デジタルの圧倒的利便性、アナログの魔力と直感性

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エキストリーム納豆

エキストリーム納豆

私は漫画が描けます。

某週刊漫画誌の月間賞で賞金1万円を得た事がある程度には漫画が描ける人間です。

当時は紙とインクでしたが、現在は完全デジタルで同人誌とか描いていたりします。

 

というわけで、アナログとデジタルで何が変わるか実感として知っています。

以下にそれぞれ使ってみて感じた所感等を述べていきます。

結論:9割9分の点でデジタルの方が優れている

身も蓋もない結論を最初に出さざるを得ません。

アナログの場合間違った線は下書きなら消しゴムでもいいですが、インクは一発勝負なのでミスした線は修正液で塗らざるを得ません。

デジタルならCTRL+Zで一発です。むしろ何手も戻れてしまうのに注意。

もうこれが出来る時点で利便性の点では勝負になりません。

のみならず上下左右反転と言った様々な機能も思いのままです。

 

さらにかさばる紙や画材、こぼすのを恐れながらのインク作業、カッターでチクチク細かいトーン貼りもいりません。

全部ソフト側に入ってます。

広いベタ塗りもバケツで一瞬で終わります。

そして豊富なアセットは苦手な分野・面倒な作業を大幅に代行してくれます。

 

またデジタルでも画材の消耗はありますが、アナログほど頻繁に画材屋に足を運ぶ必要はありません。

 

というわけで、私の意見としましてはアナログよりはデジタルでの漫画作りを基本的には圧倒的にお薦めします。

 

…以上を踏まえまして。

アナログの優位点≒デジタル移行時に気を付ける点は?

①デジタルは紙とペンほど直感的でない

当然の話ですが、肉体と物理以上に直感的なインターフェースはありません。

 

前提として、ペンタブでも慣れればそれほど気にはならなくなります。

が、どうしてもペンが紙繊維一本一本に引っかかることそのものが定規でも測れない微細な感覚となって線を運ぶ手掛かりとなる、あの真の直感性はないんです。

ノートの隅に描いた落書きにさえもあったこれが、ない。

だからアナログと同じキャラが同じに描けない。

 

アナログメインをやめない人の一番の理由は多分これではないでしょうか。

 

ペンタブのようなデジタルデバイスはいかにアナログに近づけるかを命題としていますが、逆に言えばつまりその本質的再現は実に困難ということです。

 

この問題の解決法は…ありません。

問題というより道具の特性ですので道具に体の方を合わせてください。

一週間も使っていれば最低限慣れますので。


②原稿用紙一枚の上に完結しない

紙原稿作業は、原稿用紙一枚の上にプロダクトを作り上げていく行為です。

泣いても笑っても1ページは紙一枚という極めて直感的な結果が常に目の前に存在するわけです。

 

と言ったところでサンプルとして適当にでっち上げた1ページをご覧ください。

ベタも背景もないこんな単純な落書きページでも、この時点で右側のレイヤー構造が目が滑るほど大量で複雑になってしまっています。

紙一枚で作るという発想からかなり遠い物がそこにあります。

 

なまじどこまでも作業を遡れてしまうために「最後につじつまが合ってりゃいいや!エイヤッ」という紙なら絶対やる決断がなかなかできませんし、レイヤーが多いので書きこむレイヤーを間違うというミスもしょっちゅうです。

そもそもアナログにはレイヤー間違いという概念が存在しませんし。

 

これはもうそういうもんだと受け入れるのがデジタル移行の心構えですね。

なるべくレイヤー構造をシンプルにしようとも、トーンを何重にも重ねるような作風の場合結局レイヤー数が多くなりますからね。


③PC等のデバイスの機嫌に左右される

なんか日によってPCの調子がやけに悪い事ってないでしょうか。

 

いきなりブルスク吐いて長時間描いてた絵やマンガが吹っ飛ぶ…みたいなのはさすがにそうそうはないですが(たまにはある)、復元ポイントやバックアップ使ってロールバックしたほうがいい状態とか、またそこまで行かなくともなんか動作が重くてペンの挙動が変になるとかは結構あることです。

 

またクリスタ的な問題としては、何の前触れもなく素材のインストール場所が行方不明になり多少の時間を使って再セットアップが必要みたいな現象とかも稀に起こりますね。

(同様の現象はsteam等クライアントソフトがある大体のプラットフォームでも起きますが)

 

いや、アナログの漫画作りでも制作に支障をきたす状況やアクシデントと言うのは確かにありますよ?

ですがそういうのって不注意で原稿にコーヒーこぼしたとか、今日は暑いから原稿に汗が染みないように気を付けないといけないとかの身体性に基づく物理的で直感的な事がほとんどじゃないですか。

 

電子機器の不調はそういうのがありません。

感覚の外から襲ってくる不意打ちなのです。

 

対処法は結局のところ心構えと、

そしてこまめな保存と定期的なバックアップしかないです。

アナログは成果もミスも強制保存なので考える必要がないことです。


横道:クリスタ作業環境のバックアップ方法

PCの場合ですが

CLIP STUDIOでここを押すと

これが出るのでここを押しまして

こうです

CLIP STUDIO PAINT等のソフトが起動中だとバックアップはできませんし、またネットでアップロードもするので環境や素材量によっては時間がかかります。

休憩中とか時間が空いた時にやりましょう。


以上を全部呑み込んででもデジタルがおすすめ…だけど?

身体性直感性と引き換えの強み

と言う感じで、デジタルの問題・引っかかる点は

「あらゆる面で身体性が薄れ直感的でなくなる」

に尽きるのではないでしょうか。

 

とは言ったものの。

 

えーなんだかんだ言ってきましたが私、(同人クォリティではありますが)一人でひと月でフルカラー漫画50Pとか作ってるんですよ。特に体に負担も掛けず。

こんなのアナログじゃ絶対無理ゲーですよ。

 

初めて原稿とインクで描いた漫画は普通にモノクロ4コマ漫画8ページなんですけど、慣れてないのもありましたけど2週間かかりましたよ。

スキルアップで出来を3倍、速度3倍としてもモノクロ月30ページちょい。

カラー50Pとか無理やんけ(リフレイン)。

 

コマ割り一つとってもですね、紙原稿だと定規とえんぴつでアタリ取って定規とマジックで枠線引いて…となるでしょう。

でもクリスタだとこの通り。

これは4倍速gifですが、

それを差し引いても下手したらアナログの1/10も時間かかってません。

デジタルの漫画環境というのは使いこなせば斯くも強力なのです。

何らかのプロダクトとしてマンガを作っていきたいという方には、やはりアナログよりデジタルがいいですよと薦めるほかありません。

 

ただし別に紙とペンを捨てる必要もありません。


紙の魔力・向き不向き

禁酒のためには自分の手でペンを持ち、自分の手でコピー紙かなんかに「禁酒」と書いて壁に貼っておくのが効果が高い、と聞いたことはないでしょうか。

これデジタルや人に書いてもらったもんじゃだめなんですよ。

 

物理の紙とペンにはこのような魔力が宿っているのです。

オカルトじゃなく。

 

また最初の方で利便性はデジタル>アナログと述べましたが、

これはマンガとか本気イラストとかそういうガッツリ腰を据えて手の込んだプロダクト作る場合の話です。

外出先で落書き・メモを取る・人に図示する・降ってわいたアイデアを書き留める等、パッと取り出してパッと書くみたいな用途では紙とペンが圧倒的です。

 

また漫画をデジタル移行しても紙の魔力身体性直感性を取り入れたい場合も、下書きは紙で書いたのをスキャンして…のようなプロセスを踏んでもいいわけです。

いきなり全部デジタルはちょっと、と言う人にもお薦めです。

まとめ うまいことまぜましょ

私は漫画というメディアを、

個人で作れる総合芸術の究極形として信仰しております(大袈裟)。

 

その最大の難点は「作るのに寿命削るレベルの手間」ですが、

これを大幅に緩和するのがデジタルでの制作です。

故に、面白いものを作る人には健康に長生きしていっぱい作品を作ってほしいのでデジタル環境を薦めたいのです。

 

という一方紙とペンの身体性・直感性・魔力を全部捨てるのももったいない。

 

最近、デジタルのイラストレーターがなんかアナログ絵を上げ始めたとかありますね。

これはAIのある時代に対して自身をアピールする目的もあるでしょうが、これを機にアナログの力を見直したというのも小さくないはずです。

 

デジタル移行に二の足を踏んでる方、その感覚はある意味において正しいんです。

でもそれはそれ。うまいことバランスとって取り入れればいいのです。

 

デジタルマンガのプロセスにアナログを一部取り入れるのでも、漫画の外の絵描き活動でたまにアナログをやってみるのも、なんならメモ帳の落書き程度でもいいので紙とペンを日々使うとかその程度でも構いません。

 

以上をまとめますと、

大体デジタルにちょっとアナログという塩梅を目指せばデジタル移行に伴う違和感・引っかかりは相当マイルドに抑えつつおいしいところだけ得られるんではないでしょうか。

 

本TIPSは以上となります。

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