自作ウォーターマークを適切に入れて、大切なイラストを守ろう
前書き
※ウォーターマークの作り方から読みたい人はページ上部の目次より「ウォーターマークの自作方法」から読み進めてください。
日本語字幕付き動画では、便利な操作など細かい解説も入れています。
その他にも、興味のある項目だけ読んでいただいて構いません。
この記事のひとかけらでも、あなたの創作活動の助けになれば幸いです。
前書きでは、この記事に書かれていることや、推定読者、ウォーターマークの必要性などについて書いています。
ウォーターマークとは
ウォーターマーク例
ウォーターマークとはイラストや写真につけることで、その作品の権利者を伝える為のものです。
その他にも、その作品を「こういった使い方はしないでください」「これは見本ですよ」と表記することもあります。
大切なイラストを守るためには
インターネット上にイラストを公開すると、自分が意図しない使い方をされてしまう可能性があります。
ウォーターマークは、その可能性を少しでも下げてくれるものです。
そのウォーターマークを自作するアイディアやclip studioでウォーターマークを作品に入れる方法について書いていきます。
この記事で書いたこと
ウォーターマークの必要性
ウォーターマークのデザインアイディアについて
ウォーターマークの作り方
作成後のウォーターマークの使い方
ウォーターマークの加工方法
この記事で書かなかったこと
ウォーターマークがどういった用途に効果があるかなどの検証
作成したウォーターマークが除去されないかどうかの検証
こんな方向け
自分でウォーターマークを作りたいけれどやり方がわからない人
使っているウォーターマークを使う時に、短い時間で作品に設定したい人
ウォーターマークの加工例が知りたい人
ウォーターマークの入れ方や入れる位置に悩んでいる人
ウォーターマークの作成を依頼したいが、どんなものを依頼するか悩んでいる人
本題
前提
ウォーターマークの弱点
ウォーターマークは「自分が描いたもの」とサインを入れたり「これは転載しないでください」と記載するものです。
ですが、それを守ってくれない人もいます。
例えば、絵の端に小さく描かれているだけでは、端をカットして再利用されるかもしれません。
規則的な記号であれば、画像を加工してウォーターマークを消して使う人もいるかもしれません。
日本語だけでは、外国の方は「読めなかったから」といった理由で使ってしまうかもしれません。
前提として、ウォーターマークはそういった悪意に弱いものです。
単に作品につけただけでは作品を完全には守れません。
消されやすく、なかったことにされやすいつけ方をすれば、ひと手間かけてウォーターマークを入れた時間が無駄になってしまいます。
ウォーターマークをつける意味はないのか
では、わざわざ時間をかけてウォーターマークを入れる意味はないのでしょうか。
そんなことはありません。ウォーターマークを作品に入れることによって、あなたがその素敵な作品の作者であることや、あなたがその作品を大切にしていることを伝えることは、とても大きな意味があります。
自分の作品だと記すことで、意図しない使い方をされてしまった際に証拠を提示し、取り下げを主張することもできます。
また、ウォーターマークはあなたの作品を守る以外にも、こんな効果があります。
例えば、SNSのIDや自分の名前を入れたとします。
すると、あなたの作品を気に入った方が、あなたの他の作品も見に来てくれるかもしれません。あなたのSNSや連絡先がわかることで、あなたの作品を素敵だという言葉を届けてくれるかもしれません。SNS等をフォローして、日々応援してくれるファンになってくれるかもしれません。
私は逆の立場で、気に入った作品が流れてきたのに感想を届ける窓口が見つからず、切ない思いをしたことがあります。
自分の作品もそうだと言える自信はありませんが、自分が良いと思って出した作品は、誰かも好きだと言ってくれるかもしれない。その言葉が自分に届いたなら、それは素敵なことだなと思い、窓口は開けておくことにしています。
ウォーターマークを考え、作品に入れることは時間がかかることです。
ですが、時間をかけるだけの価値はあるものですので、この記事が参考になればと思います。
配布ウォーターマークをそのまま使う危険性
昨年2024年11月、Twitterの規約改正に伴い、ウォーターマークを入れるべきだと話題になっていました。
そこで、ウォーターマークを無料で配布し「ご自由にお使いください」と投稿している方も多くみかけました。
しかし、無料で広く配布されているウォーターマークを使用することはオススメしません。
何故なら、除去が容易だからです。
ウォーターマークの形がわかっていて、どんなレイヤー効果で重なっているかがわかれば、その逆加工を起こせばウォーターマークは除去できてしまいます。
単色&不透明ではウォーターマークを入れない方がいい
黒一色&不透明度を下げたウォーターマークが入っているものもよく見かけますが、推奨しません。
なぜならこれも、除去が容易だからです。
完全な除去といかなくても、暗記シートなどの要領で色加工をすると目立たなくすることができます。
その為、ウォーターマークを入れる際は、透過度を下げた単色のものを入れるのは控えましょう。
参考:ウォーターマークの除去についての簡易検証
配布ウォーターマークや単色透過ウォーターマークの簡易検証は、過去に下記記事を書きました。除去されてしまう仕組みについて簡単にですが触れています。
気になる方はお読みください。
ウォーターマークの自作方法
ウォーターマークに入れる文言を決める
前書きが長くなりましたが、早速ウォーターマークの作り方について書いていきます。
まずはじめに、ウォーターマークに入れる文言を決めます。
文言は自分の目的に応じて決めましょう。
基本的には下記項目から適宜変更するとよいかと思います。
自分の名前
自分のSNSのID
無断転載禁止
無断転載禁止(英語版)
AI学習禁止
AI学習禁止(英語版)
ファンアートにつき、ご本人様以外使用禁止
描いた日付
参考:ウォーターマークに入れる英語について
なお、英語での文章については、私は下記ツイートを参考に入れています。
文字のバランスを考えてマークを作る
クリップスタジオを立ち上げて、適当なキャンバスを作り、ウォーターマークに入れるテキストを並べていきます。
キャンバス比率は正方形でも長方形でも構いません。
出来上がったウォーターマークはレイヤー範囲で素材にしたり画像を書き出したりするので、完成した時にキャンバスサイズを考えれば大丈夫です。
ただし、小さすぎるといざウォーターマークを使う場合に文字がボケて読めなくなってしまう……ということが起きるので、解像度やサイズは極端に下げすぎないようにしましょう。
チラシの裏などに適当にラフを書き起こしてから作っても良いですし、テキストを並べてから、他のレイヤーにラフを描いてもいいでしょう。
自分のやりやすい方法でまずはひとつ、作ってみてください。
バランスを整えるコツは、下記の通りです。
フォント種類を増やさない
大文字・中文字・細かい文字と変化をつける
フレームなどの装飾を加える
文字毎に余白を十分な余白をとる
パーツ毎に文字の始まりを揃える
丸や四角など、色々なイラストに使いやすい形やデザインを考えて作るとよいかと思います。
他の人のロゴを参考にしたり、ロゴデザインなどについて情報発信をしている方のワンポイントアドバイスなども参考になるかと思います。
ウォーターマークのサンプルです。
フォントは全てイワタアンチックですが、フォントサイズを変更したり、文字を揃えたり、ロゴを追加するだけでもだいぶ印象が変わります。
clipstudioは整列ツールで文字の位置も調整できるため、バランス良く配置してみてください。
参考:ロゴマークのデザインアイディア
私はウォーターマークを作るにあたって、下記のツイートを参考に作りました。
みなさまのウォーターマーク作成の参考にもなりましたら。
イラストやロゴを書き加える
自分のロゴやサインなどがあれば、それもウォーターマークに追加するとよいでしょう。
季節や作風に合わせて装いを変えるのもいいかと思います。
文字だけではバランスが悪かった際、ちょっとした図形をブラシで追加しました。
気に入ったブラシで少し加筆するだけで印象がガラリと変わります。
左が秋頃に使ったウォーターマーク、右が12月頃に使っていたウォーターマークです。
文字や自分のロゴをベースに、季節感のあるイラストを加筆しました。
ウォーターマークを除去できるという噂のツールも、多色のイラスト風のウォーターマークは
除去に手こずるという噂も聞くので、華やかな彩りを加えるのも良いかと思います。
完成後に使いやすい形で保存しておく
ウォーターマークが完成したら、使いやすい形で保存しておきましょう。
ここで紹介するウォーターマークの入れ方は下記の2つです。
1. 完成したウォーターマークを1箇所に入れる場合->出力設定からウォーターマークのファイルを指定
2. 完成したウォーターマークを加工して入れる場合や、複数箇所に入れたい場合->素材登録をして、加工を行う
出力設定からウォーターマークを使用する場合
出力設定からウォーターマークを設定する場合、参照しやすい場所にファイルを保存しておきましょう。
動画位置: 出力設定でのウォーターマーク設定から
1. 画像を統合して書き出しを選択する
2. 書き出し設定下部の【ウォーターマーク】にチェックを入れ、【ウォーターマーク設定】ボタンを押下
3. ファイルかフォトライブラリでウォーターマークとして使うファイルを選択する
合成モード:ウォーターマークを一つのレイヤーとみなし、作品にどう合成するかを選べます。
不透明度:透過度を調整できます。
タイリング:チェックを入れることで、全体に敷き詰めたり、反転して敷き詰めることができます
素材登録からウォーターマークを使用する場合
動画位置: 素材登録をするところから
完成したウォーターマークを加工して作品に付けたい場合や、複数箇所に入れる場合は素材登録をしておくと便利です。
1. 透過素材にする場合、用紙を非表示にする
2. レイヤーメニューから、【表示レイヤーのコピーを結合】を選択
3. ウォーターマークとして使いたい画像が1レイヤーにまとまったら、編集 > 素材登録 > 画像 を選択
4. 素材名を入力し、拡大縮小設定を設定後、保存先を選んでOKを押すと、素材登録完了
登録後の素材は素材ウインドウからキャンバス部分かレイヤー部分へドラッグ&ドロップすると自由に使えるようになります。
今回のように画像で登録したものは、画像レイヤーとして扱われるため、作品ファイルへ追加後に加工する場合、適宜ラスタライズを行ってください。
ウォーターマークの入れ方
入れる場所
動画位置: ウォーターマークを入れるところから加工についてなど
ウォーターマークを入れるからには、
作品を見る人に見てもらえる位置に
簡単に消されないように
入れたいものです。
その為には、
作品の目立つ場所に入れる(人物の顔付近など)
文字が読みやすい大きさで入れる
文字が読める濃さで入れる
と良いでしょう。
下記に私の作例を提示します。
イラストの中心に読ませるウォーターマーク、それぞれの人物の顔に透過度を下げたロゴを入れました。
また、生成AIへの対抗としてイラスト全体にスクリーントーンをかけています。
また、ウェブ上にアップロードするデータは概ね印刷には耐えられない72dpiまで解像度を下げています。
イラストを切手風のデザインにすれば、消印風のウォーターマークも目立たないのではという実験です。
SNSのサムネでは人物の顔に堂々とマークを被せておき、ポートフォリオ上ではマークをとったものを公開しました。
ウォーターマークを加工する
作品に合わせてウォーターマークを加工すると、作品の世界観を壊さずにすみます。
加工によってより素敵な作品にすることもできるでしょう。
また、シンプルなウォーターマークでは除去危険性があるため、文字加工ツールなどを使った加工もおすすめです。
白文字+黒フチ加工
上記にグラデーションレイヤーをクリッピング
おくとば様のタイトルロゴ装飾オートアクションをお借りしました。
文字以外にロゴマークがあっても一緒に加工できるので、文字だけに限らずマークやイラストなどにも色々な加工ができるかと思います。
おくとば様のネオン加工オートアクションをお借りしました。
ネオンの色や種類も様々なので、イラストに合わせて雰囲気を変えることができます。
加工後にまた使えそうなものができたら素材登録しておく
加工した結果、他の作品にも使えるウォーターマークができたら、別途保存しておきましょう。
後書き
ウォーターマークがあって困るのは泥棒だけ
ウォーターマークを大きく入れることで、作品の質を下げてしまうのではないか……と考える方は少なくないかと思います。
また、可読性を重要視するウォーターマークは、どうしても作品から浮いてしまう上、小さくすることもできないため「そんなつもりではないのに作品より目立ってしまう……」というジレンマもあるかと思います。
ですが、あなたの作品を本当に好きな人は、ウォーターマークという作者の主張の必要性を必ずわかってくれます。
極端な話ですが、ウォーターマークがはっきりとあって困ったり怒ったりするのは泥棒だけです。
なので、恐れることなくハッキリと、素敵な作品を描いた、あなたの名前や権利を主張しましょう。
おわりに
ウォーターマークを作り始めてから、これも自分の作品の一つだなと感じました。
作品の見栄えを妨げてしまうものではなく、自分が納得のいくものを作り、自身をもって使えるクリエイターの方々が増えれば嬉しいです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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