はるまきごはんのアニメーション制作:「彗星になれたなら」MVができるまで

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ClipStudioOfficial

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さまざまな分野で活躍するクリエイターはるまきごはんさんによる、アニメーション制作チュートリアルです。
自身の楽曲「彗星になれたなら」MVアニメーションの絵コンテの着想、個人で製作する上での「効率化ルール」、油彩ブラシなどを使った味わいのある画面作り…CLIP STUDIO PAINTを使用したアニメーション制作について、詳しく伺いました。

https://www.youtube.com/watch?v=8jVXc6N4muc



■プロフィール:はるまきごはん

音楽、イラスト、アニメーションなど、さまざまな分野での創作活動を手掛けるアーティスト。
2014年頃から、ボカロPとしてVOCALOIDを使った音楽活動を開始し、現在は自身でもボーカルを務め、MV制作やアルバム制作、ワンマンLIVEなど、音楽活動を行っています。
自身の曲のアニメーションMVの作画やイラストの制作に、CLIP STUDIO PAINTを使用しています。
2019年から、アニメーション制作チームである「スタジオごはん」を発足。

1.波の作画

完成作品はこちらです。

 1-1 絵コンテ・構想

「彗星になれたなら」という楽曲のMV制作では、2カット目から波の押し引きを見下ろすようなカットを作りました。
まずは主人公がどういう場所にいるのかを伝えたかったため、MV冒頭部分で海の象徴のひとつでもある波を描くことに決めました。
絵コンテもCLIP STUDIO PAINTで、1280×20000のような縦長のキャンバスを使って作っています。MVを作る際は音楽のグルーヴ感に寄り添ったアニメーションである必要があると思うので、絵コンテ段階ではそういう部分を特に意識しています。

▲絵コンテ時の波のカット

 1-2 アニメーション制作で使う機能

[左右反転]や「ブラシ」など、通常のイラスト制作で使っている機能を割愛すると、アニメーション制作では主に[タイムライン][アニメーションフォルダー][アニメーションセル]を加えて使います。
特にタイムラインとアニメーションフォルダーは必須で、アニメーションフォルダー内に作ったレイヤーをタイムラインに並べて、1フレームずつ作画していくのが基本的な流れです。

[タイムライン]パレットから、作画の際に前後のイラストを薄く表示する機能である[オニオンスキン]機能もON/OFFできます。
[アニメーションセル]パレットは、[現在のアニメーションセルを編集対象に固定]という、狙ったアニメーションセルからオニオンスキンを固定して表示できるような機能が便利なので、そのためだけに表示しています。

▲[レイヤー]パレットや[タイムライン]パレットで他のセルを選択しても、[アニメーションセル]パレットの[編集対象セル]が切り替わらなくなります。

タイムラインを操作する際は、ショートカットキーを使うのが楽です。
僕の場合は[ショートカットキー設定]を[メインメニュー]→[アニメーション]→[トラック編集]→[前のセルを選択]をキー「1」に、[次のセルを選択]をキー「2」に、[メインメニュー]→[アニメーション]→[再生/停止] をキー「A」に設定しています。
普段からショートカットキーを使っている場合は、今書いた部分だけでもショートカットキーに登録しておくと操作がかなり楽になると思います。

▲アニメーションで使う機能

 1-3 波の作画の手順

アニメーションに限らずですが、波のような主線のないものを描く時はCLIP STUDIO PAINT標準の油彩平筆をよく使います。
曖昧な形を描く時に、平筆の形がそのまま味になるのでお気に入りです。
サイズは常に変えながら使っていますが、それ以外のパラメーターは画像の通りです。


まずは波のフチの部分から作画していきます。


波のフチを一通り動かしたら、次はそのまわりの小さい波や、アクセントカラーである緑の小さい波をそれぞれの色ごとにアニメーションフォルダーを分けて描いていきます。
色やパーツごとにアニメーションフォルダーを分ける理由は、あとからパーツごとに色や位置を調整できるからです。そこはイラストを描く際にレイヤーを分ける感覚と同じです。


最後は波が引いた跡の砂に染みる部分を描いています。
波のようなごちゃごちゃしたものを描く時は、波を自分なりに分解してパーツごとに描くと描きやすいです。
あと、僕がアニメーションを作る際は、形や色を正確に描くことよりも全体のルックのまとまり感や、音楽に寄り添った動きであるかどうかを重視しています。


これでCLIP STUDIO PAINTでの作画は完成で、あとはパーツごとに書き出してAfter Effectsで組み上げていきます。

2.アニメーションMVにおける作画

ここからは、カットを通じてアニメーションMVの作画作業の時に自分なりに考えていることをまとめます。

▲車窓の作画1

 2-1 効率化ルール

アニメーション制作自体がとても時間がかかるものなので、いかに作業を効率化するかという部分も大事だと思います。
はるまきごはんの場合は、4分尺の楽曲のためにひとりで制作すると、毎日8~9時間作業しても1ヶ月半程度かかっていました。
作画の際下描きをしないなど手順を丁寧にしないとか、(一枚絵では許さないであろう)ある程度のデッサンの乱れは許容するとか、漠然とした「沼にハマりすぎないルール」みたいなものを作るとそれなりに早くなると思います。
上記の画像のカットでは、下描きをせずそのまま線画を描いてしまっています。(というかいつも下描きをしないので、ルールですみたいなフリをしています)

▲バスに乗るナナの作画

 2-2 彩色の手順

彩色の際は、線画のアニメーションフォルダーを複製して、描画を全て消去して、そのレイヤーに色を塗っています。
そうすると、タイムライン上のアニメーションフォルダーのセル配置を保ったまま塗れるので、楽だと思います。

主に使うツールは[自動選択]ツールの[他レイヤーを参照選択]サブツール→[塗りつぶし]コマンドの組み合わせと、[塗りつぶし]ツールです。どちらを使っても大丈夫だと思います。
アニメーションでブラシを使って色を塗るのは途方もなさすぎるので、ブラシの質感を出したい場合以外は全て塗りつぶしを使います。
自分の場合は、あとあと色を変えたりするのが楽なので、色ごとにアニメーションフォルダーは分けて塗っています。

 2-3 作画でやること、撮影でやること

必ずしも作画でつけなくても良い動きもあるので、そういう動きはAfter Effectsでやってしまうことも多いです。
具体的には、停止している物体の直線的な移動や、拡大縮小などはAfter Effectsでキーフレームを打ってやることが多いです。
何を手描きで、何をキーフレームで動かすかを考えるのもアニメーション制作の醍醐味だと思うし、そのバランスが表現の個性につながっていく部分もあると思います。

おわりに

読んで頂きありがとうございました。
自分はノウハウのある会社や組織でアニメーション制作をした経験はないし、専門的な知識を大量に持っているわけではありませんが、これからCLIP STUDIO PAINTでアニメーションを始めてみようという方や、今アニメーションを作っている方に向けて、少しでも参考になればと思い、自分が普段考えていることをまとめました。
何かのきっかけになれば嬉しいです。


詳しいメイキングを、動画でもご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=jPlwGN8Yk3g&feature=emb_logo

「彗星になれたなら」サンプルデータを公開中!

以下のページからCLIP STUDIO PAINTで作成されたアニメーション作品「彗星になれたなら」のclipファイル(一部抜粋)がダウンロードできます。

https://www.clipstudio.net/ja/dl/sample_data


CLIP STUDIO PAINT EXで開くことで、ファイルを編集することができます。
※フレーム数に制限のあるPRO版、DEBUT版では編集できません。

[タイムライン]パレットを表示して、[再生/停止]をクリックすると、アニメーションが再生できます。


使用されている[タイムライン]や[アニメーションセル]などの機能について、以下のTIPSで解説しています。

https://tips.clip-studio.com/ja-jp/articles/2047#e1566b1e

新アルバム「ふたりの」2020年8月26日発売!

「はるまきごはん×CLIP STUDIO PAINT -みんなで描く『ふたりの』ミュージックビデオプロジェクト-」で制作した、「彗星になれたなら(Acoustic "Nightwalker" Arrange)」のミュージックビデオを収録した新アルバムが発売します。

▼新アルバム「ふたりの」
タイトル:ふたりの
発売日:8月26日(水)

初回限定盤アルバム&アートBOX
品番:SNCL-36・37・38
価格:¥3,900(税抜)

通常盤
品番:SNCL-39・40
価格:¥2,300(税抜)

公式サイト:

http://harumakigohan.com/ftr/


はるまきごはん×CLIP STUDIO PAINT -みんなで描く『ふたりの』ミュージックビデオプロジェクト-:

https://harumakigohan.com/mvp

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