スモールエス「CLIP STUDIO PAINT」をはじめよう!第7回

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CLIP STUDIO PAINTをタブレットPCでつかってみよう[raytrektab編]

パワーアップしてお届けしている「CLIP STUDIO PAINT」をはじめよう!では、様々なタブレットによるデジタルイラストの描き方、楽しさを紹介しています。

小さい画面のスマホでも絵を描けますが、もう少し大きな画面のタブレットPCは描きごたえが違います。

 

今回使用する「raytrektab」は、用途別のカスタマイズパソコンで有名なドスパラが発表したタブレットPCです。

軽量の専用ペンはペンタブレットメーカーWACOM社製なので、描き心地も抜群です。CLIP STUDIO PAINT DEBUTもついた、お絵描き向きの1台です。

コンパクトながら、本格的なイラストをストレスなく描けるので、はじめて買う方だけでなく、2台目としてもオススメです。

 

今回は灰鴉(かいあ)さんにご登場いただき、タブレットPCの使い心地とあわせて、CLIP STUDIO PAINTで絵を描くときに知っていると役立つこと、さらに楽しく作品づくりができる便利なところを紹介していきます!

 

※この記事は、「スモールエス」2019年4月発売のVol. 57に掲載されたものを編集しています。

※この記事は日本語です。 日本語以外のサイトでは、機械翻訳されています。

第7回目ナビゲーター[灰鴉(かいあ)]

イラストレーター。

繊細で美しい少年や装飾的な衣装、ゴシックな世界観を描く。黒髪・白髪が好き。

タブレットで絵を描くために必要な道具は?

raytrektab (DG-D10IWP)

解像度:10.1インチ液晶(1920×1200)

デジタイザ:Wacom feel IT technologies デジタイザ

4096階調 スキャンレート360Hz

付属品(一部):筆圧感知機能付きペン/CLIP STUDIO PAINT DEBUT(シリアルナンバー同封)

※インターネット接続が必要です。

製品URL:

※日本国内で、日本語OSでのみ販売しています。

 

 

■CLIP STUDIO PAINTを使用する方法は?

 

raytrektabに特典でついているシリアルナンバーを登録すれば、CLIP STUDIO PAINT DEBUTが使えます。

 

描き味の良い多彩なブラシ、3D機能やフィルターなど、必要な機能が揃っています。

体験版ではないので、ずっと使えるのも嬉しいところです。

必要になったら、上位グレードのCLIP STUDIO PAINT PRO/CLIP STUDIO PAINT EXへ乗り換えることも可能です。(別途料金が発生しますが、特別価格で購入出来ます。)

タブレットで描くと、どんなことができるの?

■充電不要の軽量ペンは疲れず描き心地も抜群!

 

raytrektabが他のタブレットと大きく異なるのが「デジタイザペン」の存在です。

 

充電の必要がなく、バッテリーも搭載していないため、5gという軽さです。

スリムで握りやすいフォルムや重さから、まるでボールペン、ミリペンで描いているような感覚になります。

 

ボールペンのように、プッシュするとペン先が出てきます。

▲ペン先の形状もミリペンのよう。

 

このペンを作っているのは、ペンタブレットメーカーのWacomというのも見逃せないポイント。

筆圧感知が4096階調と大変細かく、繊細に反応します。

デジタイザペンを斜めに寝かせて描くこともできるので、ストレスなく長時間描けます。

▲同じサイズのブラシでも、筆圧や傾きでこんなにも変わります。直感的に描けるのが嬉しいところです。

 

 

■コンパクトなサイズでいつでもどこでも絵を描ける

 

raytrektabは10インチサイズ(約245mm[幅]×176mm[奥行き]×9mm[高さ])で本体657g、ペンは5gと大変コンパクトなところも魅力です。

657gの本体は、ノートパソコンや液晶ペンタブレットよりもずっと軽いです。

 

雑誌スモールエスと比べると、横幅がほぼ同じで、スモールエスにすっぽりと収まるサイズです。

カバンに入れたり、机の上でも作業しやすいサイズ感です。

▲液晶サイズはハガキよりも大きいA5サイズくらいです。

 

 

■パソコンメーカーが作るマシン 作画に特化した高性能タブレット

 

raytrektabを作っている会社はゲーム用のパソコンやクリエイター用のパソコンなど、用途にあわせてカスタマイズしたパソコンを作っています。

絵を描くことに特化して作られたタブレットなので、8GBのメモリや高速のCPUやSSDなど、CLIP STUDIO PAINTをサクサクと問題なく使えるスペックで、すべて揃った状態で使いはじめられます。

また、WEBカメラやUSB Type-CやmicroSDカードも入るので、データの移動や保管も行いやすいのが嬉しいところです。

▲マイク入力・ヘッドフォン出力共用端子もついています!

 

 

●CLIP STUDIO PAINTおすすめ機能①ブラシのカスタマイズ

①カスタムしたいブラシを選択して複製して名前をつけます。

 

②[ツールプロパティ]パレットの右下にあるスパナマークをクリックして、[サブツール詳細]パレットを表示します。

 

③[ブラシサイズ]の右にあるボタンをクリックします。筆圧やペンの傾きによる影響を、ブラシ別に変えられます。

 

「濃い水彩9」

灰鴉さんが入りと抜きにこだわってカスタムした、強弱がつけやすいブラシ。線画の引きやすさを重視しています。

 

「濃い水彩□」

ブラシ自体が四角のフォルムをしており、塗りの端に水彩境界がつくので、独特の雰囲気が出ます。

「パレットナイフ□2」

色をのばしたり混ぜるときに使用します。塗りのタッチや質感が少し残るところが良いそうです。

●CLIP STUDIO PAINTおすすめ機能②対称定規

[定規]ツール→[定規作成]→[対称定規]を選択します。

 

キャンバス画面をクリックすると、[対称定規]が作成され、紫色の線が1本表示されます。下図の場合は、左右対称で描けるようになります。

 

1/2を描くだけで絵が完成するので、左右対称のグラスや小物の作画に便利です。

 

[対称定規]の[ツールプロパティ]を調整すると、複雑な形も作ることができます。

 

以下は、4分割([線の本数]:4)で作った定規です。

水平垂直だけでなく、定規の角度は斜めにも作ることができます。

▲1/4を描くだけで絵全体が完成するので、装飾など細かな作画に向いている。

 

 

イラストメイキング[1]ラフから線画まで

①吸血鬼や悪魔の美少年をイメージしています。血をワインに例え、さらに薔薇に置き換えました。

 

②オリジナルの「濃い水彩9」で線画を描きます。重要アイテムのグラスは[対称定規]で作成しました。

灰鴉/難しい形や正確に描きたいアイテムを簡単に描けるので便利ですよ。

 

③線画と下塗りが終わった状態です。灰鴉さんはパーツを細かくわけながら描きます。

 

④別レイヤーでベールを描きます。重なりは気にせず描き、手にかかる部分は後で消します。

イラストメイキング[2]瞳・肌・髪を塗る

■瞳を塗る

 

①赤い瞳のベースをベタ塗りします。はじめはハイライトや瞳孔は描かずシンプルな状態です。

 

②「パレットナイフ□2」で濃い赤をのばし、境目を馴染ませてグラデーションにします。

 

③「濃い水彩9」で下部に明るい色、中心に瞳孔を描いて「パレットナイフ□2」でのばします。

瞳孔は別レイヤーで描いているので「パレットナイフ□2」で色をのばしても影響を受けません。

 

④ハイライトを瞳孔の上に置きます。明るい部分に輪郭線を描いて、形を強調しました。

 

 

■肌を塗る

 

①下塗りのレイヤーの[透明ピクセルをロック]して「濃い水彩9」で肌にカゲを入れます。

 

②首筋や鎖骨にもカゲを入れます。入れ過ぎないように全体を引きで見ながら形を描きます。

 

③シャープなカゲとやわらかいカゲを作ります。鼻は[色混ぜ]ツール→[ぼかし]で形をなめらかにします。

 

④濃いカゲを首の下などに入れます。

首の下に大きくカゲが入ると顔の輪郭が際立ちます。

 

⑤唇を塗ります。

下唇のカゲを「濃い水彩9」で置いたら「パレットナイフ□2」で塗りのばします。

 

⑥瞳を囲むように赤系の暗いカゲをふんわりと、強くなりすぎないよう自然に乗せます。

 

【POINT】カゲに輪郭線を引いて印象的にする

灰鴉さんは顔にあまりカゲを入れなかったが、前髪のカゲに濃いめの肌色の境界線を引いてメリハリのある塗りを作っていました。

前髪以外にも顔の輪郭や首元のカゲに境界線を描くとシャープな印象になります。

 

線画のレイヤーと違い、彩色時はあまりレイヤーを分けていません。

「1枚のレイヤーに描き込む方が、タッチが綺麗に出る」のだそう。

▲肌は1枚で描いていました。

 

 

■髪を塗る

 

①「濃い水彩9」でツヤを描きたい場所の上下に、ベースより濃いグレーをザクザクと塗ります。

▲[透明ピクセルをロック]にチェックを入れると、レイヤー上に塗られた部分から、色がはみ出さなくなります。

 

②明るくしたい場所の形を残しながら、大きいサイズの[ぼかし]で塗り広げていきます。

 

③ ①と②を繰り返して濃くしていきます。明るくなる場所との境目が一番濃い色になります。

 

④別レイヤーで描いているベールを表示させて、濃淡の見え具合をチェックします。

 

⑤想定したよりもベールで髪のツヤが隠れてしまったので、位置をずらして塗り直します。

 

⑥前髪の先端の色を淡くして透明感を出します。「濃い水彩9」で色を置いて、[色混ぜ]→[ぼかし]で広げます。

 

⑦「パレットナイフ□2」でツヤ部分に明るいグレーを置き、[ぼかし]でなめらかにします。

 

⑧頭のフチを明るいグレーでパキッとさせると、頭の形が明確になり、立体感が出ました。

 

⑨新規レイヤーの合成モードを[乗算]に設定して、「濃い水彩9」で毛束が重なるカゲを入れます。

 

⑩つむじからの毛の流れも描いていきます。ツヤ部分は線で形が途切れないように加筆は控えます。

 

【POINT】イメージに近い色を探す

[カラーセット]や[カラーサークル]でイメージと近い色を拾って塗っていても、背景や衣装などと合わせると色の印象が変わるものですが、デジタルは塗った後で色を変えられるのも魅力です。暖色から寒色など、まったく異なる色に変更することも可能です。

灰鴉/黒髪は色の加減が難しいので[編集]→[色調補正]→[色相・彩度・明度]でイメージする髪色に調整します。

 

 

イラストメイキング[3]服・装飾を塗る

■白いシャツを塗る

 

①シャツのレイヤーの[透明ピクセルをロック]して、白いシャツを塗ります。ピンク系のグレーで、まずはシワが入る場所に色を置きます。

 

②水彩境界のつく「濃い水彩□」でシワが深く入るひじを塗りました。あわせて、袖口の内側にも塗るとメリハリが出ます。

③濃い色を塗ったら、「パレットナイフ□2」でベースのカゲ色と馴染ませます。徐々に色がのびていくので、調整しやすいブラシです。

 

④襟元を塗ります。奥側のカゲは形を縁取りしてパキッとさせました。前側は「濃い水彩9」を塗り、[ぼかし]で色を薄めます。

 

⑤さらに「パレットナイフ□2」で色の濃度をのばしながら薄めます。

色ムラのない、なめらかなグラデーションができました。

 

【POINT】服のシワを入れるところ

胸元のシワは控えめで、脇の下や曲げたひじにシワが集中しています。また、襟や袖口はパリッとしているのでシワがあまりつきません。

シワを入れる場所にメリハリをつけると、立体感がより強調されます。

A. 肩はハリがあるのでシワがあまり入りません。

B. 巻いたリボンで、シワだけでなく凹凸もついています。

C. 手元と重なっている二の腕部分はシワだけでなく全体的にカゲがついています。

 

 

■服の装飾を塗る

 

①「濃い水彩9」で金属の装飾を塗ります。ベースの金色→濃いカゲ色→ハイライトを入れました。

②アドリブで金属に柄をつけました。ベースより少し濃い色で、襟の形に沿うように描いています。

 

③柄の内側を濃い色、外側を明るい色にして、凹凸を表現します。デジタイザペンのペン先が細いので、的確に塗れました。

④装飾のフチにハイライトを足します。全体には入れず、部分的に線を引くと光沢感が増します。

 

 

■首元の装飾を塗る

 

①「濃い水彩9」でベースの金色と濃いカゲを乗せた状態。カゲを斜めに入れています。

②パキッと線が引ける[Gペン]でハイライトを入れました。光沢が入ると立体感が出ます。

③キャンバスの表示を縮小させて、絵の中の装飾の目立ち具合を確認し、色や光沢を微調整します。

④何度も描き直した状態。濃淡の差がゆるやかになり、色や立体感が抑えられた印象になりました。

 

【POINT】絵を引いて見る

灰鴉/引きで見たときの印象を大切にしています。

 

デジタルは拡大することで細かく描き込めてしまいますが、最終的な完成の形が大事ということを意識しています。

完成度をあげて描くためのポイント

■線の色を変えて雰囲気を出す

 

線画のレイヤーの[透明ピクセルをロック]にチェックを入れて、塗った場所を見ながら線画の色を変えます。

 

まぶたの端や二重のラインなど、瞳の周りの色を変えました。

 

 

■テクスチャを使って色に深みを出す

 

灰鴉さんは乗せるテクスチャをラフの段階から考え、完成をシミュレーションしています。

ランダムな質感やザラザラとした手触り感など、絵のイメージに合わせて乗せます。

 

灰鴉/テクスチャを使うと水彩のようなにじみが出たり、色調が少し黄色くなるところも気に入っています。

レベル補正:コントラストがあがる

テクスチャA:ザラザラの柄

テクスチャB:ランダムな柄

 

 

指先まで美しい吸血鬼の少年が完成しました。

 

線の強弱や描きやすさにこだわったカスタムブラシで、繊細なタッチに仕上がりました。

カスタムブラシを使うことでイメージしたい塗りや線画に近づけるので、ブラシを調整してみると良いでしょう。

 

また、灰鴉さんがグラスを描くときに活用した[対称定規]は、CLIP STUDIO PAINTならではの機能です。

パース通りに線が引ける[パース定規]や、平行な線や放射線状の線が引ける[特殊定規]など、多種多用な使い方ができるので、ぜひ試してみてください。

 

 

灰鴉さんのタブレットのオススメポイント

いつもは板タブレットで描いているので、液晶に描くことも新鮮でした。タブレットをよく見るので、気になっていたんです。

使ってみて、筆圧感知や描き心地の違いは気になったのですが、支障なく描くことができました。

デジタイザペンは握りやすくて、線が引きやすかったです。わがままを言えば、スペックや描き心地が良いので大きなサイズも出てほしいな…と思いました。

また、CLIP STUDIO PAINTはデジタルを始めた頃から使っており、使い始めて6年程になり、ブラシもたくさんカスタマイズしているので、その設定をそのままraytrektabのCLIP STUDIO PAINTに移行できたところも良いと感じました。

 

 

SS スモールエスとは

2005年に創刊されたイラスト雑誌。「メイキング&投稿マガジン」というキャッチコピーの通り、イラストの描き方の取材記事と、投稿イラストの掲載によって誌面がつくられている。デジタルとアナログの両方のイラストが楽しめる内容。Webから作品が投稿できる。

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