【準備から仕上げまで】かわいいヴィネット風イラストの描き方🌸

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Reinca(リンカ)

Reinca(リンカ)

■ヴィネット風イラストとは?


▼はじめに

はじめまして! リンカと申します。

今回は、かわいくて映えるヴィネット風イラストの描き方を紹介します。

「描いてみたいけど何から手をつければいいのかわからない……」

そんな方に向けて、準備から仕上げまでのコツを解説していきます!

 

まず、ヴィネット風イラストとは何なのでしょうか?

簡単に言ってしまえばキャラクター+箱庭風ジオラマを組み合わせたイラストのことです!

小さな世界を切り取ったようなミニチュア感があり、かわいくて映えるのが特徴です。

上のサンプルイラストのような感じですね。

ソーシャルゲームなどでもよく見るキャラクター+背景のイラストだとざっくり捉えてしまって構いません。

 

ミニチュア風のかわいらしさもありながら画面映えもするというかなり描けば描くだけお得なイラストになっています。

アクリルスタンドやシールなどのグッズにもしやすいイラストなので、配信者さん用にもオススメです。

 

でも、いきなり描くのは少しとっつきづらいと感じるかもしれません。

 

「ヴィネット風イラストを描いてみたいけど、何から始めればいいのかわからない」

「背景を描くのが苦手で、キャラと馴染ませるのが難しい……」

「キャラクターが浮いてしまい、全体のバランスが取れない!」

 

このTIPSがそんなあなたの創作の一助になることを祈ります。


↓今回の記事で描いたヴィネット風イラストです。


▼準備①:ヴィネット風イラストの構造を理解する

ヴィネット風イラストはおおよそ5つの要素に分かれています。

レイヤー構造の上(手前)から

 

  • 前景→キャラクターより手前にあるオブジェクト(例:草や花)

  • キャラクター→主役のキャラクター部分

  • 中景→キャラクターのすぐ後ろのオブジェクト(例:フェンス、郵便ポスト)

  • 土台→足元となるベースの部分(例:足元の地面)

  • 遠景→一番遠くの背景(例:空や山)

となります。

↑水色で囲まれてるのが前景、赤色で囲まれてるのがキャラクター、青色で囲まれているのが中景、緑色で囲まれているのが土台、紫色で囲まれているのが遠景になります。


要素ごとにレイヤーを管理していくと作業がしやすいので、作業をするときはまずこの5つ用のレイヤーフォルダを以下のように作ってしまうのがいいと思います。

場合によってはこれに加えてエフェクトを追加して画面を華やかにする場合もあります。ご自分の作りたい画面に合わせて適宜フォルダは足していってくださいね。

 

ヴィネット風イラストの要素を理解するメリットは、画面の中に遠近感を生み出す設計をまず想像しやすくなることです。

 

「どこを手前にして、どこを奥にするか?」を意識するだけで、自然な遠近感が生まれます。

例えば、前景の草花を大きめに描き、遠景の山を小さく描くと、より奥行きのある画面に見えます!

 

次はこの構造を前提に、まずはヴィネット風イラストを描く練習をしてみましょう。


▼準備②:ヴィネット風イラストを描く練習をしてみる

いきなり要素の多いイラストに挑戦すると心が折れやすいので、最初にキャラクター+土台のシンプルな習作を作ってみましょう。

 

ヴィネット風イラストは基本的に上から地面(土台の上)を見下ろす構図のイラストを描くことになるため、パース定規を用意するところから始めます。

 

このとき、三点透視を使うと、下に行くほどすぼまるパースがつき、「ミニチュア感」や「かわいいデフォルメ感」を演出できます。

特に極端なパースをつけると、視線誘導が強まり、動きのある構図になるので個人的には好きです!

※こちらの講座で使用したパースを無料ダウンロードできます。資料にどうぞ。


まずはこのパース定規を使って白い箱を描いてみましょう。

ざっくり形を取ります。

地面との設置面の部分を濃いめにすると結構それっぽく見えます。

 

ここにキャラクターを座らせたらヴィネット風イラストの習作は完成です。

ではキャラクターのイラストを使い回し、同じパース定規を使って他の土台を描くことで様々なヴィネット風イラストの練習をしていきましょう。


まずは木箱。

↑木箱は白い箱のアタリを下描きにしながらパーツやテクスチャを描き込んでいきます。

特に、角の影や木目の方向を意識すると、立体感が増します!


円筒を描く場合は先にパースに合わせてアタリを描いておきます。

円筒の円形は直接描画の楕円ツールを使いますが、結構ツール自体に癖があるというか、使いこなせるよう慣れるまでの時間に個人差があると思います。

 

楕円ツールのポイント

①縦横比を 1:1 に設定→真円を描きやすくする

②「確定後に角度調整」にチェック→微調整しやすくなる

③「中央から開始」or「角から開始」→使いやすい方を試してみる

 

自分に合った設定を見つけるまで、色々試してみてください!

↑縦横指定を比率指定1:1にしておくことによって、パース定規にスナップした状態で真円を描くことができます。

↑「確定後に角度を調整」のチェックは必須だと個人的には思っていますが、自分が使いやすい方で構いません。

中央から開始にするか、角から開始にするかは個人によって手触りが全く異なると思います。

↑パース定規と楕円ツール、Shiftキーを駆使することでなんとかアタリを描くことができました。

 

あとは白い箱と同様に形を取って色を乗せて円筒の形にします。

↑この円筒は後で他の土台のアタリにできるので取っておきましょう。


次に「積み重なった本」を描いてみます。

↑本は形状の正確さより、乱雑に重ねることを優先してシルエットのラフを作っていきます。

 

積み重なった本の描き方のコツ

  • 形の正確さより、シルエットのバランスを意識!

  • わざと少し傾けることで、より自然な「積み重ね感」を演出できる。

  • 本の厚みをランダムにすると、よりリアルな印象に。

↑下塗り段階。色分け以外に簡単な影やハイライトも描いておくとあとの作業が楽です。

↑色塗り後。ヴィネット風イラストの場合、ざっくりとした背景の塗りの方が映える場合もあるので自分の描いたキャラに合わせて色々塗りを試してみると楽しいです。


次は円筒のアタリを再利用して、キャラクターを食べ物に座らせます。

 

先ほど作った円柱のアタリを遠近ゆがみツールでさらに下すぼまりに変形し、カップケーキの形にしていきます。

食べ物の描き方については詳しいTIPSがたくさんありますので、こちらでは割愛しますが、「影の質感」に注目するだけでも、リアルさが増します。

 

例えば……

 

  • クリームやチョコレートなどの光沢感のある部分は、影をぼかして柔らかくする。

  • 焼き菓子のようなマットな質感の部分は、くっきりとした影を入れる。

これだけで、ぐっとリアルな食べ物の質感に近づきます!

 

キャラクターと土台を馴染ませるには、キャラクターが土台に接地している部分の影の色の工夫がカギになります。

キャラクターの影の色を 「土台の質感に合わせて変える」 ことで、より自然に馴染ませることができます。

 

  • 本の場合→紙の白さや冷たい光を反映するため寒色系の影(青みがかったグレーなど)を使う

  • 食べ物の場合→温かみや光の拡散を意識し暖色系の影(オレンジやブラウン系)を使う

 

この影の色の違いだけで、キャラが自然に土台に座っているように見えるようになります!

更に環境色をキャラクターに塗り込んでいくとさらに馴染むのですが、これはこの後の本番の項目で解説します。


エフェクトについても、こちらで軽く説明しますね。

 

本やカップケーキが台座の練習イラストにエフェクトを舞わせたり、グラデーションマップを使って雰囲気を出してみます。

本のヴィネットには寒色系のグラデーションマップと星のエフェクト。

カップケーキのヴィネットには暖色系のグラデーションマップにハートのエフェクト。

 

エフェクトを入れるときのポイントは、「その場の空気感を表現すること」です。

例えば、桜の花びらを舞わせると「春の温かみ」、雪の結晶を加えると「冬の冷たさ」など、シチュエーションに応じたエフェクトを選ぶことで、よりヴィネットらしい世界観が作れます。

 

簡易的な作例ですが、エフェクトや色調整の仕上げを加えることで、箱庭らしさがグッと際立ったのがわかると思います。

 

以上のようなキャラクター+土台の関係を構築をしていくのがヴィネット風イラストを描く際の第一歩となります。

この次の項目では、ヴィネット風イラストを描く前のコンセプト決めやオブジェクト案の出し方を解説します。


▼準備③:ヴィネット風イラストのアイデアを整理する

ここまでで、ヴィネット風イラストの基本構造を頭と手で覚えていただきました。

ここから本格的な制作作業に入る前に、ヴィネット風イラストの設計書を作ります。


・設計書①:メインとなるキャラクターを決める

ヴィネット風イラストの世界観の主軸になるのは主人公、メインとなるキャラクターです!

 

今回の記事ではキャラクターを用意するところから開始します。

すでにキャラクターを用意済みの方はこの項目をスキップしてください。

 

この記事では4つのヴィネット風イラストをサンプルとして作成するため、4人のキャラクターを用意しました。

全員ファンタジー系のキャラクターです。男女比は2人ずつにしました。

メインとなるキャラクターを決めたら次にテーマを決めます。


・設計書②:ヴィネットのテーマを決める

先に決めたキャラクターに沿ってテーマを決めていきます。

ここで決めるテーマは、ヴィネット風イラストの場合、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)に沿って決めていくと後で構成がしやすいです。


なぜ5W1Hを使うのか?

それはヴィネット風イラストキャラクターがどこで何をしているかが重要だからです!

 

5W1Hを使って整理することにより、

  • 絵にストーリー性が生まれる。

  • どんなオブジェクトが必要かが自然に決まる。

というメリットが生まれます。

 

例えば、「夜の森で魔法を使う魔法使いのヴィネット」 を考える場合だと、

 

  • いつ?→夜

  • どこで?→森の中

  • 誰が?→魔法使いの少女

  • 何を?→魔法の杖を掲げて光を灯す

  • なぜ?→夜道を照らすため

  • どのように?→ふんわり光る魔法のエフェクトを出す

こんな風に整理をしていくと、ヴィネットの構成が明確になります!


ヴィネット風イラストは先述の通り箱庭としての側面を持ったイラストのため、キャラクターがどこで何をしているのかが重要となります。

「ただなんとなくそこに立っている」よりも、「物語性のある絵」にした方が魅力が強くなるということですね。

 

そのキャラクターは、いったいどのようなシチュエーションにいるのか?

この点を押さえておくことで、ヴィネットの方向性を明確にできます。

 

以上を踏まえてあなたのキャラクターにヴィネット風イラスト用のテーマを与えてください。


私は用意した4人のキャラクターに以下のようなテーマを設定しました。

参考としてご覧ください!

 

前提メモ:全員のシチュエーションをばらけさせたい、昼と夜を2人ずつ・室内と室外を2人ずつにする。

 

①冒険者風の男キャラクター

昼の草原でモンスターを倒すために剣を振り上げている。

 

②メイド風の女キャラクター

昼のキッチンで料理を作るためにあわただしくしている。

 

③執政官風の男キャラクター

夜の執務室で紅茶を飲みながら本を眺めている。

 

④魔法使い風の女キャラクター

夜の森で夜道を照らすために魔法で光を灯している。


テーマを決めたら次にヴィネット風イラストに配置するオブジェクトのアイデアを出していきます。


・設計書③:配置するオブジェクトを決める

前の項目でシチュエーションが明確になったことにより、絵に何を描いたらいいのか・何を描きたいかのアイデアが色々と浮かび上がっていると思います。

そのアイデアを5つの要素(前景、キャラクター、中景、土台、遠景)ごとにどんどん出しましょう!


・アイデア出しのヒント

①キャラクターの性格や職業に合ったものを考える。

例:執政官なら書類や手紙、メイドなら掃除道具や食器など。

 

②シチュエーションの空気感を強調するものを入れる。

例:夜なら光る蝶やホタル、冒険なら剣戟のエフェクトなど。

 

③「足りない部分」を想像して埋めていく。

例:キャラクターが座っているなら、周囲の床や影の質感も重要など。

 

こんな風に、キャラやシチュエーションに合ったオブジェクトを考えると、より要素が詰まった魅力的なヴィネット風イラストが作れます!


ここで出すアイデアは多ければ多いほどいいです。なぜなら実際にヴィネットに盛り込む、という段階になったときに絵のバランスの都合でオブジェクトを足したり引いたり、入れ替えたりの必要が絶対出てくるためです。

思いついたキーワードを書き連ねてリストを作成すると、実作業中にアイデアに困らなくなります。


私の作成したオブジェクトのアイデアリストは以下になります。

これは人によって整理しやすい方法でまとめたほうが絶対に良いので、あくまで資料として見てください。

添えてある画像はあくまで現段階ではイメージのデッサンです。配置はあとで調整前提のものとなっています。


①冒険のヴィネット風イラスト

前景:モンスター、モンスターの死骸、植物。

キャラクター:ジャンプして切りかかっているポーズ、剣戟エフェクト。

中景:樹木、戦闘を見守っている小動物(うさぎなど)。

土台:草原、砂地、少し石や岩など、土台側面に化石とかあってもいいかも。

遠景:雪冠の山脈、青空、森。


②料理のヴィネット風イラスト

前景:完成した料理、皿、果物。

キャラクター:慌ててつまずいて皿をひっくり返しかけているポーズ、宙を舞うパン。

中景:調理中のキッチン、かまど、建物の壁や窓、窓から差し込む日光エフェクト。

土台:石畳の床、水がこぼれているところもある、建物構造がちょっと見える。

遠景:窓の外のにぎやかな街並み、天井。


③読書のヴィネット風イラスト

前景:書斎机、天球儀、重なった本、羽ペンセット。

キャラクター:紅茶を飲みながら本を広げるポーズ。

中景:椅子、壁一面の本棚、本棚のはしご、建物の壁や窓、窓から差し込む月光エフェクト。

土台:フローリングの床、絨毯、建物構造がちょっと見える。

遠景:窓の外の夜空、月、天井。


④魔法のヴィネット風イラスト

前景:背の低い木々、きのこ、花。

キャラクター:魔法の杖を掲げて魔法を使っているポーズ、きらきら光る魔法エフェクト。

中景:茂み、森。

土台:土や苔。

遠景:星空。


ヴィネット風イラストに何を並べるのかを大体決めたら作業を開始します。

 

ここまでは設定と練習でしたが、いよいよ本番です。

分からないところがあれば、読み返しながらゆっくり進めてくださいね。


※ここまでのまとめ

  • ヴィネット風イラストの構造を理解しよう。

  • 簡単な台座とキャラクターだけのヴィネット風イラストの基礎を描いてみよう。

  • 自分が描きたいヴィネット風イラストの情報をまとめよう。


■ヴィネット風イラストを描いてみよう!

ここから本格的にヴィネット風イラストを描いていきます。

まず必要になるのはラフスケッチになります。

▼工程⓪:ラフスケッチを作る

描き進めたり、参考資料を集めていくと気づくかもしれませんが、ヴィネット風イラストは大まかにドールハウス風(ミニチュア風)と盆栽風に分けられると私は考えています。(これはあくまで私自身の経験則に基づくものです)

 

  • ドールハウス風:壁や背景までしっかり描き込み、箱庭感の強い「閉じた世界観」を表現するイラスト。

  • 盆栽風:壁を描かず、上下左右に開けた「開放的な世界観」を意識したイラスト。

どちらが優れているということはなく、自分の描きたいテーマやキャラクターに合わせて選ぶと良いでしょう。

 

その上で、今回私は4種類のイラストをシリーズとして統一感を持たせたいと思い、以下のような方針で土台のデザインを決めました。

 

  • キャラクターが接地するベースは四角形、その下にある土台部分は円形。

  • 壁は必要に応じて描く。

  • 手前の角を削り、キャラクターネームプレートを設置してシリーズ感を出す。

「ミニチュア系」「盆栽系」の要素をミックスしたハイブリッド型としてまとめてみようと思います。

そして以上を踏まえて作成した4キャラ分のラフスケッチが以下になります。

作業のしやすさ(最終イメージの想起)のために最初からカラーラフで作成をしています。

 

今回はデフォルメキャラクターで作例を作りましたが、普通の頭身のキャラクターで描いても、もちろんヴィネット風イラストはとても可愛く仕上がります。

 

次の項目からの個別作例を参考にしつつ、応用を試してみてくださいね。


▼冒険のヴィネット風イラストの描き方

こちらが、冒険のヴィネット風イラストのラフ全体になります。

昼の草原の爽やかさと、冒険のワクワク感を意識したヴィネット風イラストです。

冒険者風のキャラクターの勇敢さと、背景の小動物たちの可愛らしさも引き立てながら仕上げていきましょう。


▼工程①:ネームプレートを描く

最初に共通パーツであるネームプレートを描いていきます。

金属光沢と立体感を強調しつつ、最後に文字を彫り込んで仕上げます。

 

基本的な金属の描き方は以下の通りです。

詳細は他の方のTIPS記事がありますので、ここでは工程の概要のみご紹介します。

 

①線画を整える。

②暗めの色で塗り潰す。

③ライティングを意識しながら様々な色を乗せる。

④主線の色を変える。

⑤主線の色で立体感を意識した面を作る。

⑥金属の傷やへこみを描き込む。

⑦全体の色を整える。

⑧コントラストを調整する。

次に文字を描き入れていきます。

 

①ベース色を使い、文字ツールで文字を配置し、円形配置で角度をつける。

②その文字にクリッピングで曲面に沿ったグラデーションを乗せる。

③上部に影色を乗せる。

④下部に明るい色を乗せる。

この後、仕上げの最後に環境色を加えて微調整しますが、ネームプレートは完成です。

ここではついでに他のキャラクター分のネームプレートもまとめて作成していきます。

ネームプレートが完成しました。次の工程に移ります。


▼工程②:遠景を描く

次に一番奥に位置する遠景を描いていきます。

遠景は一番奥に位置する場所やオブジェクトのため、基本的には主線を使わずに描いていきます。

 

一番面積が広い空は、他のオブジェクトに隠れきっていない場合、輪郭部分のシルエットが重要になります。

ヴィネットのテーマに沿ったモチーフの形にすると、世界観が際立って可愛くなります。

今回の冒険のヴィネット風イラストは自由なイメージを優先したいので雲のような形でシルエットを描いていきますが、花をモチーフにしているなら花形、夜空なら星形……など様々な形を試してみてください。

遠景は極端に空気遠近を利かせて描いていくと小さいヴィネット風イラストの中でもスケール感や奥行きが一気に出せるので、「遠くのものほど彩度の低い青~灰色」「手前のものほど物質の固有色がわかりやすい彩度」で色を乗せて描いていってください。

遠景の要素同士がキャラや土台に被りすぎないよう、バランスを見ながら整えたら、次の工程へ進みます。


▼工程③:土台を描く

続いてキャラクターやオブジェクトの足元に位置する土台を描いていきます。

土台は他のオブジェクトで大部分は隠れてしまう場所なので、後で調整を加えることを前提にざっくりと要素をまとめて描くといいでしょう。

他のオブジェクトの影を足したり、テクスチャを足すのは後からのほうがバランスがとりやすかったりします。

色を乗せ終わったら、ヴィネット風イラストでキャラクターの次に重要な中景を描き込んでいきます。

▼工程④:中景の木を描く

今回の冒険のヴィネット風イラストで描く木は右側に大きなものが一本、それ以外は少し離れた場所にうっすら描く予定です。

ここではヴィネット風イラストを印象的にするためにうねったり、根元に岩を抱えた特徴的な樹木を描いていくことにします。

普通の木ならばパースに沿ってまっすぐな木を描いたほうがいいのですが、今回の木のような位置づけの木は、まるでそれ自体がキャラクターのような個性を持たせてしまったほうが画面が映えます。

木や植物、岩の描き方は他の方の講座をご覧ください。

今回は木の根元にウサギも描きます。可愛いので!

遠景と中景の間にはさらにその間にあるイメージで樹木や植物を描き足していきます。


▼工程⑤:キャラクターを描く

ヴィネット風イラストの主役になるキャラクターを描いていきます。

この時注意していただきたいのは、この段階では下塗りまでしか進めないということです。

(光源に関わらず必ずできる陰影や立体感を表現するための陰影は描きます)

 

キャラクターの配置を先に行っておかないとヴィネット全体のバランスが整えづらいものの、ライティングや環境色の描画は他の背景が完成してからでないと描きづらいため、後で全体のバランスを調整しやすくします。

 

もちろんキャラクターは読んでいる方もこだわりのある部分だと思いますので、自分でこの方が描きやすい! というやり方があればそちらを優先してください。

今回のキャラクターは主線ありの状態で描きます。またモンスターもキャラクターとして描いていきます。

存在感を出すために一番外のシルエットの輪郭を若干太くしたり、要素の重なりを意識してください。

色塗りはここでは要素ごとにレイヤーをわけて下塗りをしてください。

バランスを整えたら、キャラクターは一度ここで終え、他の工程へ進みます。


▼工程⑥:前景を描く

キャラクターの手前に回り込むオブジェクトを描いていきます。

オブジェクトとしてはネームプレートの次に前面に出ているオブジェクトなのでこの前景にも太めの主線を描きます。

ただ印象はキャラクターより控えめにしたいので、主線の色トレースは忘れないようにして画面を馴染ませてくださいね。


▼工程⑦:剣戟エフェクトを描く

今回のイラストは剣を振りかぶる冒険者がいるので、剣戟エフェクトを追加していきます。

エフェクトは不透明でも半透明でもお好みで構わないのですが、今回は半透明で仕上げていきます。

単調な印象にならないよう、シルエットを遊ばせてみました。


▼工程⑧:ライティングや環境色を描く

ほとんど仕上げの段階です。ライティングや環境色を描いていきます。

主に中景、キャラクター、前景、ネームプレートに対し、位置関係に基づく描写や色を足していきます。

 

今回は晴れた日の屋外なので、影は青みを帯びていたり、太陽光を意識した黄色がかった光が当たっています。

オブジェクト同士も色が影響し合うことを意識してみてください。

またリムライトを加えると、ゲーム的な画面になっておすすめです。

重なっているオブジェクトに隙間があるなら、スポイトで拾った色をほんの少し彩度低め・明度高めにして空気感を出してみるのも楽しいです。


▼工程⑨:最終調整を加える

ここまでの工程で描いた部分で、不足を感じた箇所があったら描き加えたり削っていきます。

 

例えば地面と設置したオブジェクトの隙間に濃い色を置いてみたり、オブジェクト同士のコントラストが弱くて距離感がわからない部分があったらうっすらエアブラシで距離感を足します。

その他気になる部分があったらどんどん描き足していきます。

ネームプレートの落ち影も忘れず調整してみてくださいね。

納得するまで描き込んだら完成です。


▼完成:冒険のヴィネット風イラスト

完成した冒険のヴィネット風イラストの完成図がこちらになります。

このまま料理のヴィネット風イラストも描いていきましょう。


▼料理のヴィネット風イラストの描き方

こちらが、料理のヴィネット風イラストのラフ全体になります。

昼時の暖かなキッチンの雰囲気を出していきます。

冒険のヴィネット風イラストで説明した部分についての説明は省略し、新しい項目についてを解説しますね。


▼工程⑩:部屋と家具を描く

冒険のヴィネット風イラストは屋外のイラストでしたが、今回は屋内を表現していきます。

屋外を描く部分は窓のみなので、まずは窓を含めた家具の線画を描きます。

家具が描けたら別レイヤーで石壁と板目の床の線も描きます。

別レイヤーで描くことによって、窓からの光源を中心とした各面全体の陰影を描いた後に細部を描き込みやすくなります。

線画が描けたらパーツを色分けします。石と目地の部分は後から描き込みの種類(質感や陰影の有無)が異なるため、別レイヤーで分けておくと調整しやすくなります。

後での作業のやりやすさを重視して、この段階で窓からの光を意識した面ごとに色を塗り分けます。

こうすることによって、後ほど木目を描き込むときにクリッピングマスクによる管理がしやすくなります。

色が塗れたらそれぞれの面に大まかなグラデーションをかけます。

今回は光源が窓のみのため、天井や床などの水平な面は窓から遠ざかるほどに暗くなるようにし、壁や家具の側面などの垂直な面は下から上へ暗くなるグラデーションを乗せていきます。

小さい面は、曲面のように見えてしまうためグラデーションを乗せません。

グラデーションを乗せたら今度はレンガのテクスチャや木目のテクスチャを加筆します。

屋外の自然物に比べるとどうしても人工物はのっぺりとした印象になりやすいので、この段階で情報量を増やしていきます。

石壁についてはほんの少し凹凸も描いたほうが可愛いので、主線の色トレスで凹凸を表現します。

この時、手前側を太くして厚みを表現し、奥側を細くして遠近感を出します。

上下の線についてはキャラクターの目線の高さを基準として、厚みが見える側を太く、逆に見えない側を細くして、画面の単調さを減らします。

家具や壁・床の影もこの段階で描きます。

引き続き窓からの光源に意識して、幅や角度、ぼかしを調整していきます。

かなり空間の雰囲気が出てきたので、線画レイヤーの上からお好みの発光をするレイヤーで窓からの光を表現します。別レイヤーでレンズダストを加えるとさらに雰囲気が出ます。

部屋の雰囲気がかなり出ました。次はこの部屋に食器を描いていきます。


▼工程⑪:食器を描く

ヴィネット風イラストはパースが特徴的なので、目測でそのまま食器などの小物を描くと、どうしても歪んでしまったり、バランスが崩れてしまいやすいです。

ここで登場するのが3D素材です。CLIP STUDIO ASSETSで様々な素材がダウンロードできますので、自分のイメージに合う素材を探してアタリとして使います。

実際に配置したイメージが以下になります。

元々用意していたパースと3D素材のパースを合わせるには、両方を表示した状態で3D素材のパースレイヤーを選択し、消失点(VP)が元のパース定規と合うように位置や角度を調整します。

こうすることにより多少ズレたとしてもほとんど違和感のない状態で作業ができます。

線画にするにはLT変換を使ってもいいのですが、今回は画面全体の雰囲気を統一させたいので3D素材をトレースします。

特にLT変換は細部まで線が拾われがちなので、画面全体に対して線がごちゃごちゃしすぎないよう、あくまでアタリとして使います。

また今回は皿の上に料理を配置したいので、そういった部分も描き足していきます。

棚の上に飾っている絵皿がそのままだと少し寂しいので絵皿にします。

まずは皿の柄を対称定規で描いていきます。

イメージはスペインの絵皿なので、資料を見つつ、画面に対して細かくなりすぎないように注意をして描いていきます。

柄が描けたら、皿に対して柄レイヤーを変形させて乗算でクリッピングした後、中央(皿のへこみ)あたりをゆがみツールで少しずらして馴染ませます。

書き足した食器類の陰影や光沢を描き足したらこの工程は完了です。

次はキャラクターを描きます。描き方は冒険のヴィネット風イラストとほとんど同じなので、線画と色分けまでま説明を割愛して進めます。


▼工程⑫:逆光のキャラクターを描く

今回のキャラクターは背中から窓の光を受け、顔側に影ができる構図になります。

折角なので今回は逆光で仕上げていきます。

まずは雰囲気を見るためにキャラクター全体にざっくりと大きな影と光を配置し、明暗のバランスを確認します。後で細部を調整する前提なので、この段階ではあまり細かく描き込む必要はありません。

キャラクターのベースカラーをまとめたレイヤーフォルダに、黄色のオーバーレイや灰色の乗算のレイヤーをクリッピングして、影と光を重ねていきます。

顔が暗くなってしまっているので、乗算レイヤーにほんの少し明るい暖色を乗せて色味を調整します。これだけで結構雰囲気が出ます。

簡単な処理ですが、良い雰囲気になったのでこの状態を活かす簡単な色塗りで今回はキャラクターの完成とします。いつも通りの描き込みを最小限行って仕上げます。


▼工程⑬:ネームプレートの装飾を描く

バランスを見ながらネームプレートの周りに装飾を描いていきます。

今回はキャラクターの雰囲気に合わせ、生花とベリーをモチーフに配置しました。

書き込みを加え、仕上げたら完成です。


▼完成:料理のヴィネット風イラスト

完成した料理のヴィネット風イラストの完成図がこちらになります。

仕上げにあたってさらにエフェクトを追加しました。温かみと楽しさを演出するために丸い形を多めに使い、キッチンに漂う香りや光をイメージしています。

次は読書のヴィネット風イラストを描いていきます。


▼読書のヴィネット風イラストの描き方

こちらが、読書のヴィネット風イラストのラフ全体になります。

夜半過ぎの穏やかな空間を描いていきます。

描くために必要な3D配置などの情報はここまでの2枚で説明しているので、ここでは補足的な解説を行います。


▼工程⑭:キャラクターの大きさを調整する

現在のラフの段階でこれまでの2枚に比べてキャラクターがやや小さいことに気づきました。

キャラクターの大きさは、そのまま絵の中での存在感や視線誘導に大きく影響します。

そこで、画面全体の印象を整えるため、キャラクターのサイズを調整していきます。

今回は、オブジェクト同士の位置関係や画面全体のバランスを見ながら、キャラクターと椅子だけを拡大しました。

ついでに、背景の月も天球儀と同じくらいのサイズ感に調整し、主張しすぎないよう小さくしています。

キャラクターのサイズ感一つで、イラスト全体の印象は大きく変わります。

迷ったら、思い切って大きめにしたり小さめにしたりしてみるのも一つの手です。


▼工程⑮:光源が複数ある空間を描く

今回のイラストには、「ランプ」と「月」という2つの光源があります。

つまり、1つの光源だけでなく、複数の光源が存在する空間を描くことになります。

ランプの光源は暖色系で、室内から人物や家具を照らし、温かみと奥行きを演出します。

一方、月の光源は寒色系で、外から室内に差し込む光として、空間の広がりや静けさを表現しています。

さらに、暗めの部屋の中では、手前の小物や机の存在感をわかりやすくするために、補助的な光源を加えると情報整理がしやすくなります。

ここでは、全体の色調を壊さないように、弱めの紫系の光を手前下に配置し、立体感を補強しています。

まずはランプの光源でできる影を描いていきます。

ランプの光源は画面左側、キャラクターより手前にあり、机の上にあるので、遮蔽物が多いものの、部屋全体を照らします。

ランプを中心に放射状に広がる光を意識しながら想像しながら乗算レイヤーで影を置きます。

影を置いたら次はランプの上から光レイヤーを追加します。

おすすめの描き方は、まず加算(発光)レイヤーで明かりの中心に小さく強い光を乗せます。その後、エアブラシを使って徐々に薄くなるよう段階をつけて光を広げていきます。この上にさらに覆い焼き(発光)レイヤーを足すとより光ってる感が出せます。

このランプの光を参考にしながら、机の上や他の部分にも光源からの光を当てていきます。

ランプの光は、近い場所ほどはっきり、遠い場所ほどぼんやりと映ります。

エアブラシのサイズで使い分けるなどして光の距離を意識すると空間が出ます。

今度は月の光でできる影と光を描いていきます。

月は屋外から室内に光を射し込むため、部屋の奥の右側の壁や、床のごく一部にのみ影響します。

また、光の性質としては、ランプと異なり直線的で柔らかく、光が広がる範囲は限られており、キャラクターの背後や壁の装飾部分にわずかに回り込む程度です。

特に重要なのはリムライトの表現になります。

月の光は寒色系の淡い光として、窓枠、天球儀、机の端や本などのエッジ部分に沿って当てていくと、画面の奥行きや陰影が引き締まります。

あくまで「月の光は柔らかく、鋭すぎない」ことを意識しながら、不透明度を下げた覆い焼き(発光)レイヤーやスクリーンレイヤーを使って微調整してみてください。

最後に、手前下から弱い紫系の光を置いていきます。

この光は、ランプや月とは違い、空間全体の立体感を補助するためのものです。

非常に弱い光なので、これによってはっきりとした影は発生しません

主に机の側面やティーセットの縁など、ランプの影で暗く潰れがちだった部分に、輪郭を縁取るようにうっすらと光を当てていきます。

紫の色味が他の光源と干渉しすぎないよう、透明度やレイヤーモードを調整し、ふんわり浮かび上がる程度に留めてください。

複数光源を使うことで、空間に奥行きやドラマ性が生まれます。光の色や強さを意識的にコントロールしてみてください。


▼完成:読書のヴィネット風イラスト

完成した読書のヴィネット風イラストの完成図がこちらになります。

ランプ、月明かり、補助光それぞれの効果が空間を引き立てるよう意識しています。

最後は魔法のヴィネット風イラストを描いていきます。


▼魔法のヴィネット風イラストの描き方

こちらが、魔法のヴィネット風イラストのラフ全体になります。

このイラストでやっていることはほとんどこれまでで解説済みなので、補足的に発光エフェクトについてのみ案内します。


▼工程⑯:光るエフェクトの表現を描く

これまでの書き方を応用して描いたのが以下のイラストになります。

まだライティングを配置していないので画面全体が暗い印象です。

まずは魔法の蝶を発光させます。

複製した蝶のレイヤーをぼかし、覆い焼き(発光)レイヤーにレイヤー属性を変更します。

さらに覆い焼き(発光)レイヤーを追加して、杖の先端や発光植物、人物のリムライトを追加していきます。


▼完成:魔法のヴィネット風イラスト

完成した魔法のヴィネット風イラストの完成図がこちらになります。

少し明暗を強くしたり、エフェクトを足したりしています。

以上でヴィネット風イラストの描き方についての紹介は終了です。

 

最後に補足としてヴィネット風イラストに使う際の3Dの投影方法について案内します。


▼TIPS:3Dをアタリに使うときの投影方法の使い分けについて

3Dモデルをサブツール詳細画面で見ると、カメラタブに投影方法という項目があるのがわかると思います。

平行投影透視投影という2種類を、ヴィネット風イラストではどう使い分けるかをここでは解説します。

まずは平行投影で3Dキャラクターを描画してみました。

頭の上から下までパースによる歪み無しでキャラクターが立っているのがわかると思います。

続いて以下が透視投影です。ヴィネット風イラストに使ったパースでキャラクターを描画しています。

パースが極端に効いているため、顔は見上げるように、身体はほぼ水平になっているのがわかると思います。

投影方法の違いは位置をずらすと顕著になります。

平行投影では画面端までモデルを移動させてもパースによる変形はありません。

しかし透視投影では、画面の端へ行けば行くほど歪みが激しくなります。

この2つの投影方法をヴィネット風イラストに活かす場合、

  • キャラクターやキャラクターの持つ道具などは平行投影。

  • 家具やオブジェクトなどの背景モデルは透視投影。

と使い分けることをこの解説記事ではおすすめします。

 

キャラクターは大小や角度の違いはあってもいいですが、ミニチュア風画面でパースが効いてしまうと構図がダイナミックになり、スケール感に違和感が出てしまいます。

対して家具などは小さい画面の中でも遠近感を感じられるようにすることで、より情報量を詰めることができます。

 

もちろん両方の投影方法を同じにするヴィネット風イラストもあります。

背景込みで平行投影でヴィネット風イラストを完成させる場合、クォータービューのゲームのような画面を作ることができますし、反対に透視投影でヴィネット風イラストを全て描き込めば非常に動的な画面を作ることができます。

 

この辺は描きたい画面の好みによりますので、是非色々な構図を試してみてください!


■ヴィネット風イラストを描くのは楽しい!

長い記事になってしまいましたが、ここまでお付き合いくださってありがとうございます。

ヴィネット風イラストは描いていてとても楽しいので、皆さんも是非お試しください。

 

再三になりますが、ヴィネット風イラストはアクリルスタンドなどのグッズにするとはちゃめちゃに映えます!

絶対に作ってみてください!

 

最後までお読みくださりありがとうございました!

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