アナログからデジタルへ!デジタル移行のコツ
はじめに
アナログからデジタルに移行したいけど、どうすればいいかわからない。
今移行中だけどつまづいてる。
そんな貴方のために、デジタル移行のコツをお教えします。
動画もご用意しましたので、日本語がわかる方はこちらもご覧ください。
デジタル移行のコツ
先に結論からお伝えします。
デジタル移行のコツ、それは…
いきなりフルデジタルにならなくていい!
なんならずっとフルデジタルじゃなくてもいい!
です。詳しくお話しします。
私も昔はアナログで漫画を描いていました。
2011年からコミックスタジオで漫画を描き始めましたが、
最初はペン入れまでアナログで行い、ベタやトーン、セリフ入れなどの
仕上げ作業をデジタルで行いました。
その方が直感的でやりやすかったんです。
その後もしばらくそのやり方を続け、
液晶タブレットを購入してからフルデジタルになりました。
ですが、今でも場合によっては
アナログで下描き→Dropboxで読み込み→それをペン入れ
という手順を取る時もあります。
気分次第でアナログ作業の部分もあるのです。
漫画業界でも2020年のコロナ禍で
在宅ワークにするため、ずっとアナログ作画だった現場でも
デジタル移行するケースが急速に増えました。
この時デジタル移行に難航したところも多かったようで、
やはり急に環境を変えるのは難しいようです。
アナログ作業が好きな作家さんでも、
デジタル環境を「選択肢」として用意しておくと
いざという時の保険になるかと思います。
アナログのペンが好き、という作家さんで
デジタルで下描き→それを印刷してアナログでペン入れ→スキャンして仕上げ
という方もいらっしゃいます。
ONE PIECEの尾田栄一郎先生はアナログ作画ですが、
扉絵の作業動画を見ると、ラフまではデジタルであることがわかります。
デジタルを活用するアナログ作家さんも多いです。
人それぞれ、色々な作家さんが自分に合った使い方をしています。
アナログでもデジタルでもあくまでツール、画材です。
既存のやり方に囚われなくていい。
自分の好きな方法で描けばいいんです。
少しずつ使ってみよう
デジタル移行のコツは好きな部分だけデジタルにすればいい。
その為にはまずデジタルでできることをある程度知る必要があります。
クリスタには便利なツールがたくさんありますが、
いきなりこれらを使いこなすことは難しいです。
なのでまずは作業環境をシンプルに、ツールを絞って使ってみましょう。
タブレット/スマートフォン版では機能や表示ツールが絞られたインターフェースの
シンプルモードが使えます。
デジタルが初めての方はこちらを試してみてください。
※2024年8月現在PC版では使えません
使うツール
ペン(ショートカット:P)
消しゴム(ショートカット:E)
塗りつぶし(ショートカット:G)
この3つを覚えれば、最低限絵は描けます。
漫画の仕上げやセリフ入れ・コマ枠作成に使うツールは
この後に都度ご紹介します。
次の項目から段階を踏んで、漫画を描いていきましょう。
EX:ショートカットキー
手のひら:Spaceを押しながら画面をドラッグ
キャンバスの回転:Shift+Spaceを押しながら画面をドラッグ
拡大:Ctrl+Spaceを押しながら画面をクリック
縮小:Alt+Spaceを押しながら画面をクリック
メインカラーとサブカラーを切り替え:X
描画色と透明色を切り替え:C
このショートカットを覚えると快適に作業できるかと思いますが、
CtrlZで取り消し
CtrlYでやり直し、
を覚えるだけでも十分でしょう 。
スキャンした線画を仕上げよう
Dropboxアプリで線画をスキャンしよう
アナログで描いた線画をスキャンして、クリップスタジオで仕上げてみましょう。
スキャナをお持ちでない方は、
Dropboxアプリの「ドキュメントをスキャン」機能で画像を取り込みましょう。
スケッチブックに描いた線画を読み込んでいきましょう。
Dropboxアプリを開いて、
一番下にある+マークのアイコンをクリック。
出てきたメニューから[ドキュメントをスキャン]を選択。
この機能で写真を取ると、真っ直ぐかつ補正した線画になります!
スキャナでスキャンするよりは歪むことはあります。
ファイル形式[PNG]を選択してアップロードボタンを押せば、
選択したフォルダに画像が保存されます。
線画を補正しよう
先程の画像をPC版クリップスタジオで開きましょう。
先程の画像をドラッグ&ドロップすると線画のデータが開けました。
背景が白のままだと作業しづらいため、
線画の黒い部分だけを抽出します。
線画のレイヤーを選択した状態で
[編集]→[色調補正]→[明るさ・コントラスト]を選択。
白と黒の部分をはっきりさせます。
そして[編集]→[輝度を透明度に変換]をクリックすると…
一瞬で線画の部分だけが残り、白い背景部分が消えました!
[長方形選択]ツールで人物部分だけ選択して、
CtrlCもしくは[編集]メニューからコピーします。
この線画レイヤーを.clipファイルに貼り付けて、
こちらで作業していきましょう。
[レイヤープロパティ]パレットの[表現色]をモノクロに変更します。
モノクロと書かれたボタンの左横にある+マークをクリックすると、
2値データに変換する際の設定が表示されます。
プレビューを見ながら値を調整し、適切な線画にしましょう。
ペンと消しゴムで線画を修正しよう
ペンと消しゴムで線画を修正します。
今回はシャープペンで描いた線画を使用したので、
ペン入れした線画よりゴミや迷い線が多く
直すところがたくさんあります。
[長方形]ツールでコマ枠線を描画しました。
こちらを仕上げていきましょう!
ベタを塗ろう
[塗りつぶし]ツールで塗りつぶしたいところをクリックすると、
一瞬で色を塗ることができます。
アナログでははみ出しや色むらなど気を使う点が多かった
ベタがこんなに簡単に!
頭頂部の線画が途切れていたせいで、
塗りつぶしがはみ出てしまいました。
線画が途切れている場合は、ペンで書き足して
はみ出ないようにしてから塗りつぶします。
あとはベタ部分をペンで描き足したり、
描画色を白にして髪にツヤを描いたりして仕上げます。
トーンレイヤーを作成しよう
次はトーンを貼ります。
アナログでは高価なトーンも、デジタルでは貼り放題!
トーン代節約のためにデジタルに移行した作家さんも少なくないとか…
[レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[トーン]を選択すると、
[簡易トーン設定]ダイアログが表示されます。
ここでトーンの種類や線数、濃度を設定できます。
今回は濃度10%のトーンレイヤーを作成しましょう。
キャンバス全体にトーンが貼られるので、BackSpaceで一旦消去します。
トーンレイヤーを選択した状態で[塗りつぶし]ツールを使えば、
一瞬でトーンを貼ることができます!
もう「貼る」というより「塗る」作業ですね。
トーンレイヤーもペンで描き足したり消しゴムで消したりできます。
選択範囲からグラデーショントーンを作成しよう
次は選択範囲から
グラデーションのトーンを貼ってみましょう。
[自動選択]から[他レイヤーを参照選択]サブツールを
選択して、選択範囲を作成したい部分をクリック。
[グラデーション]から[マンガ用グラデーション]サブツールを
選択して、ドラッグします。
下が濃いグラデーションのトーンが貼れました。
グラデーションの濃淡を調整したい場合は、
[オブジェクト]ツールで行います。
選択範囲ランチャーからトーンを作成しよう
最後は選択範囲ランチャーからトーンを貼ります。
[選択範囲]から[長方形選択]ツールを選択し、
任意の範囲をドラッグ。
こちらが選択範囲ランチャー、
選択範囲がある時に表示されます。
右から2番目にあるアイコンをクリックすると、
[簡易トーン設定]ダイアログが表示され
先ほどと同じようにトーンの設定ができます。
OKをクリックすると、選択範囲にトーンが貼られます。
ベタ・トーン完了
ベタ・トーンで最低限漫画らしい仕上げができました。
お疲れ様でした!
ここまでの知識で線画・ベタ・トーンの作業まで
デジタルでできるようになりました。
この記事はまだ続きますが、新しい知識がどんどん出てくるので
続きは別の日にしてもいいでしょう。
シンプルな3コマ漫画を描こう
次はシンプルな3コマ漫画を描いてみましょう。
コマが3つ並びセリフと吹き出しがあると、かなり漫画っぽくなりますね。
原稿用紙の作成
[ファイル]メニューより[新規]を選択、
左から3番目のアイコンをクリックして
新規のマンガファイルを作成します。
原稿サイズは投稿する漫画であれば投稿先の規約、
同人誌であれば入稿先の規約に合わせましょう。
今回は同人誌を想定し、
仕上がりサイズB5・断ち落とし幅5mmで作成します。
マンガ原稿用紙を作成できました。
ここにコマ枠を置きましょう。
コマ枠素材を配置・編集
左側にあるアイコンから素材[漫画素材]をクリックすると、
素材フォルダが展開されます。
ここに様々な形のコマ割りテンプレートが登録されています。
今回はシンプルな3コマの素材を選択。
素材パレットの一番下にあるパレットバーの
真ん中辺りにあるアイコンをクリックすると、
キャンバスの真ん中に素材を貼り付けることができます。
直感的に作業するため、今回はこのコマ枠が入ったフォルダを
結合して1つのレイヤーにします。
フォルダの上で右クリックして[レイヤーの変換]を選択し、OKをクリック。
コマ枠が1つのレイヤーになりました。
そしてコマ枠の外をクリックして、白で塗りつぶします。
これでこのレイヤーより下のレイヤーに作画すれば、
コマ枠からはみ出ません。
テキストの入力・編集
次はセリフを入れていきます。
[テキスト]ツールで文字を入力します。
入力完了後、文字の周りにある四角い線(テキストフレーム)を操作すると、
文字を回転したり大きさを変更したりできます。
[縦横比固定]にチェックが入っていなかったため
文字の比率がおかしくなってしまいました。
ツールプロパティから設定を変更して、
もう一度テキストフレームをドラッグしてテキストの大きさを変えます。
文字を入力し直したい時は、[テキスト]ツールを選択した状態で
テキストフレーム内をクリックすると編集できるようになります。
テキストの位置は[レイヤー移動]で動かせます。
テキストの入力ができました!
EX:[テキスト]ツールと[オブジェクト]ツール
文字の入力は[テキスト]ツール、
入力した後のテキストレイヤーの設定を変更する時は
[操作]にある[オブジェクト]ツールを使います。
入力したテキストのフォントを変えたい時や、
文字方向を変えたい時などは[オブジェクト]ツールです。
フキダシの作成
フキダシの描画は簡単!線画と同じくレイヤーに黒のペンで描き、
不要な部分は消しゴムで消していくだけです。
次はフキダシの下地を白で塗りましょう。
[自動選択]から[他レイヤーを参照選択]を選択して
フキダシの内側部分をクリック。
選択範囲を複数作りたい場合、
[ツールプロパティ]で[作成方法]を
[追加選択]にしておきましょう。
これで場所をまたいで複数選択できます。
選択し終わったら、下地用のレイヤーを作って
選択範囲を白で塗りつぶし。
- CtrlDで選択範囲を解除して下地より下のレイヤーを選択すると、
フキダシの下に線が描けますね!
[直線描画]内にある[長方形]ツールで
四角いフキダシを描画することもできます。
画像素材で背景のコマを作成
1コマ目に雨の背景を用意しましょう。
素材[背景]をクリックして素材パレットを展開、
雨の画像素材を探します。
雲みたいなアイコンが右上に表示されている場合
「ダウンロード済ではない」状態です。
素材をキャンバスに貼り付けるとダウンロードを開始し、
完了したら使用できるようになります。
ドラッグ&ドロップすると、素材をキャンバスに貼り付けることができましたね。
選択範囲がある状態でキャンバスに素材を貼り付けると、
画像素材が選択範囲内にのみ表示されるので、
これで1コマ目の中にだけ雨の画像が表示されるようにします。
水色の枠をドラッグして大きさを調整、
雨の降る背景コマの完成です!
描き文字を描こう
雨が降っている感じを強調するため、
新規レイヤーを作成し描き文字を描きましょう。
ツールパレットから[筆]を選択し、
ペンと同じように描画します。
アナログで描き文字にフチを付ける場合、
ホワイトで周りをなぞらないといけませんが…
クリスタだと数クリックで終わります。
[レイヤープロパティ]の[効果]から[境界効果]を選択し、
[フチ]をクリック。
好きな色・好きな太さのフチを作れます!
フチを応用すると凝った描き文字も
簡単に作れます。こちらは黒フチに白フチを重ねている状態ですね。
この項目のまとめ
お疲れ様でした!この項目では、
コマ枠素材活用
セリフ入れ、フキダシ作成、
画像素材活用
描き文字作成
こんなにたくさんのことができるようになりました。
デジタルの強みを活かせる機能ばかりです。
ちょっとずつ覚えて、少しずつ活用してみてくださいね!
コマ枠を自分で割ってみよう
コマ枠フォルダーの作成
更にステップアップ、コマ枠ツールを使って自由にコマ割りしましょう。
これができるようになれば、もう自由自在に
漫画が描けると言っても過言ではありません!
[レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[コマ枠フォルダー]を
選択すると、[新規コマ枠フォルダー]ダイアログが表示されます。
枠線の太さなど設定しOKを押すと、
キャンバスにコマ枠フォルダーが作成されます。
枠線の太さを後から変更したい場合は、
[オブジェクト]ツールを選択して[ツールプロパティ]の
[ブラシサイズ]の数値を変更しましょう。
コマ枠の分割
コマを割るには、[コマ枠カット]内にある
[コマフォルダー分割]もしくは[枠線分割]ツールを使用します。
初期設定だと[コマ作成]ツールの横のタブにあります。
ぐいっとドラッグすると、
任意の方向にコマを割れました!
コマとコマの間隔が狭いので、設定を変更しましょう。
フォルダが増えると直感的に作業しづらいため、
今回は[枠線分割]でコマを割り、
コマ枠レイヤー1つで作業を進めます。
[枠線分割]ツールプロパティで左右の間隔と上下の間隔の数値を変更します。
左右より上下の間隔の方が大きい漫画が多いようです。
またコマを分割した後でも、オブジェクトツールで移動や変形ができます。
独立したコマの作成
コマの上にコマを作りたい時は[コマ作成]ツールを使います。
今回は[長方形コマ]を選択。
ドラッグすると、任意の形のコマ枠フォルダが作成できました。
枠線が細かったので[オブジェクト]ツールで太さを変更。
[レイヤー移動]でコマの位置を動かします。
[折れ線コマ]ツールで四角以外の形でコマを作れます。
[コマ枠ペン]ツールでは文字通りペンで好きな形のコマを描画できます。
コマフォルダー
コマフォルダーについてご説明します。
レイヤーフォルダーの左にある三角をクリックすると、
フォルダーを開いたり閉じたりできます。
このフォルダー内にレイヤーを作成して描画すると、
コマ枠からはみ出ません。
コマ枠フォルダーを1コマ1コマ作るか、
1つのレイヤーで済ませるかは人それぞれです。
この項目のまとめ
[レイヤー]からコマ枠フォルダー作成
[コマ枠カット]でコマを割る
[オブジェクト]でコマを編集
[コマ作成]で好きなコマを作れる
以上のことができるようになりました。
これでコマ枠は自由に作れるでしょう!お疲れ様でした!
EX:テンプレートを活用しよう
効率的に作業したい方はぜひ読んでください。
漫画を描くのに必要なレイヤーを毎回作るのは大変です。
なのであらかじめテンプレートを作成し、
そのデータを使い回しましょう。
必要なレイヤーを用意したファイルを保存して、
それを複製して使い回します。
毎回たくさんのレイヤーを作るより簡単ですね!
自分でどう作ればいいかわからないという方は、
CLIP STUDIO ASSETSで私が作成した素材も配布していますので、
試してみてください。
まとめ
部分的な移行から始める
好きな部分だけデジタル作業にする
少しずつ使うツールを覚える
以上が「デジタル移行のコツ」です。いかがだったでしょうか?
かなり盛りだくさんな内容になったので、
できることから少しずつチャレンジしてみてください。
貴方の創作活動が実りあるものになりますように!
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