スモールエス「CLIP STUDIO PAINT」をはじめよう!第2回

21,604

ClipStudioOfficial

ClipStudioOfficial

 

デジタルイラストを描く『スモールエス』投稿者さんに聞く、デジタルイラストの便利さ・楽しさ

このシリーズでは、まだ本格的にパソコンなどで絵を描いていない人に向けて、デジタルイラストの便利さ、楽しさを紹介していきます。

 

絵を描き始めの段階は、使い慣れている紙に鉛筆で描くことが多いと思いますが、デジタルに興味を持っている人も多いことでしょう。

ただ、パソコンを使うとき、操作が難しいのでは…という心配もあるものです。

 

そこで初心者でも使いやすく、便利に楽しく絵が描けるように、パソコン用イラストソフト「CLIP STUDIO PAINT」の基本を紹介します。

「CLIP STUDIO PAINT」は、「スモールエス」の投稿者さんやプロのイラストレーターさんもよく使っているソフト。

実際に使ってみると、アナログで難しいと思っていた作業が簡単にできるという利点もあり、知っておくと便利なことがたくさんあります。

 

数回にわたって、デジタル初心者の方にも参加してもらいながら、デジタルイラストを楽しんで描けるコツをご紹介します!

 

第2回目ナビゲーター[河馬子さん&あさまねさん]

河馬子(かばこ)/CLIP STUDIO PAINTを使って作品を制作。ソーシャルゲームや「季刊エス」「娘TYPE」などにも登場。

あさまね/普段は水彩やコピックでカラーを描き、モノクロはつけペンも使う中学生。 デジタルはスマホでibisPaintは使ったことがある。来年から絵を専門的に学べる高校へ進学する。

 

 

 

1回目に引き続き、デジタルイラストは始めたばかりというあさまねさんと、CLIPSTUDIO PAINTをつかって、イラストの仕事をされている河馬子さんの二人がナビゲーターを務めます。

 

実際に、はじめてCLIP STUDIO PAINTをつかうあさまねさんの作業を見ながら、使い始めで気付くポイントに注目します。

そして難しい点をサポートしてくれるのは河馬子さん。

河馬子さんはデジタルイラストの描き方をアドバイスしてくれると同時に、普段通りの自分の描き方も披露してくれます。

 

二人のメイキングを見ながら、CLIP STUDIO PAINTを学んでいきましょう。

 

「CLIP STUDIO PAINT」の便利な機能を使って絵の完成度をあげよう!

■モード選びで絵のイメージが変わる!レイヤーの[合成モード]

 

<線画のレイヤーにオススメの合成モード[焼き込み(リニア)]>

河馬子/[通常]や[乗算]よりも、線画の下に塗った色との馴染みがよくなります。線画自体もくっきりと濃くなるので、線画レイヤーの設定は焼き込み(リニア)に設定してます。

 

▲レイヤーの合成モードは29種! 使い分けて絵に効果をつけよう。

▲色調補正レイヤーも豊富。仕上げの工程で使ってみよう。

 

 

 

■色がはみ出さないので思い切り塗れる![下のレイヤーでクリッピング]

 

河馬子/必須機能です! 

これがないと塗れないくらい便利で、デジタル彩色ならではの機能だと思います。

難しい設定は不要で、[レイヤー]パレットのボタンをクリックするだけでよく、クリッピングしたレイヤーには赤いラインが表示されるのも、見た目に分かりやすいです。

 

河馬子/「落とし穴のマーク」と覚えると分かりやすいですよ!

 

 

 

■回転や上下・左右反転で苦手を克服!キャンバス表示の[回転・反転]

 

河馬子/特に、線画の工程とシャープに塗りたい髪の彩色で使っています。

ペンが引きやすい角度に回転させて使うのですが、回転表示や反転表示機能を一番使いやすいソフトがCLIP STUDIO PAINTだと感じます。

クリックひとつでサクサク変えられるので、描いていても負担になりません。

 

左右反転は絵のバランスが崩れていないか確認できます。

それだけでなく、苦手な向きの人物の顔も、得意な向きで描いてから反転させることができて、とても便利です。

 

上下反転もよく使います。

特に、髪を描くときによく使っていて、下から上に向かってペンを動かすと線がよれやすいので、キャンバスを上下反転させて、上から下に向かって引いています。線をシュッと綺麗に引けますよ。

 

 

 

■2種の機能で効率よく彩色できる![スポイト]ツール

 

・[表示色を取得]は、画面に実際に見えている色を取得できる。

・[レイヤーから色を取得]は、レイヤーの合成モードに関係なく、レイヤーに乗せている元々の色を取得できる。

 

<河馬子さんにとっての必需機能[カラーヒストリー]パレット>

CLIP STUDIO PAINT内で使った色を記録してくれる機能です。

以前使った色を記録してくれるので、別作品で使った色も選ぶことができます。

便利なので、よく活用しています!

 

河馬子さんの髪の塗り

■カゲをつけるときのポイント

 

塗りたい髪色よりも少し明るいベース色にすると、カゲの形をくっきりと見せられます。濃い髪色、例えば黒髪の場合も、ベースは茶色にしています。

カゲの1色目は暗い場所全体につける感覚で、塗る面積が多いです。髪全体に明暗つけて立体感を把握しておくと、濃く入れるカゲの場所を迷わず考えられるんです。

2色目のカゲは、合成モード[乗算]で濃いめに入れます。入れる場所は少なめで、耳の下や毛束が重なる奥側、つむじなど、必ずカゲがつく場所のみに限定します。

 

 

 

■髪の加工

 

①ここから髪に加工します。全体に効果がかかるフォルダにクリッピングの設定にして、エアブラシで肌色をふんわりつけます。髪色が明るく、やわらかい色味になりました。

②顔周りの毛先に濃い水彩のブラシで肌色を入れます。工程④よりも、くっきり肌色が乗りました。あわせて、長い髪の下側の毛先には青を入れて遠近感を出します。

③ハイライトは青色で入れます。覆い焼き(発光)レイヤーなので、青色が淡くなります。大きいハイライトの下に合成モード[通常]にした青色のハイライトも描き入れました。

 

④河馬子/銀髪がよりキラキラするように、上に合成モードを[オーバーレイ]にしたレイヤーを重ねて、加工します。

加工用の色を作ります。肌周りにオレンジ系、奥側の髪に水色や紫を入れました。

この左図に、加工用の色を置いた[オーバーレイ]のレイヤーを乗せると、右図のように白っぽく発光した髪になります。

 

⑤うしろに髪を描き足します。後れ毛を入れると、サラサラした質感や効果が出て、髪の毛らしさが際立ちます。

 

あさまねさんの髪の彩色

CLIP STUDIO PAINTの機能と河馬子さんのポイントを元に塗ってみましょう。

 

 

 

【POINT】2種類の塗りつぶしツールを使い分けよう

 

・[編集レイヤーのみ参照]…全体を塗りつぶせるので、ベースの色を塗るときに便利。

・[他レイヤーを参照]…線画で分けられたカゲや模様などを、部分的に塗るときに便利。

 

①河馬子/髪のベースは薄めの色がオススメです。カゲ色との差がついて、画面にメリハリが出ますよ。

②河馬子/白い髪の場合も、少しだけ色を入れるとカゲ色との馴染みが良くなります!

 

③あさまね/回転させて、ブラシを動かしやすい方向にしました。「カゲは大きい面積から塗ると良い」とのことで、ブラシサイズも大きめです。気に入るまでやり直しながら塗りました。

④河馬子/毛束は丸い筒だとイメージして塗ると、立体感が出ると思います。私の場合は丸みのある形を描きます。塗るときは頭の形や毛束の丸みを意識してみてはいかがでしょうか。

⑤河馬子/カゲは全体につけず、首の後ろや耳の後ろ、毛束の境目などに絞ってつけると、塗りにメリハリがつきますよ。濃いカゲは細めにパキッと入れてみましょう。

 

⑥あさまね/河馬子さんのアドバイスを元に、カゲをつけました。普段は髪全体を全面同じように塗っていたので、カゲの面積に大小をつけたり、塗る場所を限定するのは、新鮮な塗り方でした。

 

⑦河馬子/カゲを塗ったら、最後に[スポイト]ツールで顔から肌色を取って乗せましょう。肌の周り(前髪、首のうしろ)にエアブラシでほんのり塗ると透明感が出て、顔も華やかになりますよ。

⑧おくれ毛を描き足す。くっきりした線になるよう、Gペンで作業している。おくれ毛は主線の上から足す線なので、主線のようにパキッとした線の方が合うとのことだ。

 

合成モードを多用した、河馬子さんの瞳の彩色

①焼きこみ(リニア)のレイヤーに丸く瞳孔を描き、乗算のレイヤーにカゲを入れる。

②覆い焼き(発光)のレイヤーに彩度の高い青で円を描き、下側を光らせる。

 

③通常のレイヤーに薄い紫でまつ毛のカゲを入れ、同じ色で瞳孔を一段明るくする。

④通常のレイヤーに黄色のハイライト、加算(発光)のレイヤーに照り返しを入れる。

 

⑤覆い焼きカラーのレイヤーにハイライトを足す。彩度の高い色を使用する。

 

ブラシを使い分けて塗った、あさまねさんの瞳の彩色

①くっきりした塗りのブラシ[濃い水彩]で瞳孔とカゲの形を描く。

②さらに濃い色をまぶたのカゲにのみ重ねて、明暗がついた。

 

③カゲに明るい色を加え、瞳孔をエアブラシの[ハイライト]で淡くぼかす。

④[Gペン]でハイライトを入れ、エアブラシの[柔らか]でふわっと色を差す。

⑤瞳の中のキラキラを、デコレーションの[トーン削り]を使って表現。

 

河馬子さんの塗りのポイント/カゲにひと工夫して、遠近感や立体感を出す

■靴下に奥行と透明感を加える

 

乗算でカゲを入れたら、奥のほうに青い光を入れます。

手前にある肌に接触する側は、スポイトで肌の色を取り、エアブラシでふんわり色をつけました。

肌色によって透明感が出て、奥側に入れた青い光もより効果的に見えます。

 

 

 

■制服のシワやカゲをより立体的に見せる

 

服の色と近い黄色でカゲを[通常]のレイヤーに入れます。次に紫で深くシワが入る場所や胸の下、腰などにカゲを入れます。

最後に合成モード[覆い焼き(発光)]のレイヤーを作り、赤で囲んだ部分に[エアブラシ]で青を入れて、色調整します。少し青みが増しました。

 

河馬子さんの完成イラスト

最後に色調補正レイヤーで微調整して完成。

犬耳とフサフサのしっぽがとても可愛いです!クッションや瞳など、ポイントで入れた青色をカゲ色や照り返しで塗ることで、人物と小物とがよく馴染んでいます。

河馬子さんは今回226枚のレイヤーを使って描いています。細かく分けるだけでなく、各レイヤーごとに[合成モード]を使い分けて完成させていました。

 

あさまねさんの仕上げの工程/色調補正レイヤーで加工して、完成度を高める

[レイヤー]メニュー→[新規色調補正レイヤー]→[レベル補正]ダイアログで、[入力]ヒストグラムの下の、三角形のコントロールポイントを操作します。左の黒い三角形を右に寄せると、色がクッキリしてメリハリが出る。

 

特定の色を指定して調整できる[カラーバランス]や、全体の色調を変えられる[色相・彩度・明度]で、好みの色に調整する。

 

▼加工前の色調は、青みが強めで透明感があり、クールな印象だ。

▲加工後の色調はこちら。全体的に彩度が上がり、肌も赤みが増し、鮮やかな印象になった。

 

あさまねさんの完成イラスト

美しい白髪と立体感ある肌がインパクトのある、あさまねさんの作品。

CLIP STUDIO PAINT初体験でも、クリッピング機能や合成モード、多彩なブラシで、楽しんで完成まで進めました!

 

 

 

■描いてみた感想/あさまね

今回の講座で、はじめてパソコンを使ったデジタルイラストに挑戦したのですが、河馬子さんに教えてもらって、完成させることができました!

1枚描いただけですが、上達したと思えるところもあって。

特に、肌の塗り方は、これまでぼかして塗っていましたが、パキッとした方が合うと納得できましたし、髪の濃いカゲを塗る場所を限定する方法は、すごく良いなと思いました。

本格的にデジタルを使うのは進学してからになりそうですが、今回教えてもらった塗り方で、また描いてみたいです。

 

 

 

■描いてみる方へ/河馬子

どんな画材にも共通しますが、使い続けることで完成度が上がっていきます。

CLIP STUDIO PAINTはイラスト制作に便利な機能がたくさんあります。

私自身、描きはじめたときは使い方がわからず、いろんな機能やブラシ、レイヤーモードを片っ端から試してみました。

全ての機能を使いきれないほど、表現できる可能性がたくさんあるソフトだなと思います。デジタルを敬遠している方も、描けば描くほど上達すると、私自身も実感できているので、ぜひはじめてみてください!

次回は新しい絵で便利な機能を紹介します! お楽しみに!

 

 

 

SS スモールエスとは

2005年に創刊されたイラスト雑誌。「メイキング&投稿マガジン」というキャッチコピーの通り、イラストの描き方の取材記事と、投稿イラストの掲載によって誌面がつくられている。デジタルとアナログの両方のイラストが楽しめる内容。Webから作品が投稿できる。

コメント

新着

公式 新着