなっていう感覚がありました。
ながしま 私は鉛筆のラインが今はアナログの方が好きで、ブラシを自分でカスタマイズしたりしてデジタルでも同じようなタッチが出せるなら移行してもいいのかなっていう感じで思っています。
塗りの部分に関しては、今はデジタルとアナログのテクスチャをレイヤーで重ねて作ったりしているんですけど、全部デジタルでも水彩ブラシや色鉛筆ブラシとか色々あるので、それを組み合わせていけるのではないかなという風に考えています。
まつなが 私はクリップスタジオの中のツールを1つだけ使って、重ね塗りと力の入れ加減だけで絵を描いています。
初めの頃は色々なツールを使ってみるのがいいかなって思っていたんですけど、それを使いこなしすぎてしまうと、それこそデジタルで描いた絵みたいになってしまうので、本当に1つだけのツールで極力アナログに近い感じの力加減で描いていくようにしたら、絵からデジタルっぽさがなくなっていくのではないかなっていう風に思っています。
普段の制作方法をおしえてください
ながしま 私はiPadでラフと下描きを作成して、それをプリントアウトして、トレース台で透かして画用紙に鉛筆で主線を描いて、それをスキャンして取り込んでPhotoshopで加工してPhotoshop上で着彩をして。
それをさらにプリントアウトして、またトレース台でアナログの水彩タッチだけを描いて、それをまたスキャンして取り込んで…、とレイヤーをいくつか使って全部Photoshop上で最後に合体するみたいなすごくめんどくさいやり方をしています。
まつなが 私はA4サイズのiPadProとパソコンを使っていて、パソコンは基本的に文字を打つのが便利だからっていう感じで文字を打つことでしか使っていなくて、あとは全部iPadのクリップスタジオで制作しています。
パソコンの方でだいたいの位置を考えながら文字だけを打って、その文字を画像にして、それをiPadのクリップスタジオ上に配置して使っています。
ながしま 私はまずメモ帳とかでシナリオを考えて、それをクリップスタジオでページごとに「あっ、このページはこのセリフかな」みたいな感じでポンポンとテキストを置いていって、それで構成が決まったらiPadのクリップスタジオでラフを描き込んでいって色々調整しながら作っていくような感じです。
まつなが 私も流れとしては似ているんですけど、初めにテキストだけをワードで打って、それを絵本なので見開きで15分割して、その文章を頭に置きながらまずラフを描いていって。
ラフがある程度描き終わったら文字を乗せていく作業をして、文字を乗せながら、「あっ、この辺はもうちょっと空とか空白があった方がいいな」とか「湯気で文字にしよう」とか考えながらどんどんラフを修正していくみたいな描き方をしています。
ながしま 私は鉛筆でアナログで描いたものをスキャンして主線として取り込んで調整しているんですけど、ちょっとした歪みみたいなものが気になったり、平行じゃないことが気になることがあるんですが、それをデジタルツールで、クイッと直したりします。
まつなが 湯気を描く時の話になってしまうんですけど、まず最初に完成した絵の上からレイヤーを分けて、白い色で手の力を抜きながらシャシャシャって上から白を乗せていくと、いい塩梅に絵が曇ってきて湯気っぽくなったりとか。
多分アナログだと完成した絵の上に透かした白を乗せていくことができないと思うので、デジタルならではですね。影なども上から描き込んでいます。
作品を完成させる秘訣は?
ながしま もともと小さい頃から物語をたくさん作っているということではなくて、本当に締め切りがあったからできたという感じです。なので、賞に応募すると決めてやるとか、そういうのがあるとやりやすいんじゃないかなと思いました。
まつなが 私はコンペに7、8回出したんですが、コンペはラフとかでは通らなくて、完成した本の形で出さないと審査員の人に見てもらえないので、それが完成したものを作るいい訓練になりました。コンペに出すことが目標みたいな感じで、それをモチベーションにしていたところがあります。
絵本を描いていてよかったことは?
ながしま 絵本を描いていて良かったなっていうのは、知り合いのお子さんに読んでもらってその感想をもらえたりとか、イベントとかで読んでくださった方にお会いして、「良かったです」と言ってもらえるのがすごく嬉しいなと思いました。
まつなが 私は絵本作家になったからこそ会えた人がすごくたくさんいて、それこそ編集さんもそうですし、自分が小さい頃に憧れていた作家さんとお話ができたりして、そういう人との繋がりが絵本作家でデビューしてからすごく増えたので、本当に自分にとって一番幸せなことだなと思っています。
応募する人へ応援メッセージ
ながしま 私自身がそうなんですが、肩に力が入ってしまうとうまくできなくなるタイプなので、「大作を作ってやろう」という感じではなく、肩の力を抜いて、今思いついたものをちょっと送ってみようかな、くらいの感じで作るといいんじゃないかなと思いました。
まつなが 出版に繋がるコンペは、数あるコンペの中ですごく貴重で大きなチャンスだと思います。自分が絵本作家になったら…ということを思い描きながらチャレンジをし続けて欲しいです。
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