髪型でキャラの性格を表現する

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ナカシマ723ラボ

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はじめに

 このTIPSは、キャラクターの性格や役割にあわせて、しっくり来る髪型のデザインを見つけたい人のために書きました。

 

 どちらかといえば「個性的な髪型の発想」を得るためではなく、「ありふれた髪型の、デザイン上の意味」を確認するためのTIPSです。

 

 いくらか私の主観も影響していると思いますが、できるだけヒトの生物としての特徴や、視線誘導のセオリーにもとづいた説明をしました。

 

 キャラクターデザインを考える上で、あなたの助けとなれば幸いです。

 

 

髪型の印象を決める3つの要素

 髪型の印象を決める要素は、大きく分けて3つあります。

 

【1】左右対称か、そうでないか

 

 自然界には、左右非対称な大型陸上動物というのはほとんど存在しません。

 左右非対称な髪型は、そうでない髪型と比べると気取り屋だとか、アウトローであるといった印象を与えます。

 

 

 

【2】顔の表情を強調するかどうか

 

 前髪のラインなどで「眉や目元」の角度が強調されたり、あるいは隠したりされるとき、キャラクターの印象は大きく変化します。

 

 

 

【3】顔の向きを強調するかどうか

 顔の向きや、向きの変化、顔の存在感そのものが強調されるデザインを選択すると、そのキャラは物怖じせず、自己主張が強そうな性格に見えます。

 

 

 以下の項目からは、各要素について具体的なバリエーションとともに見ていきましょう。

 

 

 

1:髪型の対称性を検討する

 正面から見たとき、目立って左右非対称な髪型のキャラは、そうでない場合よりも気取り屋で、身だしなみに気をつかう社会性があり、どちらかといえば知性的な印象を与えます。

 「正道から外れたもの・邪悪なもの・アウトロー・ひねくれもの・意地悪・なんらかの秘密やハンディを抱えている」といった要素があるキャラは、左右非対称のデザインにするとその印象が強化されます。

 もし、「まじめな熱血漢」「明るく快活な主人公」「裏表がなく、誰とでも仲良くなれるヒロイン」などを作ろうとしているのに、なにか影があったり、悪役っぽい感じになってしまうという場合は、髪型を左右対称に近づけてみてください。

 

 

 ただし、快活で能天気そうなキャラで、単に生まれつきクセ毛だとか、髪を結ぶ位置が適当だという理由でそうなっているのが明らかなら、左右非対称の髪型のほうが「天然」「どこか抜けたところがある」といった、親しみやすいイメージを強化できるケースもあります。

2:眉や目元が隠れるかどうかで表現する

 「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。ヒトの目や視線から読み取れる情報は、とても明瞭かつ多彩です。

 

 目元にあらわれる感情を隠していれば、動物のように戦ったり、外敵から逃げる上では役立ちます。

 しかしそれは、他人からみれば信用ならない人物となり、友好的な関係を築けそうなキャラには見えなくなります。

 

 極端な例から見ていきましょう。

 

【1】前髪で目が完全に隠れているキャラ

「ミステリアスで、何を考えているかわからない」印象になります。不気味で信用ならないと見られますが、「どこを向いているかすらわからない」なら明確な攻撃性を見出すこともできないので、鋭い視線を持つキャラクターと比べれば、無害にも見えます。

 

「無口」「臆病」「人と目を合わせるのが苦手」といったキャラによく採用されます。

 しかし、なんらかの技術や能力を持ち合わせたキャラに使うなら、「確固たる意志力がある」「他人の意見に左右されない」といった印象を与えることもできます。

 快活で、よく喋るキャラに使った場合はどうでしょうか?これは腹黒っぽく、信用できないとか、他人の反応にかまわず喋りまくるタイプの表現になります。

 単にあまり身だしなみや、人からどう見られるかを気にしないキャラの表現として使うこともできます。

 

 

 

【2】目は見えているが、眉がほとんど隠れているキャラ

 【1】ほど特殊ではありませんが、やや不気味な印象を受けます。「このキャラがどこを見ているのか」は分かる一方で、眉の上げ下げや、眉間のシワが読み取りづらいためです。

 

「見られているが、見ている方は自分にどんな感情を抱いている分らない」という状態が不気味さを生みます。ヒトではない、動物の顔を見ている印象に近くなります。

 

 ミステリアスなキャラには良いですが、快活なキャラや、感情の起伏が大きいキャラには表情の差が見えづらくなるため、あまり適していません。

 

 マンガ的表現としては、眉毛を完全に透かして描いてしまうこともできます。その場合はとくにミステリアスな印象は与えませんが、眉の表情の変化はやや曖昧に見えます。

 

 

 

 

【3】眉間と眉が一部隠れるキャラ

 ごくありふれた状態です。特別な印象は与えませんが、眉が隠れる度合いが小さいほど表情の変化は分かりやすく、物怖じしない性格に見えます。

 

 眉が見えていても、眉間が完全に隠れる場合、【2】と同様に強い「怒り」や「警戒」、「不快」の表情をあらわすのは難しくなります。ただし、バトルなど動きのあるシーン以外でそういった感情を見せないキャラなら、あまり問題はありません。

 

 

 

【4】目と眉間が完全に見えるキャラ

 この場合は視線や表情が隠れることがないので、【1】や【2】のスタイルに感じられたような「臆病さ」や、「外敵を恐れている印象」がありません。「勇敢な戦士」「誰にでも気軽に声をかける」といったキャラなら、まずこのように額を完全に見せるスタイルが候補になります。

 

 ほかに相反する要素がない場合、12歳くらいまでの子供なら、単純に子供らしい明るさ・素直さ・能天気さが強調されます。

 それより年齢が上なら、大人っぽく頼れる感じ・信用できる感じ・頭の回転が早そうな感じや、自信に満ちた印象を与えます。あるいは、そのように見せたい虚勢から、こういった髪型を選んでいることもあるかもしれません。

 ただ現代の男性は、多くの文化圏で眉かからないくらいの短髪か、髪を上げた状態であることが多いので、この要素だけでは特別な印象にはなりません。

 

 むしろ前髪が眉にかかるくらい長い男性キャラがいた場合に、相対的に柔らかく、優しそうな印象を与えるのだと考えましょう。

 

 

 

3:前髪の形で表現する

【1】隙間なく切りそろえられた髪

 こういったカットラインの髪型は、派手なシルエットにしなくても存在感があり、「頑固・自信家・プライドが高い・世間の流行にとらわれない・人工的」といった印象を与えます。

 

 

 また髪は自然に伸ばしていれば、毛先が不揃いになってくるものです。

 床屋に行ったばかりであるかのように切りそろえられた髪は、「きれい好きで神経質」「優等生」といった表現に使えるかもしれません。

 

 

 ただし、そのキャラが幼い子供であれば「大人の言いなりに整えているだけ」「裕福な家の子なので、こまめに髪が切りそろえられている」といった印象になる可能性もあります。

 

 

 

【2】角度がゆるやかなM字型の前髪

 ゆるやかな角度をもつM字型の前髪や生え際は、眉間や眉にあらわれる「怒り」「不快」の表情を強調します。

 

 前髪がごく短く、目元の表情が完全に見えている場合は、実際に目元にあらわれる表情にも視線が誘導され、強調される形になります。周囲にかまわず、動物的な直感や、独自の価値観で行動するタイプに適しています。

 

 

 いっぽう前髪の先端が、眉間を完全に隠すくらい長いなら、それは「怒り」や「不快」の印象が固定された状態です。ロボットのように冷徹な印象を与えるキャラや、他人を信用しておらず攻撃的なキャラ、他人に心を開かないキャラ、腹黒キャラに似合います。

 またこの形の前髪は、「加齢で髪が後退した老人」とは相反する特徴です。そのため「無感情なロボット」系のキャラでもなければ、年齢に不相応な青臭い理想や、ギラギラした欲望を持っているように感じられます。

 

 

 

【3】角度が急なM字型の前髪

 この場合は眉の角度と呼応するところがないので、【2】のように怒りの表情を連想させることはありません。前髪で眉間が隠れる場合、むしろ激しい怒りや悲しみの表情は見えづらくなります。

 切羽詰まった感情をあまり表に見せない温和なキャラや、飄々としたキャラに適しています。

 

 

 

【4】上向きの孤でカットされた前髪

 笑顔や脱力した表情を連想させるラインです。能天気なキャラや享楽主義者、おどけたところがあるキャラに適しています。

 

 毛先がまばらな場合には、それほど強烈な印象は与えませんが、短く綺麗に切りそろえられている場合は自己主張が強く、傍若無人な性格に見えます。

 

 逆に、内気で目立たない性格のキャラには、あまり適していない髪型です。

 

 

 

【5】ハの字型に分けられた前髪

 額にまっすぐ、または下向きの孤を描いたハの字型(inverted V-shape)ができる前髪は、恐怖や悲しみで眉が下がった表情を想起させるため、感覚が鋭く、神経質な印象を与えます。無邪気なキャラや、奔放な性格のキャラにはあまり向いていません。

 

 ただし、前髪によって生まれるラインが上向きに孤を描いている場合は、【4】と同じく笑顔のときの眉の形に近づくため、むしろ能天気そうな印象を強化します。

 

 

 

【6】真ん中分けの髪型

 左右対称な真ん中分けで、眉の一部が隠れる髪型の場合、眉の上げ下げで表現できる「驚き」や「喜び」の表情がわかりにくくなる一方で、眉間にシワができるような「怒り」「不快」の表情は目立ちます。

 また額が高く見えるので、基本的には知性的で、物怖じしない性格に見えます。

 

 プライドや規範意識が高く、面倒見のよい優等生タイプや、努力家、苦労人キャラの髪型に向いています。

 

 

4:顔の向きを強調するシルエットについて検討する

【1】耳が見える髪型、見えない髪型

 顔の向きを判断する上で、耳がどのような見え方をしているかは重要な手がかりです。耳がまったく隠れていないキャラは、そうでない場合よりも物怖じせず、活動的で、感覚が鋭い印象を与えます。

 耳がよく見えない髪型は、見えている髪型よりもミステリアスで、どちらかといえば頑固そうな印象をあたえます。ほかに攻撃的な要素がない場合は、自己主張が弱く、のんびりした、おとなしそうな人物に見えるかもしれません。

 

 

 

【2】顔の向きと存在感を強調する髪型(外向き)

 左右に突出した、あるいは大きく狭まったシルエットがある髪型は、耳と同じように、顔の向きや存在感を強調する効果があります。

 

 特に、頭の高い位置にそういった造形があるキャラは、勝ち気で感覚が鋭く、活動的に見えます。落ち着きがないようにも見えるので、成人済みのキャラに使うには、若々しすぎるかもしれません。

 

 男性のモヒカンや、前方向に突き出したリーゼント(ポンパドゥール)スタイルにも同様の効果があります。これらは髪が均等に頭部を覆っている場合よりも、横を向いたときのシルエットの変化が大きい髪型です。

 

 

 

 この点では、モヒカンとツインテールは同じ性質を持っているといえます。

 

 

 

【3】顔の向きと存在感を強調する髪型(内向き)

 外ハネや、左右に突出部のある髪型は頭部全体の存在観が増しますが、顔の表情からは視線が外れがちになります。

 

 対して、このように内側に毛先が向く髪型は、無表情なキャラでも自然と顔に視線が向き、表情の変化をキャッチしやすいデザインです。内向的でおとなしいキャラなら芯が強そうに見え、外向的で快活なキャラなら、より自己主張が強そうな感じを受けます。

 

 

 

 

【4】正面向きの印象を強調する髪型(おさげ髪)

 低い位置で結び、体の前に下ろした髪型は一見、ツインテール等と同じ効果を発揮するように見えますが、この場合は首を振っても、あまりシルエットが変化しません。

 逆に、常に「正面を向いている」ときの見え方が残るので、真面目で落ち着きがあり、頑固そうな人物に見えます。

 

 

 

5:アホ毛やおくれ毛で表現する

 大まかな髪の流れから外れて飛び出てている「おくれ毛」や、いわゆる「アホ毛」があるキャラは、基本的にそういった要素がない場合より、スキや可愛げがある印象を与えます。本数が多い場合は「ワイルド」です。

 

 そのうちオールバック、または短髪で額が完全に見えているキャラの場合、基本的に額におくれ毛があるほうが不良っぽく、セクシーな印象になります。ただし、おくれ毛の数や位置・対称性によっても意味が変わってきます。

 

 

【中央に1本】:真面目、理想家、熱血漢

 眉間に出る表情に視線が誘導されます。愚直で、少し青臭いところがあるキャラに適しています。

 

【中央からズレた位置に1本】:キザ、皮肉屋、アウトロー

 左右非対称なデザインの原則から、キザっぽい印象になります。素の状態でも片眉に視線が集まるので、よく左右非対称の表情を作るような、皮肉屋のキャラに似合います。

 

【左右対称に2本以上】:悪っぽい、真面目、怒りっぽい

「中央に1本」の場合に比べると悪人っぽく見えますが、位置がまったく左右対称なら、どちらかといえば真面目な印象も与えます。

 眉の上げ下げがある部分に視線が誘導されるので、よく人をにらみつけるような、眼力を強く見せたいキャラに適しています。

 

【左右非対称に2本以上】:ワイルド・悪っぽい・楽天家

 同じ2本以上のほつれ毛でも、配置が左右非対称になると崩れた印象が強くなり、より悪役やアウトローらしく見えます。

 眉まわりの表情は曖昧な印象になるので、飄々としたキャラに適しています。他の要素によっては、単にだらしがない性格にも見えます。

6:髪質で表現する

 髪型のデザインに限った話ではありませんが、キャラを直線的なラインで描けば、粗野で暴力的・攻撃的な印象を受けます。ゆるやかな曲線を用いれば、優しく内向的で、おとなしい印象を受けます。

 同じシルエットでも線の描き方を変えるだけで、印象は変わってきます。もし、穏やかな性格なキャラなのに刺々しく見えるとか、暴力的な性格のキャラなのに優しそうに見えてしまうということがあったら、髪の線質を変えてみてください。

 

 

7:髪をセットする過程を考慮してみる

 セットに手間がかけられた髪型は、そのキャラの「裕福さ」「社会的地位」「几帳面さ」などを示す情報になります。

 たとえば、髪をきれいにオールバックに撫で付けているキャラは、比較的マジメで、身だしなみに気をつかう社会性がある人物です。

 

 あまり几帳面でない性格なら、同じような髪型でも、ほつれ毛が目立つかもしれません。

 キャラの性格よりも先に見た目のデザインが浮かんだ場合、その髪がどのようにセットされたか、それがそのキャラの性格や役割に合うかは、考えておく必要があります。

おわりに

 髪型はキャラクターデザインの一要素にすぎませんが、特にモノクロ漫画においては、キャラを見分ける上でもっとも重要な手がかりです。

 

 できるだけそのキャラクターにぴったり合っているデザインを選んであげてください。もっとも信じるべきなのはあなたの直感ですが、迷ったときは、このTIPSに上げたような要素に分解して、理論的に考えてみることも大切です。

 

著者Twitter:

https://twitter.com/nakashima723/

 

更新履歴:

19/11/01 「対称性」に2枚、「モヒカン」に1枚作例を追加しました。

19/11/02 「髪質」に1枚作例を追加しました。

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