スモールエス「CLIP STUDIO PAINT」をはじめよう!第6回

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CLIP STUDIO PAINTをタブレットPCでつかってみよう[Wacom MobileStudio編]

パワーアップして戻って来た「CLIP STUDIO PAINT」をはじめよう!では、様々なタブレットによるデジタルイラストの描き方、楽しさを紹介していきます。

小さい画面のスマホでも絵を描けますが、もう少し大きな画面のタブレットPCは描きごたえが違います。

 

今回使用する、Wacom MobileStudioはプロのイラストレーターが数多く使用する液晶ペンタブレットと同じ機能やペンが使えるのが魅力。

持ち運びに便利なサイズながら、WindowsのOSが搭載されているのでノートパソコンのように書類作りやネットの閲覧もできます。

据え置きのパソコンでCLIP STUDIO PAINTを使っている方、これからパソコンを持ちたいという方にも、気になるタブレットPCだと思います。

 

今回は佐倉おりこさんにご登場いただき、タブレットPCの使い心地とあわせて、CLIP STUDIO PAINTで絵を描くときに知っていると役立つこと、さらに楽しく作品づくりができる便利なところを紹介していきます!

 

第6回目ナビゲーター[佐倉おりこ(さくら・おりこ)]

イラストレーター兼漫画家。

技法書執筆や児童向け書籍、キャラデザ、装画など幅広く活動中。

『メルヘンでかわいい女の子の衣装デザインカタログ』

『メルヘンファンタジーな女の子のキャラデザ&作画テクニック』著書(玄光社)

『すいんぐ!!』漫画連載(実業之日本社)

『四つ子ぐらし』シリーズ絵 (角川つばさ文庫) など。

■Twitter:

■個人サイト:

 

タブレットで絵を描くために必要な道具は?

Wacom MobileStudio Pro13

搭載OS:Windows 10 Home

※インターネット接続が必要。

 

 

 

■CLIP STUDIO PAINTを使用する方法は?

 

はじめて使用する場合はCLIP STUDIOサイトからソフトを購入。

または無料体験版を選択してダウンロード。

 

CLIP STUDIO PAINTを購入した場合は、CLIP STUDIOサイトにログインして「マイページ」に移動する。

 

「ご利用製品シリアルナンバー」を確認。

Wacom MobileStudioにCLIP STUDIO PAINTをインストールする。

 

タブレットで描くと、どんなことができるの?

■プロ仕様の液晶ペンタブレットを持ち歩くことができる!

 

タブレットで描くときに気になることのひとつが、自宅で使用する愛用のペンタブレットと同じように描きたい、ということ。

 

Wacom MobileStudioはペンタブレットを製造するWacomが作るタブレット。

プロも認めるペンの描き心地の良さが大きな魅力です!

 

<「Wacom ProPen2」を付属!>

ペンで大事なのが筆圧感知の数値。

Wacom MobileStudioに付属されるWacom ProPen2は、筆圧感知レベル8192という高さ。

自然なタッチで正確でなめらかな線が引けます!

 

繊細なタブレットのペンの保管と持ち歩きに適したケースがついている。

 

 

 

■ブラシサイズや回転を手元で操作可能

 

液晶画面に直接触れて操作できるタブレット。

Wacom MobileStudioは液晶のタッチパネルだけでなく、本体に搭載されたボタンにもアクションを設定できます。

 

<よく使う機能を手元のボタンに設定できる>

Wacom MobileStudioの本体右(または左)にボタンが並んでいます。

長方形がファンクションキーで、丸いのがタッチホイールです。

それぞれ[進む][戻る][ブラシサイズ変更]などボタン一つで操作できるようになります。

 

 

 

■パソコンとしても使えるペンタブレットは利便性◎

 

WindowsのOSが搭載されているので、通常のパソコンのように描画以外でも使えます。

パソコンでありながら絵を描くことに特化している点は、他にはないタブレットではないでしょうか。

今回使用した機種は大小2種あるサイズの小さめ(13インチ)。

SSと並べるとコンパクトですが、画面が本体の内側めいっぱいにあるので、迫力があります。

 

絵を描ける液晶部分はA4サイズ程。

ノートやスケッチブックくらいあるので、絵を描く醍醐味を充分味わえます。

重さは1420gで、ノートパソコンと同じくらい。

厚みも、ほぼSSと同じなので、カバンにも入れやすい大きさです。

ノートパソコンや液晶ペンタブレットの購入を検討するときに、ひとつの選択肢としてイメージしてみてはいかがでしょうか。

 

●おすすめ機能①ブラシを使い分けて密度をあげよう!

■メインで使う基本ブラシ

 

[鉛筆]ツール→[濃い鉛筆]

線画に使用。

CLIP STUDIO PAINTにデフォルトで入っており、パキッとシャープな印象になる。

おりこさんは、入り抜きの数値をカスタムしているとのこと。

 

[筆]ツール→[不透明水彩]

彩色のメインで使用する。

[透明水彩]よりも色づきがよく、一回で色がしっかりと塗れるのが良い。

不透明度100%でも、ペンタブレットの筆圧感知で濃淡がつく。

 

[エアブラシ]ツール→[柔らか]

頬の赤みなど、ふんわりと色を置きたいときに使用。

ブラシの形がくっきりと出ないので、やわらかい印象に。

線画の色を変更するときなど、微調整にも使用する。

 

[ペン]ツール→[Gペン]

はっきりと色を乗せたい髪のハイライトに使用する。

不透明に描けるので、髪や衣装の加筆、瞳の細かな光沢など、透けてほしくない場所の彩色に適しているのだという。

 

 

 

■キャラクターやイラストにあわせて活用するダウンロードブラシ

 

エス編集部で作例用にダウンロードした素材「手描きの雪ブラシセット」

 

[素材]パレットの一番上に表示される[ASSETSで素材をさがす]をクリックする。

 

CLIP STUDIOが起動し、ASSETSが表示される。

様々な素材が配布されている。

具体的にイメージする素材があれば検索して素材を絞ろう。

 

気になる素材が見つかったらダウンロード。 

※一部有償の素材もある。

 

追加したいブラシの素材をドラッグするだけで、簡単にブラシを増やす事が出来る。

▲今回は[デコレーション]に追加する。[消しゴム]などの別ツールにも追加可能。

 

追加後はすぐに使用可能。他のブラシと同様にカスタムすることもできる。

 

[ツールプロパティ]を調整すれば、同じブラシでも様々なタッチを作れる。

 

<[デコレーション]ツールの使用例>

・リボンの装飾

ひし形とお花、ギザギザのラインの組み合わせ。

硬質な印象なので、冬や寒い季節のイメージにぴったり。

 

・帽子の装飾

ドットで描かれた木と雪。クロスの装飾。

円形の帽子のフチに一定の絵柄を引けるのも[デコレーション]ツールの利点。

 

・背景の装飾

均等な線が引けるブラシ。背景の装飾に使用した。

一度にたくさんの線を引けるので、時短にもつながる。

 

イラストメイキング[1]ラフ、塗り分け、線画~肌を塗る

■ラフ、塗り分け、線画

 

①「冬のイメージ」→「寒色系」+「小物も冬らしいもの」と考えてラフを描く。

色も5色くらいに絞り、配色した。

 

②塗り分けの前に、濃い色で人物部分のみ塗りつぶす。

色の塗り残しがないかをチェックできるとのこと。

色分けの漏れチェックだけでなく、グレーの色ベタを一番広く乗せる色へ置き換えることで、塗りの効率を上げることができる。

 

③線画はパーツの色に合わせて、変更する。

新規レイヤーを作成して線画のレイヤーにクリッピングして、[エアブラシ]ツール→[柔らか]で上に別の色を塗る。

 

おりこ/レイヤー数が増え過ぎないように、パーツではなく色でレイヤーを分けています。

 

 

 

■肌を塗る

 

①[濃い鉛筆]で頬に赤い線を足す。

人物の主線と別のレイヤー上に引くことで、線の濃淡を細かく調整できる。

 

②頬の赤みに[柔らか]でふんわりと色をつけ、前髪のカゲは[不透明水彩]でくっきりと塗る。

 

おりこ/前髪は3段階のカゲを付けますが、頬の赤みは1段階のみです。

 

③前髪のカゲだけ、薄いカゲと濃いカゲの境目にラインを引く。

カゲの形がパキッと強調されるので、メリハリがつく。

 

おりこ/肌のカゲは3つのレイヤーに分けています。①薄いカゲ②濃いカゲ③境目の線です。

濃いカゲ色をスポイトで取って[濃い鉛筆]の細い線で縁取ります。

 

●おすすめ機能②デジタルならでは!色を自由に変えてみよう

■1.同系色のバリエーションを見たい

 

①同系色で塗りたい色を[スポイト]ツールでクリックして取得する。

②[ツール]パレットに表示される[描画色]をダブルクリックする。

③表示される[色の設定]ダイアログで、好みの色を選択して描画色を変える。

カゲ色に迷ったら、ベースの色から矢印の方向に移動させて、明度を少し落とした色を選ぶとなじみやすい。

 

<色の設定の種類>

同系色の中で色を変えるときに便利な[標準]。

 

[カラーサークル]は色相環も同時に見えていて便利。

 

[カラーセット]は登録されているカラーセットを表示する。

 

 

 

■2.色を大きく変更したい

 

①おりこさんは塗ってから色を変えていく。

②[編集]メニュー→[色調補正]で、色を塗ったレイヤーに対して様々な色変更が可能になる。

③好みの色探しや色調の変更など、幅広く活用できる。

 

<色調補正の種類>

[レベル補正]は濃い色、中間色、明るい色を調整できる。

 

[色相・彩度・明度]の項目で、特に[色相]は色の振り幅が大きい。

 

[カラーバランス]は特定の色を選んで変更できる。

 

イラストメイキング[2]髪を塗る~加筆

■髪を塗る

 

①1段目のカゲ。ベースの色から少しだけ濃い色を毛束を意識しながら塗っていく。

②肌の色をスポイトで取り、[柔らか]でふんわりと乗せる。少し明るく調整した。

おりこ/主に肌に近い場所に塗ります。肌となじんでやわらかい印象になります。

 

③髪のツヤを描く。

ベースより明るい色を置いたら、その上下を濃いめの色ではさむ。

暗い色を入れたときに、ツヤの形がシャープになり形もくっきりと見える。

 

④[濃い鉛筆]でツヤに髪の流れを足す。

ランダムな形になり、光沢感が増した。

おりこ/パキッとした細い線にしたいので、線画に使う[濃い鉛筆]を使います。

 

 

 

■加筆・髪

 

①全体を描き終えた後で加筆をして、絵の密度をあげていく。毛束が細かくなり、重なりや立体感が複雑になった。

 

②加筆は新規レイヤーで行う。

銀髪の毛束を[Gペン]で増やす。ブラシサイズを少し大きくしてスッと線を引く。

おりこ/[Gペン]は下の色が透けず、くっきりと線が引けるので加筆に使用しています。

 

③銀髪の毛束を主線と同じ色で縁取る。

線画を先に描かず、ペンのストロークで引くと自然な毛束が出来上がる。

おりこ/毛束を線で縁取るときに、元々描いていた髪と交差する場所は、飛ばして線を描くこともあります。

 

 

 

■加筆・衣装

 

①服のカゲとシワを入れた状態。

薄めと濃いめ、青系という3種類の濃淡が入っている。

A. 少し暖色系の薄いカゲはシワや腕のラインに沿って入れている。

B. 少し青みのある濃いめのカゲを加えて服の色となじませる。

C. 青系のカゲは一番濃くなる場所に入れる。強く色が乗るのでメリハリが出る。

 

②装飾を加筆した。服やリボンに細かなレースや花があしらわれ、華やかになった。

おりこ/手描きの感じが出ることの良さもあるので、服の装飾の加筆はアドリブで描きました。ブラシのように整っている方が良い場合と使い分けています。

 

①袖口にシワを入れた状態。凹凸が強調され、立体感のあるフリルになっている。

②フリルのボリュームや厚みがさらに増した。リボンにも細かくタッチが入っている。

おりこ/粗く描いたレースは、下の線画を消しながら[Gペン]で加筆します。フリルが立体的になって厚塗り感も出るので、絵がゴージャスになるんです。

 

●おすすめ機能③画面の完成度や雰囲気を高める色調整をしてみよう

■1.レイヤーの[合成モード]を活用しよう

 

下図はCLIPSTUDIO PAINTで使える合成モード。それぞれに特徴があるので、活用してみよう。

使用中の合成モードはレイヤー上に表示されるのでわかりやすい。

 

<合成モードを活用して色を微調整する>

おりこさんは仕上げの工程で様々な合成モードを活用する。

そのひとつの[焼き込み(リニア)]の特徴は、下のレイヤーを透けさせつつコントラストを上げること。

今回は肌の色を[焼き込み(リニア)]で乗せて、キャラクター全体に黄色を入れた。絵の色調に統一感がでた。

おりこ/ささやかな違いですが、寒色系の色調が温かみのある印象になるんです。

 

 

 

■2.[グラデーションマップ]を使おう

 

[グラデーションマップ]は画面にある色の濃淡にあわせたグラデーションに色を置き換えられる色調補正の一種。

グラデーション加減も自在に調整可能。簡単で、面白い効果をつけられます。

おりこ/[グラデーションマップ]をよく使っています。色に統一感を出したいときに便利です。

レイヤーにクリッピングすれば、部分的に色を変えることも可能です。

モノトーンにもできるので、明度の確認用にも使えます。オリジナルのグラデーションが作れるところも楽しいです!

 

<グラデーションマップの様々な効果>

[セピア]…セピア調の写真や家具などに使えて便利。

 

[くすんだ陰影(緑)]…同系色の中で幅広い明度・彩度が出る。

 

[朝焼け(紫)]…青と赤、紫に黄色が混ざる複雑な色調。

 

【POINT】

レイヤーの色を直接変えるなら[編集]メニュー→[色調補正]から[グラデーションマップ]を選択します。

 

イラスト全体の色を変えるなら[レイヤー]メニュー→[新規色調補正レイヤー]から[グラデーションマップ]を選択します。

 

イラストメイキング[3]瞳の加筆&色変更~仕上げ

■瞳の加筆&色変更

 

①瞳に淡い青と淡い黄色を乗せた。白目も塗り、まぶたのカゲをグレーでつけた。

②赤の囲み部分に、線画の濃い青と淡い青の中間色を置く。色差が滑らかになった。

 

③ハイライトや、青や黄色の丸を加筆する。形も整えられ、より存在感のある瞳になった。

④装飾と瞳の色を合わせる。合成モード[色相]のレイヤーに色を乗せて不透明度を調整した。

 

 

 

■仕上げ・線画の色調整&白い光を足す

 

おりこ/線画をもう少しやわらかくしたいので、紺色で塗りつぶしたレイヤーを合成モード[比較(明)]で重ねました。濃い線画だけ乗せた紺に変わる、便利な合成モードです。

 

おりこ/人物の周りに白い光を足します。合成モード[加算(発光)]で、リボンや帽子、髪などのフチを白で塗ります。レイヤーの不透明度100%では強いので、薄く調整します。

 

完成イラストはこちらです!

 

おりこさんのタブレットのオススメポイント

タブレットPCのWacom MobileStudioをはじめて使用したのですが、デスクトップPCで使っている自分のCLIP STUDIO PAINTのアカウントを使えるのが良いですね。

また、私は普段から液晶ペンタブレットを使っているのですが、WacomMobileStudioでは直接画面にタッチして拡大・縮小や回転ができたり、ペンタブレット同様にファンクションキーが搭載されているのも、使いやすいところでした。

持ち歩きできるので、カフェで絵を描くときにも便利そうだなと思います!

 

SS スモールエスとは

2005年に創刊されたイラスト雑誌。「メイキング&投稿マガジン」というキャッチコピーの通り、イラストの描き方の取材記事と、投稿イラストの掲載によって誌面がつくられている。デジタルとアナログの両方のイラストが楽しめる内容。Webから作品が投稿できる。

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