漫画家Yami Shinによるカバーイラスト制作全工程&インタビュー!
スイスの漫画家Yami Shinさんの描く「Green Mechanic」シリーズは、フランスのKi-oonから出版されています。第6巻の発売を記念して、CLIP STUDIO PAINTによるカバーイラスト制作の全工程を紹介します!
Ki-oonのマンガコンテストから生まれた「Green Mechanic」
Yami Shinさんは、フランス語圏で2年に一度開催される大規模なマンガコンテストである「トランプラン・キューン」に挑戦する前から、すでにファンジン(同人誌)の分野で有名でした。彼女はコンテストで大賞を受賞し、それに伴い出版契約を獲得しました!「Green Mechanic」はプロ作家として手がける最初のシリーズです。
彼女は、SF、アクション、エモーションの混ざりあう、独創的な作品を追求しています。
そのパワフルで繊細な作風は、さまざまなジャンルの読者を惹きつけます。
「Green Mechanic」は2018年に、ヨーロッパ最大のマンガ・アニメコンベンションである「Japan Expo」で最優秀国際漫画賞を受賞しました!
この記事では、Yami Shinによるカラーイラスト制作のメイキング・チュートリアルに加え、当サイト初公開のインタビューを掲載しています。
Yami Shinのカラーイラスト制作過程!
ステップ1
まず、構成を考えながらいくつかの色を使って、イラストのラフスケッチを作成します。
ステップ 2
線画作業を行います。
Gペンだけではなく、いくつかのブラシを使用します。
CLIP STUDIO ASSETSからダウンロードできる、以下のブラシを使用しました。
植物のためのブラシ:
星のためのブラシ:
線画に統一感が出るように、ブラシの調整を行います。ペンで描く主線にブラシの線の太さを合わせるほか、自分の画風と比べてディテールが細かすぎる場合や、逆に不足している場合などです。
いくつかのブラシについては、それをベースにして、自分の画風に合うように作り直すことがあります。
線画が完成したら、色のレイヤーを[合成モード]:スクリーンで重ねて、線画の色を変更します。
ステップ3
ふんわり色を乗せます。前景のキャラクターなどの要素はべた塗りで、背景にはグラデーションで色を乗せています。
光源は上から来ているので、前景の要素の上に黄色など明るい色を重ねます。全体に統一感が欲しいので、影と光のコントラストはあまりつけすぎないようにします。
ステップ4
着彩のほとんどに、以下の色が混ざるブラシを選びました。
一部には水彩ブラシを使用して、水彩風の質感を与えます。
大体の色は決まりましたが、雰囲気が足りません!ここからさらに、いくつかのフィルターと、塗りのレイヤーを追加していきます。
ステップ5:
コントラストを抑えて、ノスタルジックな側面を与えるための効果を追加します。
不透明度を低く下げた濃紺色のレイヤーを重ね、[合成モード]を[除外]に設定します。イラストの明るい色は黄色く、暗い色は青くなります。
色味を強調して、より質感のある水彩風のブラシで着彩を仕上げます。
(以下の四角いブラシや、濡れた効果を与える別のブラシを使用しました)
髪に「ウェット効果」のブラシを使い、アナログの水彩紙のような効果を与えました。
ステップ6
気に入った雰囲気になったら、一度作品ファイルを複製して2つ保存します。1つはすべてのレイヤーが分かれた状態のままで保管し、もう1つのファイルはすべてのレイヤーを統合して、作業を進めます。
こうすることで、途中で問題が発生した場合、レイヤー構成を維持したファイルに戻って作業できます。注意しすぎることはありません。
ステップ7
レイヤーを統合することで、輪郭に加筆して、線画と装飾を馴染ませることができます。背景には特に効果的です。
さらに、小さな輝きの効果を与えるためにDustブラシを使用しました。
ステップ8:
色調が満足いくものになったら、イラスト全体に少しだけ「ノイズ」の効果を加えます!
【POINT】仕上げにノイズ効果を追加する方法
CLIP STUDIO PAINTで、イラストの仕上げにノイズの効果を追加するには、以下の方法で行います。
①完成したイラストのclipファイルを複製して、バックアップを取っておきます。
②[レイヤー]パレットで、イラストの一番上に[新規ラスターレイヤー]を作成します。
③[フィルター]メニュー→[描画]→[パーリンノイズ]を選択し、ダイアログで[スケール]を「1」に設定して、OKをクリックします。
④[レイヤー]パレットで、合成モードを[オーバーレイ]、不透明度を20%ほどに変更します。
イラストに、ノイズの加工が合成されました。
ステップ9
仕上げに、小さな輝きの効果を追加して、[編集]メニュー→[色調補正]のコマンドで、コントラストと彩度をやや強調します(ノスタルジックな効果を失わないように、あまり強くしません)。
これで、「Green Mechanic」第6巻のカバーイラストが完成です!
「Green Mechanic」のあらすじ
人類は自分たちの惑星をゴミで覆われた砂漠に変えてしまいました。人類が居住可能な場所は、人とロボットでにぎわう巨大都市「メガシティ」と、兵士に狩られる怪物たちの謎めいた「エルザッツ」だけ。この沈んでいく世界で、テレパシー能力が発達した年若い孤児のミーシャが生き延びていました。
他人の感情を読む能力をコントロールできず、彼女は仲間の人間から離れて暮らしていました。しかしこの力のおかげで、ゴミ捨て場の真ん中で記憶を持たずにさまよっていた変形ロボット、リボーンを見つけます。
リボーンの変形技術の驚異は、自在に姿を変えられることです。ためらうことなく少女は、リボーンにミカエルの姿をとらせます。ミカエルは10年前にエルザッツのグループに誘拐されて以来、行方不明になっているミーシャの親友です。
クリーチャーはどこから来たのか?彼らが捕獲したものはどうなるのか?誰も分かりません。
ミーシャは仲間を見つけるために、優れた戦士や捜査官の集まる「ランフォール」(Renforts)に加わります!彼らの助けと引き換えに、自身の精神的な能力、リボーンを最強の鎧にする能力を使って彼らの活動に協力します。
真実のための戦いが始まります!
第1話は、こちらから無料で公開されています。(※フランス語)
未発表インタビュー: Yami Shinへの3つの質問!
■プロ漫画家になった経緯を教えてください。
「セーラームーン」や「エヴァンゲリオン」のような作品がきっかけで、私は10代で絵を描き始めました。その後「鋼の錬金術師」シリーズを発見し、それが啓示になりました。
自分の情熱を、他の人と分かち合いたいと思いました。美術学校でも一年を過ごしましたが、主に独学で学びました。Deviant Artのようなサイトに、多くのイラストを投稿しました。
ファンジン(同人誌)の世界を知り、本業の傍らに情熱を形にすることができました。オリジナル作品とファンアートを集めた2冊から、ファンジン制作を始めました。例えば、黒乃奈々絵の「PEACE MAKER」の世界に関する短いストーリーなどを描いていました。
2、3年後に、オリジナル作品を作り始め、約70ページの4巻を発表しました。その頃には、ネット上で物語を無料で公開することもできました。
ファンジンは、技術についても仕事のペースについても、学べる素晴らしい方法です。
そして、Ki-oonのコンテストで優勝して、プロになりました。それからは、情熱を最大限に傾けて生きることができるようになりました。学校での授業も時々行います。
時間が許すかぎりは少しでも、ファンジンも続けていきます!
■「Green Mechanic」を描く上で重要なポイントは何ですか?
重要なシーンでのキャラクターの表情です。
「Green Mechanic」はアクション・サスペンスですが、いくつかの心理的なテーマにも取り組んでいます。キャラクターが強い感情に直面したとき、できる限りそれらを描き表す必要があります。
もちろん、物語の理解しやすさは大前提です。しかしカットによって、深く熟考させる意図があるとき、また独特な感情を伝えなければならないとき、それを表現するために多くの時間を取ります。
■CLIP STUDIO PAINTを使用する理由は何ですか?
販売された頃にCLIP STUDIO PAINT(CSP)を知りました。試した当時は古いノートパソコンを使用していたため、重いブラシを処理できず、少し問題が起きていました。なので、はじめの3巻までは別のソフトウェアを使っていました。
その後、デスクトップパソコンでCLIP STUDIO PAINTを使い始めてからは、まるでマンガのアシスタントがいるかのようです!
このアプリは、とりわけひとりで作業する際に、時間が節約できるさまざまなツールを提供しています。私は主にモノクロのページのために、使用しています。
私はブラシのカスタマイズの柔軟さに感謝しています。さらに、このアプリには充実したブラシのコミュニティ(CLIP STUDIO ASSETS)が提供されています。
つまりCLIP STUDIO PAINTを使用する理由は、効果的で、とても良い結果が得られるからです。作品の質を大幅に向上させるためです。個人的には、このアプリなしで行うことはできません!
Yami Shinについて、詳しくは以下を参照してください。
●Yami Shin:
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●Ki-oon:
Ki-oonは、ファンタジーからスリラーまで幅広いジャンルで、最高の想像力を提供する漫画出版社です! 創作の分野で創業以来活躍し、現在では日本やフランス語圏の作家と直にコラボレーションを行い、多くのタイトルを出版しています。
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