【ネームの作り方】プロットから8Pのコマ割りを考える・少年マンガ編

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このシリーズでは「国際コミック・マンガスクールコンテスト 2020 - CLIP STUDIO PAINT」の作画部門の課題ネームが作られる過程を解説します。

解説:マンガスクリプトDr.ごとう

ラフネーム制作:マンガスクリプトDr.ごとう

清書ネーム制作:えの


プロットを作成した前回の記事は、こちらからご覧ください。動画でも解説しています。

https://tips.clip-studio.com/ja-jp/articles/2858



■コミックスクールコンテストとは


全世界の学生を対象としたマンガ、イラストコンテスト。入賞者には、賞金やデジタル制作に最適なソフトウェア、ペンタブレットを進呈するほか、メディアで作品発表のチャンスも!さらに、プロクリエイターや編集者から作品に対する講評も受けられ、スキルアップにもつながります。新たに作画部門やWebtoon部門など4部門が追加され、入賞のチャンスも広がりました。

https://www.clipstudio.net/promotion/comiccontest/ja/


今回は、作成したプロットから、どのようにネームに起こしていくか、思考の流れについて順を追って解説します。

今回のネームの作り方は、とりわけベーシックな手順です。32pなどの長いページ数の作品を作るときにも活用できます。


清書ネーム

まず、はじめに清書ネームを読んでみてください。テーマは「約束」です。

https://share.clip-studio.com/ja-jp/contents/view?code=0ebd3f44-9a7d-4b3b-8c80-6faf3c67a434&at=1582878303


はじめに私がラフネームを作り、そのあとで別のライターに渡しブラッシュアップしています。

今回は8Pのネームです。ラフネームではプロットの内容を以下のように配分しました。

後ほど、このラフネームと清書ネームを比較しながら1ページずつ解説していきます。


今回8Pのネームを作成するにあたり、こちらの「少年マンガ編」で注力したのは「約束をする良さ」と「意外性の感動」です。


また次の機会に紹介する「少女マンガ編」では、「約束を叶える良さ」と「カタルシスの感動」を重視しました。

※少女マンガ編は、こちらからご覧ください。

https://tips.clip-studio.com/ja-jp/articles/2859


ページの割り振り

はじめに、プロットの内容を8Pの中に落とし込むために、ページ全体への割り振りを考えます。


 まず、後半のページの割り振りを考えていく

今回は「意外性」を重視したかったため、相棒風の男が実はラケットであったことの提示を、ページめくりの6P目に用意しました。

これはパターンとしてふたつの展開が考えられます。

・約束をした後に、実は男がラケットだったと読者に気付かせるパターン

・ラケットだと読者に気付かせた後に、約束を交わすパターン


今回はテーマが「約束」であったために、約束をする良さをより強く演出したく、後者を取りました。


 序盤・中盤まで戻ってページの割り振りを考える

中盤では人物同士の対立が描かれます。今回で言えば「ラケットを使い続けたい男」と「捨てさせたい男」です。ここも言葉での言い合いでは絵になりません。せっかく題材がテニスなので、ラリーをさせながらお互いの主張をぶつけさせることを考えます。


3Pあたりで強く意識しているのは最後のコマです。「こいつを使い続けることが一番に決まって…」というセリフで「ラケットを使い続けたい」という思いをしっかり読者に伝えること。これがこの8Pネームの軸になります。


対立の後、5Pあたりは主人公の本当の気持ちや深い部分がさらけだされるパートです。8Pのマンガでは、ここで心情を深掘りする余裕はありません。そこでただひとつ、「本当は全部分かっていた」という新事実を読者に伝えます。


ここまでできたら、最初に戻って1P目について考えます。

マンガの1P目とは、「どんな状況であるのか、キャラクターや舞台など情報を伝える」役割があります。


静かな導入では絵として映えないので、最初から2人でラリーをしている場面から入ることも一度は検討しました。

しかし今回はそうしてしまうと、

・中盤のラリーを考えると、ひたすらラリーが続くことになる。

・2人の関係性を理解しにくい。

・壊れかけのラケットに思いを馳せる雰囲気の良さが出ない。

…と、デメリットが多いため、静かな物語の導入を採用しました。


これで1P目が決まります。

こんな感じで、全体のページ割り振りは決まりました。


実際にコマ割りをしてネームを作る

ページの割り振りが終わったあと、1ページ単位で、どこをどう魅力的に見せていくか決めていきます。そして、そのコマを中心にページを組み立てて、ネームを作っていきます。


ここから先は、ラフネームと完成ネームでの演出の違いに着目して解説します。


ネームをブラッシュアップする際に重視したことは「分かりやすさ」です。


ラリー相手がラケットだったという展開は、読者に伝わりにくいだろうという認識を持っていたので、客観的に見られる別の人に修正してもらうことにしました。

(こういう割り切りも大事ですね。客観性が欲しかったら意図を話して他者に見せるのが一番!)


【POINT】どこを絵として強く見せるか

魅力的に見せたかったポイントとその見せ方が違うことで、ラフネームと清書ネームでどのようにコマ割りが変わったのかということに着目してもらいたいです。


■1P目

「どんな状況であるのか、キャラクターや舞台など情報を伝える」1P目です。

左が清書してもらった完成ネーム、右が私のラフネームです。


■2P目

清書され、全体的に状況がしっかり伝わるようになったかと思います。


■3P目

ラフ(右)では主人公の正面をとらえているコマが、清書(左)では変更されています。

人物の顔を正面から捉えるかどうか、見せ方によって、読者の気持ちを主人公に重ねさせるか、それとも読者に主人公を眺めて気持ちを想像させるか、やや印象が変わります。ここは作風の違いがほんのちょっと現れていて面白いです。


■4P目

ラリーの応酬が続きます。


■5P目

ラフネーム(右)ではやや主人公より、清書ネーム(左)ではややラケットよりの心情描写になっています。


■6P目

「意外性」を見せる、ページめくりの6P目です。

ここも、ラフネームではやや主人公目線ですが、清書ネームではふたりのやりとりを眺める描き方になっています。


■7P目

清書ネーム(左)では、動きの表現をうまく使って見せ場を作っています。このような演出の違いは、作家ごとにこれまでどんな演出方法のストックを溜めてきたかで変わってくるところです。


■8P目

清書ネーム(左)では最後に表情を見せるか見せないか悩むところでした。


今回は、プロットができあがったあと、どのようにページ配分を考え、コマを割っていくかをお話ししました。みなさんのネーム作りの参考になれば幸いです。


最後に大事なこと

最後にひとつ、お伝えしたいこととして、実践の中でこの知識を自分の身につけるのが何より大事です。


自動車の教習所と同じで、教官の運転を見せてもらうと、なんとなくできる気になってしまうものですよね。しかし実際にハンドルを握り、アクセルを踏んでみなければ車を動かせるようにはなりません。

ぜひ自分のネームで実践してみてほしいです。


また東京ネームタンクの「ネームできる講座」や「まんが奨励会」はまさにその実践の場所です。それぞれ今の実力に合わせてネーム操作を身につけてもらっています。こちらもお待ちしておりますね!


こちらの記事の内容について、動画でも解説しています。

https://www.youtube.com/watch?v=eXreVF2a_wg



▼ごとう隼平:マンガスクリプトドクター/東京ネームタンク代表

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▼マンガスクリプトDr.ごとうとは

少年漫画、少女漫画、恋愛漫画、異世界漫画、様々な漫画ストーリーの作り方・テクニック・コツを紹介しています。そのほか漫画紹介やイラストメイキング、クリップスタジオの使い方・iPadデジタル作画環境についてなど、幅広くお話ししていきます。


▼東京ネームタンクとは?

東京ネームタンクは漫画ストーリーを専門とする教室&研究室です。

大人気講座『ネームできる講座 Plus』では3日間の講義で32Pのネームを作ります。


講座の特徴はストーリーを構造から学ぶこと。

これまでの漫画の描き方の講座や本にありがちだった、ある漫画家先生の特定の方法というものを極力排除し、日本の商業漫画に共通する要素と構造は何なのか、を徹底的に精査。

10年以上の研究と実践から完成した「NDS」(ネームできるシステム)により、年間200作品以上の読切作品を制作し、専門学校と比較して圧倒的な数の受賞、デビュー、掲載、連載作家を輩出。初心者、漫画家志望者からプロ漫画家まで幅広い支持を得ています。

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