3D背景のためのカメラ解説とトラブル回避方法

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はじめに

3D素材は大変便利ですが扱い方が掴みきれず敬遠されてしまったり、利点が活用しきれずな場面を見受ける事もあるので3D素材と仲良くなって背景作画の効率化につながればいいなあと思い、そのために役立ちそうな事を書かせていただきます。

 

今回、カメラ操作など背景のアングルを理想の状態に近づけるための私なりの解説です。

カメラの動きのイメージを図などでわかりやすくお伝えできればなと思います。

困った時の解決法も書いたりしてます。

 

細かい操作については公式ガイドが公開されています。

https://help.clip-studio.com/ja-jp/manual_jp/660_3d/3D素材を編集する.htm

3D素材はキャンバスに貼り付けると画像のようにキャンバスに表示されます。

この椅子は白い無限に広がる空間に置かれているようですがその空間は無秩序なものではないです。

素材には原点が設定されています。

マニピュレーターの中心、グレーの球体部分になります。

 

3D素材が置かれる3Dレイヤーの空間にも原点があります。

実際には表示されませんが、上図の赤線と青線と緑線が交わっている所が原点です。

3D素材をキャンバスへ貼り付けると概ねこの原点辺りに現れます(3Dレイヤーにドラッグ&ドロップしたりすると異なります)。

画像の薄紫色の平面プリミティブ部分が床面の位置です。

とはいえ実際の視覚情報としてはただの白い空間なので上下左右もわからない宇宙空間を漂っているような状態になりえます。

そんな時は床面に平面のプリミティブを敷くと床面という基準が視覚化されて多少違うかと思います。

 

「3D グリット」で検索しても空間で迷子になりにくくできる素材が見つけられるかと思います。

https://assets.clip-studio.com/ja-jp/search?word=3D,グリッド&order=dl

 

と言いつつ自分は背景用に床や天井、壁があり迷子になりにくい3D素材を利用する事が多いので上述のものはあまり使っていないのですが⋯。

ふんわり意識はしておいた方がいいなあという事になります。

アングルをいい感じにする

では本題です。

アングルを思った通りにするには以下の操作で行えます。

 

・移動マニピュレーター(カメラ関連)

・編集対象を注視

・パース

・ロール

・レイヤー移動

・クリッピングプレーン

・レンズ設定

・俯瞰・あおり調整

 

キャンバスに表示されているものを見ただけでは掴みにくいですがそれを捉えているカメラがどこにあり、どこを向き、移動する時どんな動きをしているかを理解するとカメラ操作はしやすくなります。

 

EXでは四面図パレットを使用できるのでより確認しやすいです。

ぜひご活用いただきたいです。

https://help.clip-studio.com/ja-jp/manual_jp/660_3d/四面図パレット【EX】.htm

 

 

移動マニピュレーター(カメラ関連)

では移動マニピュレーターがそれぞれどんな動きをするのかの解説です。

左側3つ①~③がカメラを操作するものです。

残り④~⑧はオブジェクトを動かすものです。

今回はカメラのみの説明です。

 

アングルを決める時には移動マニピュレーターはカメラ関連の①~③のみ使用する事を強く推奨します。

右側④~⑧を使用すると主に以下のような支障が出ます。

 

・複数の素材を組み合わせていると破綻する場合がある(最新のクリスタver2だと一応対処可能)

・後々小物を足しにくい

・コピペして並べるのに支障あり(最新のクリスタver2だと一応対処可能)

・パース定規とズレる

・接地が活用できなくなる

 

ただ、⑧吸着移動は使い方によってはアングル決めの際に使用しても支障はないかと思います。

詳しくは別の機会にと思います。

今はカメラ操作だけでアングルを決める方が無難とだけ覚えておいてもらえたらと思います。

 

各々のカメラ操作の説明前に絶対に押さえておきたいのが

 

・カメラ位置

・注視点位置

 

の2点です。

↑サブツールのカメラの項目です。

図にするとこんな感じです。

画像のピンクの丸がカメラ、注視点が黒の丸です。

カメラはピンクの棘の先がカメラが見ている先です。

つまり、カメラは常に注視点を見ています。

水色の球体はカメラを「回転」で移動する際に動ける範囲を示しています。

①カメラの回転

文字通りカメラ(上図ではピンクの丸部分)が回転します。

上図は動きのイメージです。

この回転というのは注視点を中心にカメラがぐるぐる回ります。

図の水色の球体の上を滑っているような感じです。

そしてこの操作は注意しておかないと自分がカメラに収めたい場所から全然関係ない場所に吹っ飛んでしまいがちです。

 

例を出して説明します。

 

 

↑配色が毒々しいですが廊下の3D素材です。

右端にデッサン人形を配置しています。

 

会議室と廊下の3D

https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1985817

 

廊下はこの素材を使用しています。

↓ちゃんと背景素材として使えます。

以上、素材の宣伝でした。

 

↓この状態から

↓反対に回ったこのアングルにしたいと思ったとします。

では動かしてみましょう。

なんだか人物が遠くへいってしまいました。

もしも窓もなく壁や建物が間に入ってしまうと人物を見失ってしまう事も起こります。

 

この問題は建物など広い場所の背景素材などで起こります。

特に素材の端っこは起きやすいです。

 

こんなアングルにしたいと思ったのにうまくいかない⋯!

カメラが遠くにいってしまった!という事が起こりえます。

 

これはカメラと注視点の距離が原因です。

 

↓カメラには人物付近で動いて欲しいと思っていたら⋯

↓実際のカメラの軌道は全然違ったという事が原因です。

カメラと注視点の距離が遠い事でカメラの動きも大きくなっていました。

解決法は残りのカメラ操作の説明後に行います。

②カメラの平行移動

これはカメラと注視点が丸ごと移動します。

壁(上図イメージでは黄色の平面のプリミティブ)を這うような動きをします。

 

 

この壁というのはカメラと注視点を結んだ線に対して垂直になります。

カメラは上下左右に動きます。

「回転」と「前後移動」と異なりカメラ操作の中で唯一注視点の位置を移動できます。

③ カメラの前後移動

カメラが注視点に向かって前後します。

それによりカメラから注視点までの距離の長さが変化します。

上図で水色の球体が大きくなったり小さくなったりする事からわかると思いますが、この操作は後ほどカメラを「回転」する際に動く範囲に影響を及ぼします。

カメラから注視点までの距離が長い状態ではカメラの「回転」を行う際に動きが大きくなります。

短ければ小さくなります。

 

上図では注視点の位置がぐにゃぐにゃするのですみません。

実際には注視点は動かないです。

 

カメラを動かす移動マニピュレーターは以上3つです。

 

 

編集対象を注視

さてここで先ほどのカメラが大きく動いてしまう問題の解決法に戻ります。

 

↓まず先ほどの状態からカメラを人物に近づけて解決を試みます。

カメラの「平行移動」「前後移動」を使用しています。

後半、ほとんど画像に動きがありませんが、「平行移動」、「前後移動」で一生懸命移動はしているのですが、カメラがほぼ動かない状態に陥っています。

ちなみに上図では行っていませんがこの時カメラの「回転」はできます。

 

この状況になって困ってしまった事のある方もいるかもしれません。

 

これはどういう状況かといいますとカメラと注視点の位置がかなり近しい状態になっています。

↑数値を確認するとこんな感じです。

上図のように同じ角度を動かしてもカメラが注視点から遠いほどカメラの移動距離は長く、近いほど短くなります。

カメラが中心(注視点がある位置)にとても近い場所にいる場合には移動距離はほとんどありません。

この注視点に近い場所にカメラがあると移動の影響が小さ過ぎてほとんど動かない状態になるようです。

カメラと注視点の距離は遠すぎても近すぎても動かしにくくなってしまうのでご注意下さい。

上図のようにカメラに収めたい人物より手前に注視点があった事でそれに捕まってしまい、カメラの身動きが取れなくなってしまったという状況です。

注視点はカメラの見ている先にあるものですので撮りたい場所とカメラの間に注視点がある場合はそのままカメラを前進させるのは注視点にカメラが向かって行くという事なのでカメラ操作だけでは身動きが取れなくなって大体詰みます。

 

そこで役立つのが「編集対象を注視」です。

下図赤枠部分です。

その名の通り編集対象が注視される=注視点の位置が変わります。

デッサン人形が選択された状態で実行するとキャンバスの中心にデッサン人形が表示されます。

この時、カメラと注視点の位置が変更されます。

デッサン人形に注視点が置かれているので先ほど発生したような問題が起こらずにカメラの操作ができます。

 

ですので範囲が広い背景素材を使用する際にはこの場所を撮りたいなと思う辺りにまずはデッサン人形やプリミティブを配置し、「編集対象を注視」を行ってから撮りたいアングルになるよう操作するとスムーズに進みます。

「編集対象を注視」用に配置した3D素材はLT変換の際には非表示にするか消去するようご注意下さい。

 

もちろん四面図で注視点の位置を変更する事でも対処できます。

 

そしてカメラと注視点位置が同じになってしまう問題について実は利点もあります。

 

デッサン人形の頭部を選択して「編集対象を注視」を行います。

注視点位置の数値をカメラ位置にコピペします。

カメラと注視点位置が完全に同じ状態になります。

するとカメラはデッサン人形の頭の位置で固定されます。

よってその状態でカメラを回転させるとデッサン人形の目線から見たアングルになります。

そのためキャラ視点の背景が作れます。

便利!

レイヤー移動→カメラの「平行移動」の代用

 

パースの数値変更→カメラの「前後移動」の代用

(歪みは出るのでその辺りはうまく調整してください)

 

カメラ操作の時より癖はあるかと思いますが上述のように動かすとアングルもそれなりに調整できると思います。

 

・パースの「連動してカメラを前進・後退」

・「注視点距離を編集対象に合わせる」

 

上記2点はカメラや注視点の位置が動いてしまう原因になるのでオフにしてください。

隣にいる人を見る絵を描きたい時などにデッサン人形に身長を設定しておけば身長差も正確に反映した状態で表示されて便利です。

パース

次にパースについてです。

パースはカメラのレンズに変化が起こっているイメージかと思います。

実物のカメラに詳しくないので違ったらすみません。

 

↓公式ガイドでの説明があります。

https://help.clip-studio.com/ja-jp/manual_jp/810_subtools/か行.htm#1363287

 

個人的な印象では料理の味付けの工程のような感じなので数値はお好みや状況に合わせて調整してみてください。

↑「連動してカメラを前進・後退」がオンでの変化

数値が大きいほどダイナミックな感じになりますが歪みも大きくなります。

匙加減が大事かなと思います。

 

 

↑「連動してカメラを前進・後退」がオンではカメラが動きます。

 

 

↑「連動してカメラを前進・後退」がオフでの変化

↑「連動してカメラを前進・後退」がオフではカメラは動かずです。

 

↓背景の3Dのパースの数値をいじった例です。

↑「連動してカメラを前進・後退」がオンでの変化

↑「連動してカメラを前進・後退」がオフでの変化

ロール

カメラは「回転」「平行移動」「前後移動」で動かしても常に床面と平行を保っています(多分)。

ロールの数値をいじる事でカメラ自体を回転できます。

↓動きのイメージではスマホのカメラという事にしてとりあえずスマホを回しています。

という事でロールの数値をいじればちょっと斜めらせるようなカメラアングルも簡単にできます。

便利!

 

 

レイヤー移動

カメラ操作の「平行移動」にも似ていますが、レイヤー移動で3Dレイヤーの空間自体を移動するのでカメラと注視点の数値には影響が出ません。

 

ただ、カメラ操作が3Dレイヤーの内側を動かしていると考えるとレイヤー移動は3Dレイヤーの外側を動かしている感じかと思うのでちょっとややこしさは発生します。

 

例えば3Dレイヤーをレイヤー移動で動かすと3Dレイヤーの定義しているレイヤーの中心も一緒にレイヤー移動で動くので「編集対象を注視」を実行するとキャンバスの中心ではなくレイヤーの中心に編集対象が置かれます。

なので編集対象にしたものがキャンバス外に移動してしまう事も起こりえます。

 

そのためカメラ操作で対応できる事はそちらで行った方が無難ではあります。

最後の位置調整でちょっと動かしたいなあという時などに使用するには特に問題ないと思います。

 

↑クリスタver2での不具合だったようで現在の最新版では修正されたようです。

アングルの変化なく移動したい時はレイヤー移動でどんどん動かしましょう。

 

以下、「レイヤー移動」とカメラ操作の「平行移動」との動き方の違いです。

どちらも×から×へドラッグして同じだけ移動させています。

↑レイヤー移動

アングルはそのままに位置だけ移動したい時に良いです。

↑カメラ操作の「平行移動」

アングルはやや変わります。

 

 

クリッピングプレーン

クリッピングプレーンは正直細かい仕組みなどはわかっていないのですが3D素材で遭遇する困った事を解決してくれる便利機能です。

レタリング設定から数値の変更ができます。

 

3D素材で消したいものを非表示にできない⋯と困った事はないでしょうか?

下図の場合、もしも机と椅子が1つのオブジェクトとして一塊になっていると右側のように椅子だけ非表示にする事ができずに困る場面が発生する事があります。

↓例えば下図のような状況の時

カメラアングルは理想通りにできたとしても

↑こういう事が起こりえます。

手前の人も椅子も見えない状態にしたいけれど机と椅子が一体になっている素材の場合には椅子だけ非表示にする事ができません。

このままLT変換をすると地味に修正が必要になるのでちょっと面倒くさいです。

そんな時にクリッピングプレーンが活躍します。

ニアプレーンの数値を変更すると手前の椅子の背もたれが消えました。

便利!

多分上図のような仕組みかなと思います。

ニアプレーンを調整したい時は状況によりますが数百~千前後の値を試してみるといいかなと思います。

 

手前の壁が邪魔だけどオブジェクトリストで非表示にすると一体になっている別の壁も消えてしまうので困った⋯という時などにニアプレーンの数値の調整で助かる場面があるかと思います。

 

ただ、LT変換の際に場合によっては消えるか消えないかの微妙な位置にいるオブジェクトの余計な線が出てしまう事もあったのでその辺り注意しつつ扱ってください。

 

ファープレーンはニアプレーンと反対に奥側が消されます。

上図のような仕組みかと思われます。

背景を分割したい時に活躍します。

上図の例では後ろ側の背景、電車、手前側の背景と3分割しています。

手前側の背景を作成する際にファープレーンで後ろ側を消しています。

 

電車部分だけスピード線化を行なっており、こういった一部だけ加工したい時などには背景を分割すると非常に便利です。

↑ファープレーンで後ろ側の背景を消しています。

背景を分割し、間に植物や人物の絵を挟んだりするのに利用してもいいと思います。

オブジェクトリストからの表示非表示で済ませられればそれで良いかと思いますがオブジェクトが一塊になっていてうまく消せなかったり複数のオブジェクトの表示非表示の管理が必要でややこしい時などにファープレーンを利用するとパパッと分割できて便利です。

 

ニアプレーンは手前を消したい時

 

ファープレーンは背景を分割したい時

 

にご使用いただくと良さそうです。

 

 

電車のスピード線化は上記の素材を利用しています。

こちらの素材は簡単に線画をスピード線化できます。

LT変換で作成した背景に使用すれば描かずしてスピード感のある背景が作成できます。

アクションシーンなどを描かれる方におすすめです。

 

 

縦パース

ver2にはレンズの項目があります。

縦パースは「垂直に補正」をクリックすると縦の線が垂直になります。

 

後ほどver1でもできる対処法も書いていきます。

パースがきついなど縦線をまっすぐ垂直にしたいという時は「垂直に補正」をクリックするだけでいい感じにしてくれます。

便利!

 

ver1にはない機能ですが、注視点位置のYの数値変更で同様の効果は得られます。

下記はver1でのやり方です。

まず、「垂直に補正」を実行したもののカメラと注視点の位置のYの数値を確認すると同じになっています。

つまり、ここの数値を同じにすると縦の線が垂直になります。

 

なのでver1ではカメラ位置のYの数値を注視点位置のYの数値にコピペすると線を垂直にできます。

ただ、注視点位置Yの数値を変更すると位置がずれます。

上図はピンク部分が最初の状態、青の部分が「垂直に補正」しているものです。

 

注視点位置を変更しただけのものは下にずれています。

 

「垂直に補正」を行うと右上のようにレンズシフトの数値も変更されます。

画像ではY -0.14になっており、それにより位置のズレの補正をしてくれています。

 

ver1ではこの機能がないのでレイヤー移動のツールを利用して手動で位置の調整をしてください。

↑ちなみにレンズシフトの数値を変えるとこんな感じで動きます。

 

 

俯瞰・あおり調整

俯瞰や煽りの調整をしたい時にもカメラと注視点の位置のYの数値を変えると便利です。

下図のように動きます。

レイヤー移動も活用しつつで調整するといいかと思います。

 

 

おわり

上記の事を踏まえておくとアングルを決めるのもスムーズに行えるかと思います。

 

しかしながら実際は私が勘違いして説明いるところもあるかもしれません。

間違えていたら申し訳ないです。

3D素材はうまく使うとすごく創作の役に立つと思うので苦手意識を持たれている方や扱いにくく感じている方に3D使うのも悪くないかもと思ってもらえると嬉しいです。

 

書いてみたら結構気力と労力が必要だったのでいつになるかわかりませんが元気があったら移動マニピュレーターの④〜⑧の説明もできたらいいなあと思います。

 

 

 

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