トーンカーブを使って影色を作る方法

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駒米トオル

駒米トオル

「乗算1色だと何か単調になっちゃうなぁ」

「でも、下地の色ごとに影色を変えるのめんどくさいし……」

「1色でいい感じの影色になってくれないかなあ!!!!」

 

というウルトラハイパー怠惰な願望を抱き続けて、早数年。

 

基礎画力を身に着けるわけでもなく、楽するために頑張るとかいう、もはや怠惰なのかよく分からない方向に努力してしまった哀れな人間が辿り着いた方法が、今回ご紹介する着彩方法です。

 

 

では最初に、今回やる流れを簡単にご紹介しておきます。

 

①色調補正レイヤーの「トーンカーブ」を追加。

②適当に暗い色にしたら、「マスク」を使って影を塗る。

③塗り終わったら、色の調整。

 

おわり。

 

「トーンカーブ」や「マスク」といった専門用語が出てきましたが、出来る限り分かりやすく機能解説をしていきますので、この方法が合わない方も機能解説を見るつもりでご覧いただけたらと思います。

 

また、今回ご紹介するやり方はトーンカーブの特殊な使い方をしていますので、一般的な使い方も最後にご紹介します。

 

それでは、さっそくやっていきましょう。

 

 

この記事と同じ内容ではありますが、動画も作成いたしました。

日本語の動画ですが、よろしければご覧ください。

 

▼動画

トーンカーブとは

まず、下塗りが終わった絵を用意します。

 

次に、新しい影レイヤーを作っていくわけですが、1つのレイヤーで全部の影を描いていくので、下地をまとめたフォルダか、あるいは全てのレイヤーの一番上のレイヤーを選択しておきます。私は線画にも影が乗ってほしいので、一番上のレイヤーを選択しておきます。

 

そうしたら、上にあるタブの「レイヤー」から「新規色調補正レイヤー」「トーンカーブ」をクリックします。

 

Go to Menu section [Layer]→[New Correction Layer]→[Tone Curve]

すると↓のようなウィンドウが現れます。

今追加したこの「トーンカーブ」というもの。今回はこれを使って影を描いていくのですが、一体どういう機能なのかといいますと、これは「色の明るさを調節する」機能です。絵を明るくしたり、暗くしたりすることが出来る機能ですね。

 

斜めの白い線を動かすことで明るさを調節します。

 

ちなみに、クリックして出来た点はグラフの外に持っていくと消すことが出来るので、余分に作ってしまった場合は消しておきましょう。これ最初消し方分かんないですよね。

詳しい使い方はあとで説明するので、トーンカーブがかかっていることが分かりやすいように適当に暗くして、一旦OKを押して、このウィンドウを閉じちゃいましょう。

 

今のトーンカーブはレイヤーとして追加されていて、レイヤーの左側の四角(サムネイル)をダブルクリックすると、また先ほどのウィンドウが出て編集できますので、安心して閉じちゃってください。

塗り準備

今、絵全体にトーンカーブがかかっていますが、これを人物だけにかけたいので、簡単な準備をします。まぁ多くの方が影塗りの時によくやっていることだと思います。

 

いくつかやり方をご紹介するので、ちょっと説明が長いかもしれませんが、お付き合いください。

 

 

先程のトーンカーブのウィンドウを閉じたら、トーンカーブレイヤーを線画と下地の間に追加した方は、下地にクリッピングしちゃってください。人物だけ暗くなってたらOKです。

 

もし、髪の毛だけ~とか一部のパーツにしかかかっていない場合は、おそらく下地がフォルダーにまとまっていないと思うので、下地を全部1つのフォルダーにまとめていれて、そのフォルダーの上にトーンカーブレイヤーを持ってきてクリッピングしてください。

 

……まぁパーツごとでもいいのですが、最後、色の調節をする時に分かりにくくなってしまうので、今回は全部一気でお願いします。

 

次に、トーンカーブレイヤーを線画の上に追加した方は、少しやること多くなってしまうので、頑張ってついてきてください。

 

まずはトーンカーブレイヤーを掴んで上の(人によっては下にある)フォルダーのアイコンがある位置まで持っていって離します。

 

そうすると、トーンカーブレイヤーがフォルダーの中に入った状態になります。

ですが、今、トーンカーブが絵にかかっていない状態になってしまっているので、フォルダーの合成モードを「透過(Through)」にしておきましょう。

そうしたら、どのような方法でもいいので、人物だけ選択した状態を作ります。

 

おすすめする方法としては、Ctrlキーを押しながら下地のフォルダーアイコン(またはサムネイル)をクリックします。

そのままもう一度Ctrlキーと今度はShiftキーも同時に押したまま線画のフォルダーアイコンまたはサムネイルをクリックします。

これで今、人物の塗りと線画の範囲を選択している状態になりました。

 

この状態が出来たら、トーンカーブが入っているフォルダーを選択して、上の□と〇のアイコン「レイヤーマスクを作成」をクリックします。そうすると、人物だけにトーンカーブがかかっている状態になります。

レイヤーマスクとは

さて、みなさん。これで人物だけにトーンカーブがかかっている状態が出来たかと思いますが、ここで「レイヤーマスク」についてご説明したいと思います。

 

知ってる方はここを飛ばしてもらっても構いません。

 

先程、フォルダーにレイヤーマスクを追加しましたが、実は、トーンカーブレイヤーにも最初からレイヤーマスクがついているのはお気づきでしたでしょうか?

 

この右側にある白い四角がレイヤーマスクです。

このマスク、日本語で言うと「覆う」であったり「隠す」という意味になります。

つまり、レイヤーマスクというのは「レイヤーを隠す機能」ということになりますね。

 

例えば、絵を描いている時に、「ここの線、邪魔だから消したいけど、何かあった時のために残してはおきたいんだよなぁ」ということ、ありませんか?そういう時にこのレイヤーマスクが役に立ちます。

 

レイヤーマスクを追加して、「透明色」を選んでから、隠したり非表示にしたいところを塗ると、消すことが出来ます。

当然、マスクで「隠している」だけですので、レイヤーウィンドウの上の方にあるマスクのタブから「マスクの有効化」のチェックを外すと、元の絵が出てきます。

 

Shiftキーを押しながらサムネイルをクリックしてもマスクの付け外しが出来ます。

ちなみに、今どこをマスクで隠しているのか知りたい場合は、同じ場所にある「マスク範囲を表示」にチェックを入れると隠している場所が見えるようになります。

また、このマスクのサムネイルでも「白いところが見えていて、黒いところが隠されている」という表示のされ方をしているのでここでも判断が出来ると思います。

 

「見えている場所は光が当たっているから白くなっていて、見えていない場所は光が当たっていないから黒くなっている」なんて考え方もいいかもしれません。

 

 

ただ、このレイヤーマスク、とても便利なんですが、一個だけ注意してほしいことがあります。

 

今回はトーンカーブレイヤーで使うのでこの事故は起きませんが、普通のラスターレイヤーであったりベクターレイヤーで使う時。

 

マスクの方のサムネイルではなく、絵の方のサムネイルが選択されている状態で透明色を塗っていくと、「マスクで隠しているつもりが絵自体を消してた!」なんてことになってしまうので十分に注意してください。(私は何度もやらかしました)

今回使うトーンカーブレイヤーはそもそも描くことが出来ないレイヤーなので、この事故は起きません。

 

逆に「あれ?描けないんだけど?」と思ったら、選択してるのマスクの方じゃなかった~みたいなことはあるかもしれません。

塗るぞ!

さて、話を戻しましょう。

 

このトーンカーブレイヤーのマスクが選択されている状態で、コマンドバーの「消去」のアイコンをクリックしてみましょう。

すると、当然全部消えると思いますが、マスクのサムネイルを見てみると、真っ白だったものが真っ黒になっていますね。

 

つまり、今「全部隠されている」状態です。

この状態から影の部分だけを見えるようにしていきましょう。

 

使う色は透明色以外であれば赤でも白でも黒でも青でも何色でも構いません。

使うブラシもいつも使っているもので大丈夫です。このまま影を描いていきましょう。

普通に消しゴムツールやバケツツールも使えるのでそのまま描いちゃいましょう。

もしかしたら今色が気持ち悪いかもしれませんが、後で調整します。

 

 

 

もしかしたら塗っている最中に、「パーツからはみ出さないように塗りたい!」「パーツでクリッピングしたい!」と思われるかもしれませんが、そういう時は、塗りたい下地のサムネイルをctrlキーを押しながらクリックして範囲を選択してから塗ると、疑似的なクリッピングが出来るようになります。

 

もし上記のやり方で他のパーツにもかかって選択範囲が作成されてしまう場合は、余計にかかっているパーツのサムネイルをCtrlキーとAltキーを一緒に押しながらクリックすると、その部分だけ選択範囲を解除することが出来ます。

 

あとは魔法のステッキのようなアイコンの自動選択ツールも便利です。

 

(▼動画、該当部分から開始します)

1枚のレイヤーで全部の影色を塗る時はこの「選択範囲」を活用してみてください。

明るさ、彩度の調節

それでは、大体影が描き終わったら、いよいよトーンカーブをいじっていきます。

お待たせしました。

 

トーンカーブレイヤーのサムネイルをダブルクリックして、このウィンドウを出します。

影が好みの色になるように調整していきます。

調整する時は、次の3点だけ抑えておけばOKです。

 

・上下で明るさを変える

・彩度を高くしたい時は曲線、低くしたい時は直線

・下地が明るいところは右側を、暗いところは左側を動かす

 

では、実際にやってみましょう。

 

 

まず、最初の「上下で明るさを変える」ですが、斜めの線が下に行けば行くほど色が暗くなり、上に行けば行くほど明るくなります。今回は影塗りなので、線を下に下げて暗くします。

その次、斜めの線を弓なりにしならせると、彩度やコントラストが高めの色になります。

 

逆にしなり具合を弱めたり、右上の点を下に下げて直線に近くすると彩度やコントラストが低い色になります。明るさと彩度のバランスを見ながら調節してみましょう。

さて、そうしていじっていると、なんとなく、肌とか髪の毛とか明るい色の所はいいけど、パーカーの暗いところの影はもうちょっと明るくてもいいかな、という感じがしてきました。(まぁこれは私の所感ですが)

それでは最後「下地が明るいところは右側を、暗いところは左側を動かす」ですが、そもそもこのグラフは、右側が下地の明るい色を示していて、左側が暗い色を示しています。

 

今は下地の暗いところの影色を明るくしたいので、左側に点を追加して線を上にちょっと持ち上げます。

 

そうすると、暗いところをちょっと明るくすることが出来ました。

ただ、点を1つ追加したことで若干明るい方の線の形も変わってしまったので、また調整します。

クリックして追加する点は、最大で30個まで増やせますが、増やせば増やすほど扱いが大変になっていくので、明るい所用と暗い所用の2,3個くらいで十分かなと思います。

 

 

ところで調整している中で、少し思ったように暗くなりにくい色がある方もいるかと思います。特に……肌の所とか?

 

これは使用している色の「明度」に関係があります。

 

カラーサークルの、上の辺にピッタリくっつく所の色は、明度が100の一番明るい色です。

明度100というのは、トーンカーブのグラフで言うと一番右端になります。

なので、ここの色だけは右上の点でしか調整することが出来ないので注意してください。

色味の調節

そんなわけで、明るさと彩度を調節してきましたが、最後に色相、色味の調整もしていきます。

 

トーンカーブウィンドウの左上にある「RGB」と書かれているところをクリックすると、RGBの他にRed、Green、Blueの3つのチャンネルが出てきます。

 

今はとりあえず一番上のRedのチャンネルを選択します。

試しに線を動かしてみましょう。まず、上に動かすと、影が赤くなりました。では反対に下に動かすと影が青緑になりました。

 

リセットをしてチャンネルをGreenにしてみます。上に動かすと緑に、下に動かすと紫になりました。

 

またリセットをしてチャンネルをBlueにしてみます。上に動かすと青に、下に動かすと黄色になりました。

これらは、色の足し算と引き算をしています。線を上に上げるのが足し算で、下に下げるのが引き算です。

 

例えば、Redのチャンネルで線を上にあげると赤くなりましたね。

 

これは赤色を足し算しています。沢山赤を足しているから赤くなったわけです。

逆に下に下げたのは赤色を引き算しています。赤色を取り除いているので、残った青と緑の二色が混ざった青緑になるわけです。

 

他のGreenとBlueのチャンネルも同様です。

ちなみに一番最初にいじっていた、RGBのチャンネルは、この赤、緑、青の三色を全て同時に動かしていました。

 

赤、緑、青は「光の三原色」と呼ばれており、光は足せば足すほど明るくなりますよね?逆に引けば引くほど暗くなります。

 

なので、線を上に上げれば明るくなり、下に下げると暗くなったというわけです。

 

このトーンカーブを使った影塗り方法。機能を応用したやり方のように見えて、実はかなりリアルな考え方に近いものがあります。影って要は光が当たっていない部分ですからね。

 

 

とはいえ、今はとにかく「色」だけ考えてください。

 

色々理由はありますが、影色は一般的に「青寄りにすると良い」と言われます。

チャンネルをBlueにして線を上に上げたり、そのままチャンネルをGreenにして少し下に下げ、青紫にしてみてもいいですね。

 

 

赤、緑、青、それぞれのチャンネルで動かしていると、どんどん明るさが変わってしまうので、「この色のまま明るくしたい/暗くしたい」などがあれば、RGBのチャンネルに戻って明るさの調整をしましょう。

 

 

納得のいく色味になったらOKを押して終了です!!お疲れさまでした!!

 

明るさを逆にすれば、この方法で光を描くことも出来ます。

一般的な使い方

では最後に、一般的なトーンカーブの使い方をご紹介して終わろうと思います。

 

トーンカーブは「色調”補正”」のジャンルに含まれている機能です。要は最後に加工でちょっと使う程度ってことですね。

 

主に、イラストや写真のコントラストを上げたい時に使われます。

 

全てのレイヤーの一番上にトーンカーブを追加して、このようなS字カーブにします

このグラフがどういうことを表しているのか、復習してみましょう。

グラフの右側の線を上にあげて、左側を下げています。ということは…?

 

「イラストの明るい所をさらに明るく、暗い所をさらに暗くしている」ということですね。

これによってコントラスト(明るさの差)が高くなります。

 

他の色調補正機能に「明るさ・コントラスト」といったコントラストを調整できる機能もあります。

 

ですが、トーンカーブはそれよりもさらに細かく「明るいところはこのくらい明るくして、暗い所はこのくらい暗くする」といった調整が出来るようになります。

 

 

更に、今回一緒に解説した「マスク」の機能を使うことによって、「ここだけコントラストを上げる」といったことも出来ます。(本来はそういう用途だと思います)

また、Red、Green、Blueの3つのチャンネルで色味の調整にも使うことが出来ます。

 

単純な色味調整なら別の色調補正の「カラーバランス」の方が向いていますが、トーンカーブでは「”この”明るさのところの色味を変える」といったピンポイントの調整が出来ます。

 

 

ということで、今回、いかに邪道なやり方をご紹介したかがお分かりいただけたかと思います(笑)

 

とはいえ合成モードを使用した影塗りだと、どうしても「色を重ねる」という意識になってしまい、色選びという作業が中々困難だったわけですが、トーンカーブは「地の色を(このくらい)暗くする」「地の色を(このくらい)青くする」という考え方で調節するので、こちらの方がなんだかしっくり来たなという気持ちでした。

 

また、一度作ったトーンカーブレイヤーは素材登録しておいたり、レイヤーのコピペで同じ設定の物を使い回せるのも嬉しいところですね。

 

本来の使い方でもトーンカーブはとても便利な機能ですので、是非使ってみてください~!!

おまけと他ソフトをお使いの方へ

サムネイルで使用したトーンカーブを載せておくので参考にしてください~

(上から RGB > Red > Green > Blue です)

 

【他ソフトをお使いの方】

 

今回、CLIP STUDIO PAINTの「色調補正"レイヤー"」という機能を使って解説してきましたが、アイビスペイントやメディバンペイントなどの他ソフトでは、「トーンカーブ」という機能はあっても、それをレイヤーとして追加する機能が無かったりします。

 

そのため、出来ないというわけではありませんが、少々手順が面倒くさくなってしまいます。

 

方法としては、

 

①下塗りをコピーしたものを1枚に結合

②その結合したコピーの下塗りに直接トーンカーブを掛ける

③必要な所をマスクで表示

 

になりますが、後から色の調節をしようとすると、また①からやり直しになるので、クリスタに比べて面倒くさいです。乗算のほうがいいかもしれない。

 

▼このやり方を以前Twitterで紹介したので、動画でご覧になりたい方はこちらをご覧ください。(使用しているソフトはクリスタですが)

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