漫画の為の定規の使い方講座
はじめに
今回はCLIP STUDIOで漫画を描くのに必要な定規機能の基本についてです。
ちょっとした操作の豆知識と設定を解説しながら、どんな絵を描く時にどの定規をどうやって使うのかを解説します。
1.定規のショートカットと設定
1.1スナップのショートカット
定規のスナップの切り替えは画面上のコマンドバーのボタンで行います。いちいちコマンドバーまで手を動かすのは、効率的でないので、ショートカットに登録しておきます。
[ファイル]メニューの[ショートカットキー設定]から、1.[設定領域-メインメニュー]-2.[表示]-3.[定規・特殊定規にスナップ]で登録できます。
定規のON・OFFの切り替えは、定規のレイヤーを非表示にしたり、定規のダイヤマークをオブジェクトツールで触って切り替えることも出来ますが、いちいち描いてるところから手を動かさなくなきゃいけません。ショートカットに登録しておくと手を動かさなくて済むので便利です。
他にもパース定規のそれぞれの消失点のスナップのON/OFFもショートカットに登録しておくと便利です。一方向だけ消失点を無効にしたい時に一瞬で切り替えをする事が出来ます。
[ファイル]メニューの[ショートカットキー設定]から、1[設定領域-オプション]-2[キャンバス]-3[パース定規]でそれぞれの消失点を登録できます。
1.2 オブジェクトツールの設定
次は平行線定規を使う時に便利なオブジェクトツールの設定を紹介します。
オブジェクトツールの[透明箇所の操作]の[ドラッグによるオブジェクトの操作]の[平行線定規の方向指定]にチェックを入れておきます。
この設定でペンで描いてる時に[Ctrl]キーを押しっぱなしにしながらドラッグすると、一時的にペンがオブジェクトツールに切り替わって、平行線定規の角度をお手軽に自由に変える事が出来ます。
これはこのようなハッチングを描く時に便利です。
また、[Ctrl]で切り替え中に加えて[Shift]を押しながらドラッグすると、45度刻みで調整できます。
平行線定規の細かく正確な角度が欲しい時は、オブジェクトツールで平行線定規を触ると、角度を数値で設定できます。
この角度の数値は平行線定規で描いたものを、フィルターの[移動ぼかし]でぼかす時に、角度を合わせるのに使います。
2.各定規を使った実例
それでは漫画を描く際に、どんな時にどの特殊定規をどう使うのか、このサッカーボールに動きをつける感じで、いくつか作例を出しつつ一通り紹介していきます。
2.1 平行線定規
まずは平行線定規です。この定規は直線的に運動してる感じのスピード線を描くのに使います。
黒の塗りつぶし部分にホワイトでスピード線を重ねて描く時にも使います。
他にもちょっとした影線やハッチングを描くのにも使います。この時先ほど紹介した、ペンで描いてる時に[Ctrl]キーを押しっぱなしにしながらドラッグする事で平行線定規の角度の変更する方法が役に立ちます。
次は平行曲線定規です。
2.2 平行曲線定規
次は平行曲線定規です。ツールの一覧にない場合は平行線定規をコピーして、名前を変えて、[特殊定規]の項目を[平行曲線]に変更して使ってください。曲線の指定方法は[二次ベジェ]がおススメです。他の定規も同様です。
平行曲線定規の設置方法です。ベクターレイヤーで曲線を描く感じで定規を置いてから、オブジェクトツールで微調整します。
平行曲線定規はこのように曲がった感じの運動のスピード線を描くのに使えます。
他にはパイプの角の所を描くのに使ったり、
曲線のハッチングを描くのに使ったりします。
この時方向毎に定規を作る事をおススメしておきます。
2.3 多重曲線定規
次は多重曲線定規です。
多重曲線定規は平行曲線定規に似ているのですが、オブジェクトツールでこの棒のついた丸いマークを回すと、定規の先が細くなって、少し遠近感がある感じの曲がったスピード線を描く事が出来ます。
他にも先が細くなるような刀の影の線を描いたりするのに使います。
定規のスナップをOFFにして、影線を少し消したら刃紋みたいな表現にも出来ます。
また平行線定規と多重曲線定規は予め設置しておくと、流線ツールもスナップする事が出来ます。自動で元のスピード線と線を揃える事が出来ます。
同じ定規で描いてあるのでツールで大雑把に描いた線に、後から線を描き足して微調整も出来て便利です。
流線ブラシもスナップ出来るので、線画に細かい動きの線を足したりするのにも便利です。
選択範囲で囲った部分に白の流線ブラシで描くとこのような効果が得られます。
流線ブラシは以前配布したので、自由にカスタマイズして使ってください。
ただ一つ注意点があって、流線ツールは平行曲線定規にはスナップ出来ないので、その点だけ覚えておいてください。流線ツールは平行線定規と多重曲線定規にだけスナップする事が出来ます。
2.4 放射線定規
次に放射線定規です。
これは普通に集中線を描くのに使ったり、
奥行のあるスピード線を描くのに使います。
2.5 放射曲線定規
次に放射曲線定規です。
これは渦状の集中線を描くのに使ったり、
遠近がある感じの曲がったスピード線を描くのに使います。
また放射線定規と放射曲線定規も、集中線ツールをスナップする事が出来ます。
集中線ブラシも同様にスナップ出来ます。
集中線ブラシは以前配布したので、自由にカスタマイズして使ってください。
2.6 パターンブラシ
また、今まで紹介した定規たちは、 パターンブラシもスナップ出来ます。
模様を描いたり、スピード線に沿ったエフェクトなどを描く時に便利です。
試しにパターンブラシと放射曲線定規を使って、吹雪の絵を描いてみましょう。
グラデーションの上から、こんな感じに雪ブラシを使って中心に向かって雪を描いて、
白い線で曲線の集中線を描き足してから、
雲ガーゼで中心の雪を少し消します。吹雪いているような絵を描く事が出来ました。
2.7 ベクターレイヤーの定規化で物を描く
次は物体を描く時に便利な、ベクターレイヤーの定規化を紹介します。
これは一度ベクターレイヤーで物体を描いてしまってから、ベクターレイヤーを定規化して再度ペンでなぞって描くやり方です。
これならいちいち定規とペンを持ち替える必要が無く、線に抑揚をつけながら小物をきれいな線で描く事が出来ます。
先ほど出てきた刀の線画を例にしてみてみましょう。まずベクターレイヤーに曲線ツールなどで刀の線画を描きます。
この状態では線が均質で堅苦しい感じがします。
次に描いた線画を、[レイヤー]メニューの[定規・コマ枠]-[ベクターから定規]で丸ごと定規化します。
今度はもう一度ペンでなぞって描いています。ベクターレイヤーの状態より線に抑揚がついてツールで描いた感じが無くなりました。
補足と応用
今回は初心者向けの記事でしたが、過去の記事では定規の応用的な内容に触れています。
ベクターレイヤーで物を描く事については過去の動画で詳しく解説しています。ベクターレイヤーを定規化して物を描く時に参考にしてください。
定規とフィルターの連携や、バトルシーンでの定規の使い方は下記の記事でも解説してるのでご一緒にご覧ください。
終わりに
以上、漫画を描く時に便利な定規の基本について紹介しました。
定規は均質な線を描くのが得意な一方で、設置に時間がかかり、その手間が作業の邪魔になることもあります。描きたい線の為の定規が上手く設置できない事も多々あります。そういった時には定規を使わずにフリーハンドで描く事も十分に検討に上がります。機能を把握した上で定規を使うのかベクターを使うのか、それともフリーハンドか、状況や気分によって使い分けてみて下さい。
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