ベクターレイヤーを使ってみよう

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雨七

雨七

はじめに

初めまして、雨七と申します。

今回はベクターレイヤーとラスターレイヤーの違い、ベクターレイヤーを使用することのメリットなどについてご紹介いたします。

 

ベクターレイヤーとラスターレイヤーの違い

初めに、ベクターレイヤーとラスターレイヤーの違いについて説明します。

下の画像をご覧ください。

左の猫のイラストはラスターレイヤー、右の熊のイラストはベクターレイヤーで描いています。

どちらもクリップスタジオのブラシツールに最初から入っているGペンで描いており、ペンのサイズも同じです。

一見すると線に大きな違いは無いように見えます。しかし、この二つの画像を拡大すると違いが現れます。

変形ツールを使って、このように二つの画像を拡大しました。

右のベクターレイヤーに描いた絵の線には変化が見られませんが、左のラスターレイヤーの線は荒れています。

この画像をさらに拡大表示して分かりやすくしたものが下の画像です。

左のラスターレイヤーに描画した線は変形ツールを使って拡大した際、解像度が落ちてしまったことが分かります。

一方、右のベクターレイヤーに描画した線は拡大しても元の解像度を保つことが出来ており、劣化していないのが確認できるかと思います。

ベクターレイヤーに描いた線全体をオブジェクトツールで選択すると線だけでなく「制御点」が沢山作成されていることが確認できます。

この制御点はラスターレイヤーにはありません。

制御点については後ほど解説いたします。

ベクターレイヤーの特徴・使用するメリット

次に、ベクターレイヤーの特徴や使用するメリットについてご紹介いたします。

 

 

 

【ベクター用消しゴム】

 

イラストを描いている際、下の画像で赤丸がしてある部分のように線がはみ出てしまう場面があると思います。

このイラストでは輪郭から眉がはみ出てしまっています。

このような時、ラスターレイヤーの場合は消しゴムツールで消したい部分を細かく擦るなどして消します。

しかし、ベクターレイヤーでは消しゴムツールの中にある「ベクター用」消しゴムを使用することにより効率よく線を消すことが出来ます。

まず、消しゴムツールにある「ベクター用」消しゴムを選択します。

続いて、ツールプロパティからベクター消去にチェックを入れて、左から二番目のアイコン「交点まで」を選択して線のはみ出た部分をなぞります。

すると線がはみ出ていた部分のみが削除されます。

また、先ほどの状態で眉の線全体を消すこともできます。

ベクター用消しゴムのツールプロパティにある、左から三番目のアイコン「線全体」を選択して消したい線をなぞります。

すると触れた部分だけではなく、触れた線全体が削除されます。

 

ベクター用消しゴムのメリットは、

 

・消したい線が別の線と重なっていても消したい部分のみ削除しやすい

・一気に線全体を消すことが出来るため、ラスターレイヤーのように消しゴムで何度も擦らなくて良い

 

などです。

 

さらに実用的な使い方を説明します。

下のようなイラストを描きました。襟の部分の線がはみ出ているので、ベクター消しゴムを使って修正してみます。

下の画像の赤い矢印のように「交点まで」に設定したベクター消しゴムではみ出た線をなぞります。

すると一気にはみ出ていた部分を削除することが出来ました。

他のはみ出ている部分も同様にベクター用消しゴムで消すことによって修正が簡単にできるでしょう。

 

 

ベクターレイヤーで描いた線を消すときの注意点としては、ベクターレイヤーに描いた線を通常の消しゴムで消してしまうと、線が消えたように見えても線の情報が残ってしまうことです。線の編集をしたい時などに邪魔になってしまいますので、ベクター用消しゴムを使って消しましょう。

 

 

【線の移動】

 

ベクターレイヤーに描画した線にはこのように制御点(丸い点)とパス(制御点と制御点の間の線)があります。

一ストロークで描いた線は繋がっており、その線だけを選択して移動することもできます。

線の移動だけではなく、制御点のみを移動することもできるため、線を描いた後に線の修正をすることが出来ます。

 

 

【制御点の移動】

 

下の画像の輪郭の部分を修正してみます。

オブジェクトツールで選択してみると、下のように制御点が存在していることが分かります。

この制御点を移動したり削除することによって、制御点同士を繋いでいるパス(線)も変化します。

「線修正」ツールを選択し、「制御点」を選択します。

ツールプロパティから「制御点の移動」を選択して、移動したい制御点をドロップします。

制御点を移動しながら調整していき、輪郭を修正することが出来ました。

【線幅の修正】

 

ベクターレイヤーでは、線を描いた後からでも線の太さを修正することが出来ます。

今回は線の幅を太くしてみましょう。

線修正ツールから「線幅修正」を選択し「指定幅で太らせる」を選択します。

ここでは変化が分かりやすいように数値を5.0に設定しました。

線幅の修正は「線全体に処理する」にチェックを入れると線全体の太さを変えることができ、チェックを入れない場合は線の一部分のみ太さを変えることが出来ます。

 

まずは「線全体に処理する」のチェックを外し、下の画像の矢印のように線の上をなぞってみます。

すると線の一部分のみが太くなりました。

 

次は「線全体に処理する」にチェックを入れた状態で同じように線をなぞってみます。

輪郭の線全体が太くなりました。

 

線幅は太くするだけでなく、逆に細くすることもできます。線全体の太さを変えるか一部分の太さを変えるかなど、場面によって使い分けることが出来ます。

また、「制御点」→「濃度修正」では線の濃度を変えることもできるので、いろいろ試してみてください。

 

 

【線種の変更】

ベクターレイヤーでは、線の種類を変えることが出来ます。線を描いた後でも変更することが出来るうえ、線画を描きなおす手間がないので便利です。

 

 

下の画像のようなイラストを描きました。線画はベクターレイヤーで描いており、色はラスターレイヤーで塗っています。

このイラストの線の種類を変更してみます。

まず、オブジェクトツールで線種を変えたい線を選択しましょう。

今回は線画全体を選択します。

ツールプロパティの「ブラシ形状」を選択して変更したいブラシを選択します。

ここでは、分かりやすいようにスプレーを選択しました。

線種がスプレーに変更されました。

線の見た目を変えたくなった時に簡単に変更することが出来ますので、覚えておくと良いと思います。

ベクターレイヤーとラスターレイヤーの使い分け

ベクターレイヤーでは塗りつぶしツールやグラデーションツールを使用することが出来ません。

例えば、ベクターレイヤーを選択した状態で塗りつぶしツールを選択すると、このように禁止マークが出て使うことが出来ません。

また、ベクターレイヤーでブラシを使って色を塗ると制御点が多数出来て重くなりやすいです。

そのため、色はラスターレイヤーで塗ることをお勧めします。

ベクターレイヤーは線を拡大したり変形しても劣化せず、線の修正もできるので、線画を描くのに向いています。

ラスターレイヤーは制御点が出来ずベクターレイヤーへの描画と比べて比較的動作が軽く、色を塗るのに向いています。また、ベクターレイヤーではフィルターを使えませんがラスターレイヤーでは使うことが出来ます。

 

例として、下の画像右のイラストのレイヤー構成は大まかには下記の通りです。

下の画像の色ムラのフィルターも、ラスターレイヤーに適用しています。

ベクターレイヤーは線画、ラスターレイヤーは色を塗ったりフィルターなどで加工したいときに使うのがおすすめです。

おわりに

今回はベクターレイヤーとラスターレイヤーの違い、ベクターレイヤーを使うメリット、使い分け方について説明させていただきました。

初心者の方に向けて作成したこともあり、他にも紹介しきれていない機能や使い方があります。ぜひ様々な機能を試してみてください。

初めてのTIPS作成で至らない点もあったかもしれませんが、ここまでお読みくださりありがとうございました。

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