3Dデッサン人形で躍動感ある立ちポーズを作ろう
◆はじめに
こんにちは!!CLIP STUDIO ASSETSにて主に3Dポーズ素材を出品している一ノ四乗です。
此度は「ダイナミックなポーズの描き方」のTIPSが募集されているということで、定番素材としてもおなじみの拙作「ちょっと使えるポーズ集 vol.1」もめでたく50000DLを突破したことですし、自分が普段どうやって3Dポーズ素材を作っているのかを紹介します。
全身の自然なポーズを描くのが難しい、だから3Dデッサン人形を使いたいけれどこれの操作も難しい……そんな方の手助けになれば幸いです。
参考までに「ちょっと使えるポーズ集」シリーズもよろしくね!!
◆①下書き
今回は立ち絵を描くためにポーズを新規で作る想定で進めていきます。
とはいえ最初にすべきものは3Dデッサン人形の用意よりも下書きです。
3Dデッサン人形で1からポーズを作るとしても、ある程度の構想をラフとして描いた方が断然作りやすくなりますよ。
3Dデッサン人形を長時間に渡って操作すると、CPUに負荷がかかり動作が重くなります。
キャンバスサイズを小さめにしておけば、CPUへの負荷を軽減することができるのでおすすめです。
ポーズが完成してからキャンバスの解像度を変更することもできるので、まずは600×800程度のサイズを選びましょう。
ざっくりとポーズの構想を下書きとして描きます。
ぎこちなさを感じさせない魅力的なポーズにするには、
❶体の流れが流線的になるよう意識する(赤線部)
❷左右片方の肩と腰が寄り、反対側が離れるような胴のひねりを入れる(青線部)
❸誇張した反りをつくる(緑線部)
あたりのポイントを意識すると効果的です。
◆②3Dデッサン人形の基本操作+アングルの調整
基本的な3Dデッサン人形の操作方法を改めて説明します。
他のTIPSで十分に理解している方はこの項目を適宜読み飛ばしていただいても構いません。
3Dデッサン人形は「素材」パレットの「3D」→「体型」タブの中にあります。
ここからキャンバスへドラッグ&ドロップすると、キャンバス内に3Dデッサン人形が反映されます。
3Dデッサン人形の上部に表示されている青いアイコンが「移動マニピュレータ」です。
ここをクリック+ドラッグするとカメラアングルや3Dオブジェクトの位置を調整することができます。
特によく使う「カメラの回転」と「カメラの前後移動」は、それぞれ何もないところで左クリック+ドラッグ、右クリック+ドラッグをしても同じ働きをします。
加えてカーソルホイールを回転させると「パース」を調整できます。
1.0にすると全くパースのない望遠のような効果に、そこから数値が上がるとどんどんダイナミックなパースになります。
まずはこれらを用いて、作りたいポーズと似たようなアングルになるようにカメラを移動してみましょう。
3Dデッサン人形の操作に移る前に、3Dデッサン人形の特性について軽く説明します。
3Dデッサン人形はパーツをクリック+ドラッグしたり、マニピュレータを操作することで各関節を動かせますが、思い通りに動かすには意識すべき挙動がいくつかあります。
まず、デフォルトの状態の3Dデッサン人形は骨盤の関節を基準に固定されています。
なのでクリック+ドラッグで両脚を動かす場合はこれだけでも十分操作できますが、頭や腕などの上半身で同じ操作をすると全体が引っ張られてしまい思うようにいきません。
クリック+ドラッグで上半身を調整する場合は、この仕様を解消するために固定する関節を変更する必要があります。どのようにすれば良いのかは、後の手順で説明します。
関節を1回クリックすると、3つの円で構成される「マニピュレータ」が表示されます。
この状態でマニピュレータを操作するとその関節だけを動かすことができますが、最初からこの操作でポーズを作ろうとすると、筋肉の動きや重心を無視した不自然なポーズになりがちです。
関節を2回クリックすると、複数の青い丸で構成される「アニメーションコントローラー」、4つの円と6方向の矢印で構成される「ルートマニピュレータ」が表示されます。
アニメーションコントローラーをクリック+ドラッグで動かすことで複数の関節を動かして腕や脚、胴や視線の位置を調整したり、クリックした後に表示されるマニピュレータを操作することで胴にひねりを加えることができます。
ポーズをざっくり調整したい場合にはこちらの操作を用いるのがおすすめです。
特に、胴のアニメーションコントローラーは魅力的なポーズを作るのにとても役立ちます。
先ほど下書きを描く際に意識するよう指摘した「左右片方の肩と腰が寄り、反対側が離れるような胴のひねり」や「反り」を簡単な操作で作ることができます。
一方で、アニメーションコントローラーを用いた操作は関節の人体的な可動域を無視するのが難点です。
腕を動かすと分かりやすいですが、関節が体内に埋まってもお構いなしです。
無視した可動域については、他の操作で関節を動かすと限界を超えないよう修正してくれますが、それにより作っていたポーズが大きく崩れることもあります。留意しておきましょう。
◆③全体のポーズを大まかに作る
3Dデッサン人形の特性を踏まえた上で、まずはざっくりと下書きのポーズに寄せていきましょう。
脚は直接ドラッグで、腕はアニメーションコントローラーを用いてだいたいの位置に移動させます。
また、一旦アングルを真横に移動し、胴のアニメーションコントローラーを手前に引っ張ることで胸を張った生き生きとした姿勢にすることができます。
逆に踏ん張っているようなポーズを作る場合には、奥や下に引っ張ることで腰を曲げたり落としたりすることもできます。
一ヶ所だけ遠くにあるアニメーションコントローラーは視線を移動させます。首の傾きも調節できるので、ちょうどいい角度に調節しましょう。
大まかなポーズが作れました。
ここから細部を整えていきます。
◆④脚を調整する
先述の通り3Dデッサン人形はデフォルト状態では骨盤で固定されているので、脚から整えるのがおすすめです。
太ももの関節をクリックしてマニピュレータを操作し、脚を開きましょう。
基本的には足がそれぞれやや外向きになるようにした方が見栄えが良いです。
女性キャラクターの場合は、脚の開き具合や曲げ具合にもよりますが、内股気味にするのもよいでしょう。
膝の関節はクリック+ドラッグで移動すると、自然な直立になるようにやや余裕をもった状態で移動しますが、マニピュレータを操作することでもっとピンと張ることができます。力んでやや逆関節気味になっている状態になります。下書きでも指摘した「反り」を意識して調節してください。
足の関節を操作して地面にしっかり足が着くように調整するのも大事です。一旦パースを1.0にし、グリッドが水平に見えるアングルで操作するとやりやすいです。
グリッドの下にはみ出している部分を調整しながら、都度3Dデッサン人形の下部に表示されている「オブジェクトランチャー」の「モデルを床面に設置します」を押し、上手く接地できているか確認しましょう。
◆⑤腕と指を調整する
先ほど少し触れた、クリック+ドラッグでうまく腕を操作する方法を紹介します。
❶胸の関節をクリックします。
❷オブジェクトランチャーの「選択された関節を固定するかを切り替えます」をクリックします。
❸胸の真下の腹の関節をクリックします。
❹❷と同様の操作で関節を固定します。
すると、腕のみをクリック+ドラッグで移動できるようになります。
肩をドラッグすると多少体が動きますがそれ以外は快適に操作できるので、とても調整がやりやすくなります。覚えておいて損はないです。
なお、この状態で脚をクリック+ドラッグで動かそうとすると逆に胴体が引っ張られるようになってしまいます。
調整したい部位に応じて固定する関節も切り替えるよう意識しましょう。
腕の位置を調整できたら、次は手のポーズを細かく作っていきます。
「ツールプロパティ」パレットに「ハンドポーズ」の項目があるので、まずはこれを用いて手を開いたり握ったりしましょう。
ハンドポーズの操作は、片方の腕の関節を選択しているとその方の手だけに、頭や脚など腕ではない部位の関節を選択していると両方の手に反映されます。せっかく上手くできた片手のポーズをもう片方の手の調整で上書きしないよう気を付けてください。
指の細かい調整はハンドポーズの上部にある鎖アイコンをクリックすることで各指ごとに開き具合を操作することもできますが、別の方法として、先ほど腕の調整の時に用いたように関節の固定を用いて操作することもできます。
❶オブジェクトランチャーから、すべての関節の固定を解除します。
❷手のひらの関節をクリックします。
❸関節を固定します。
❹前腕の関節をクリックします。
❺関節を固定します。
すると、指をクリック+ドラッグで動かせるようになります。
中指以外を動かすと手のひらも連動してある程度動いてしまいますが、おおむね快適に曲げ伸ばしができるようになります。
細かい部分はマニピュレータを操作して調整しましょう。
自然で魅力的な指の動きとして、全ての指に違う流れを付けることを意識するとよいでしょう。
特に人差し指や中指には力が入り、対照的に薬指や小指はやや脱力するように調整すると自然な指の動きになります。
◆⑥頭を調整する
腕を調整する際と同様に胸の2ヶ所の関節を固定すると、頭もクリック+ドラッグで動かせるようになります。
頭と首の関節は他の部位に比べて可動域が広いぶん繊細で、顎周りよりも頭頂をクリックした方が感覚的に動かしやすいです。
③の段階でも既に頭と首の角度が決まっていますが、より自然になるよう調整しましょう。
細かい調節を挟み、このようなポーズになりました。
様々な角度から見ても魅力的なポーズができていれば、文句なしの完成です!!
パースを強めにするとこれまた違った味わいも引き出せます。
これで簡単にダイナミックなポーズが描けますね。
◆⑦ポーズ素材として登録する
上手くできたポーズは、再利用できるように素材登録しておくことをおすすめします。
今回は1からポーズを作りましたが、あらかじめ3Dデッサン人形にポーズ素材を適用してから細部を調整すればもっと短時間で様々なポーズを作ることが可能になりますからね。
ポーズ素材を登録する前に、サムネイルとなる画像を保存しましょう。
「編集」タブから「画像解像度を変更」や「キャンバスサイズを変更」を選択し、キャンバスサイズが240×240になるよう入力します。
いったん「キャンバスサイズを変更」で比率を正方形にしてから解像度を変更する方がやりやすいです。
そうしてできた240×240のキャンバスをjpg形式で保存します。
画像が保存できたら、次はオブジェクトランチャーから「全身のポーズを素材登録」をクリックしてください。
「素材のプロパティ」が開くので、必要な情報を入力します。
素材名は具体的にしておくと検索で探しやすくなり便利です。
「素材のイメージ」横のファイルボタンをクリックして、先ほど保存したサムネイル用画像を開きましょう。これで素材一覧からどんなポーズなのかも見やすくなります。
右の「素材保存先」は「3D」→「ポーズ」→「全身」を選択することをおすすめします。
検索用タグは他のダウンロード素材などを参考に付けると絞り込みがしやすくなります。
参考程度に個人的なタグ付けの基準をお話しすると、全てのポーズ素材に「3D」、全身のポーズなのか手のみのポーズなのかを絞り込むために「全身」or「手」を付けています。
その他によく付けているのは「立ち」「座る」「持つ」「戦闘」「バトル」「アクション」「跳躍」「浮遊」などです。
「ちょっと使えるポーズ集」シリーズって、なんだかんだ毎回浮遊ポーズが収録されているんです。
◆⑧実用するための調整
さて、「ポーズ素材の作り方」としての説明は以上ですが、素材はあくまでも素材。
最終目標はこれを使ってイラストを完成させることです。
というわけで、「ポーズ素材を適用してからの調整」を想定した場合の調整方法についても説明します。
3Dデッサン人形は「ツールプロパティ」パレットから体型を調整できます。
自分の画風に合った体型にすることも可能ですが、そうすると適用したポーズの見え方が頼りなくなる……なんてこともしばしばあります。
ポーズ素材はそのまま使うより、体型に応じて調整することをおすすめします。
アニメーションコントローラーを用いて見栄えのいいポーズになるよう調整しましょう。
特に腕や脚を組んでいたり、手を脚に置いていたりするポーズは体型による誤差が大きく出るので、都度修正が重要です!!
ポーズによっては持ち物や装備品を含めたアタリを取りたい場合もあるでしょう。
そんな時は3Dプリミティブが便利です。
「素材」パレットの「3D」→「プリミティブ」タブに様々な形状が収録されているので、ドラッグ&ドロップでキャンバスに反映させましょう。
3Dプリミティブはマニピュレータを操作することで大きさや長さを自在に調整することができます。
例えば「角柱」は細長く伸ばし、回転させて手のひらに収まるよう移動させることで武器のアタリとして使えます。
他にも縮小し、コピー&ペーストして両方のかかとに移動させることでハイヒールの目安にもなります。このプリミティブを基準にかかとの角度を再び調節すれば、きれいに接地したハイヒールのポーズも簡単に作れます。
その他にも3Dプリミティブはアイデア次第で様々なことができます。
「ちょっと使えるポーズ集」に収録されている各ポーズのサムネイルにも使用例として適用しているので、参考にしてみてください。
ポーズの最終調整が完了したら、画像解像度を変更しましょう。
3Dオブジェクトが反映されているレイヤーは、選択されていなければラスター画像のように振る舞います。
それでも動作が重くてかなわん!!という場合は、レイヤーを右クリックして「ラスタライズ」を選択することで完全にラスター画像にしてしまえます。
ただしそうするとキャンバス外の領域が切り取られてしまう上、後からポーズの修正も利かなくなるので、あくまでも最終手段です。
あとは3Dデッサン人形を参考に立ち絵を描くだけ!!
おつかれさまでした!!
ぜひこのTIPSを参考にデッサン人形やポーズ素材を活用してくださいね!!
そしてゆくゆくは素材を出品して他のクリエイターを手助けしましょう!!
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