不透明水彩一本で水彩らしく塗る
写真から線画を抽出する
今回はシャーペンで描いたアナログの線画を使います。
まず、スマートフォンなどで線画となるイラストの写真を取り込みます。
この段階で、現在線画になっているレイヤーを選択し全自動彩色でレイヤーを作ります。
全自動彩色でできたレイヤーは、後で色ムラを作るのに使います。
(抽出した線画を用いるとあまりムラが出なくなるので現段階で作業しています。)
一旦全自動彩色レイヤーを非表示にし、線画の調整をしていきます。
明るさ・コントラストの調整で明るく線がはっきりするようにします。
背景色が残ると大変なので、この時、線画が少し飛ぶくらい明るくしておきます。
消すより加筆する方が綺麗に仕上がりますので、どんどん調整していきます。
そして白い部分を透明にするために、輝度を透明度に変換します。
次に、消えた線画をリアル鉛筆で加筆修正していきます。
加筆修正しました。
人物の着色の準備をする
今回は、パーツごとに下塗りすることはせず、人物を1つのパーツと捉えて塗っていきます。そのために人物から塗りがはみ出ないようにするマスクを作成します。
人物以外の場所を自動選択ツールで選択します。この時点で綺麗に選択する必要はありません。
そして、その選択範囲からクイックマスクを作ります。
クイックマスク化したことで、ブラシやバケツで選択範囲を作れるようになりました。選択しきれなかったところ、選択しすぎてしまったところをクイックマスク上で修正していきます。
クイックマスクは途中でデータを保存すると自動的に選択範囲化してしまうので、その際は作られた選択範囲をもう一度クイックマスク化することで続きから作業することができます。
綺麗に修正することができたら、クイックマスクから画像上のピンクのところを押し、選択範囲化します。
人物以外の部分を選択しているので、選択範囲を反転して、人物の色塗り用のフォルダにマスクします。
これでマスクしたフォルダ内であれば、人物から色がはみ出なくなりました。(フォルダごとマスクをするには、フォルダを選択しているときに↑のボタンを押せばOKです)
人物の着色をする
先ほど作成したフォルダ内にレイヤーを作って着色していきます。
ここから先はハイライト、下塗り以外全て不透明水彩を使っていきます。
今回使用した不透明水彩のブラシ設定は以下の通りです。このブラシ設定を使うときは筆圧を低めにして使うと使いやすいです。
まず肌を塗っていきます。
光となる部分を意識して、白色を残すように塗っていきます。多少はみ出ても水彩の味になりますので気にしなくて大丈夫です。
色が濃すぎると思ったときは、透明色を選択し不透明水彩で少し薄めます。筆圧が強く感知されるので消しゴムでそのまま消すより滑らかな仕上がりになります。
不透明水彩は筆圧で濃度が大きく変わるので肌を一色で塗ることができました。ただ、少し味気ないので色味を追加していきます。
また、不透明水彩は下地に塗った色を強く反映するので、赤みのあるオレンジ色を表現するために、明るいピンクで赤みを足していきます。
ピンク(右)の不透明水彩に下地の色(左)が反映されて、肌に馴染んだ赤みが表現できました。
次に髪を塗っていきます。今回は金髪の予定ですが、こちらも単調にならないよう色味を足していきます。
今回は青色の色味を追加することにしました。
先ほど不透明水彩の特徴として、下地の色の反映しやすさを上げましたが、下地に青を置いた金髪など相反した色を塗るときは注意が必要です。
今回はメインが黄色なので、青よりも黄色に近い色を表現したいと考えています。
つまりブラシの描画色を強く反映させたい、ということです。そのようなときは、透明部分から既に描画されている向きにカーソルを動かすことで、現在の描画色を強く反映させることができます。
また、全体に色が乗ってしまい重い印象になってしまったので、パッキりとさせたいところは消しゴムで、やんわりと薄くしたいところは透明色不透明水彩で調整しました。
次に服を塗っていきます。先ほどまでと同様、1色のパーツを2色以上使って塗っていきます。
先ほどの髪は肌と同系色のため、あまり濁りませんでしたが、肌色と水色が混じって色が濁ってしまいました。このような時は上にレイヤを作り、そちらに描き込むことで綺麗に発色させられます。その後2枚を統合することで元通りです。
ここまで塗りましたが、ズボンの色を変えたくなったので調整します。
今まで塗ってきたレイヤーが1枚かつ単色ではないので、投げ縄選択範囲ツールで色を変えたい部分を選択し、色調補正をします。様々な色を試したいので色調補正レイヤーで色変更しました。
選択範囲を作ってから色調補正レイヤーを作ることで、そのレイヤーにマスクがかかります。
上半身も同じように塗ったので、これから水彩境界をつけていきます。
レイヤープロパティから水彩境界を選択し設定していきます。
透明度影響を高くすると境界が濃く、明度影響を高くすると黒色が強くなります。ぼかし幅を大きくすると、くすみが発生しやすいので小さめの値にしました。また、今回は透明度影響、明度影響共に30程度の値を設定しました。
もし境界が必要ないと感じた場所が部分的にあった場合、濃度低めの透明色のエアブラシで境界となる部分のを薄くすることで水彩境界が発生しなくなります。
次にハイライトを入れていきます。ハイライトと言えば加算レイヤーが主流ですが、ジャギーが出ないように新規通常レイヤーに描いていきます。点々と描いていく、端に溜まりを作ることで水彩のホワイトらしさが出ます。
人物の塗りが終了したので、ここで最初に作成した全自動彩色レイヤーを人物塗りレイヤーに、濃度を下げてリニアライトでクリッピングします。これにより色ムラが出て、色数が増える上、全自動彩色レイヤー特有の質感を取り入れることができます。
また、今回はリニアライトですが、別の効果で合成した方が綺麗になる場合があります。
これで人物が完成しました。背景を描くために人物フォルダの一番下に白一色のレイヤーを作ります。これで人物の中に背景が重なってしまう問題が解決されました。加工するときに便利なので人物に使ったレイヤーを1つのフォルダにまとめておきます。
背景を描く
羊飼いの少年なので、背景に草原や羊を描いていくことにしました。
まず、遠くの風景から描いていきます。
山や木などは水彩境界のエッジを線画の代わりに見立てることで時短になります。また、背景の線画を省くことでメインになるキャラクターを目立たせることもできます。
同じレイヤーに描いたものは全てのオブジェクトが合わさった状態の輪郭に水彩境界が発生してしまうので、例えば樹木と草原などはレイヤーを分けて描画していきます。
遠くの背景が描けました。
次に人物の前の羊を描いていきます。まず、人物の上にレイヤーを2枚作ります。上のレイヤーは不透明水彩で境界を作り描きこむ用、下のレイヤーは透けないように下地を作る用です。
下地は投げ縄塗りで作りました。モチーフの形をある程度作っておくことで水彩で描きこむのが楽になります。(わかりやすいよう緑色で下地を表示しています)
遠くの背景同様に水彩で描きこんでいけば羊と背景の完成です。
加工する
最後に色調補正をかけます。今回は色調補正レイヤーで彩度を少し高くし、全体を複製して低濃度で乗算しました。線画だけ浮いていたので透明度を保護してエアブラシで茶色にしました。
これで完成です。
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