5.装飾・仕上げ
フライヤーに入れる装飾模様を作成し、仕上げをします。
左右対称の装飾を作成する場合、[特殊定規]ツールの[対称定規]を使うこともありますが、今回は[ファイルオブジェクト]を使用した装飾の作成方法を解説します。
<ファイルオブジェクトとは?>
[ファイルオブジェクト]は、通常のレイヤーとは異なり、元の画像や動画などのファイルが維持されたまま、CLIP STUDIO PAINTからレイヤーとして参照できる機能です。
別のファイルでパーツを作成していても、完成ファイルにレイアウトして確認しながら進められるため、要素がたくさんある作品を制作する場合に便利です。
[ファイルオブジェクト]について詳しくは、以下のユーザーガイドで解説しています。
[1]装飾用のキャンバスを作成する
(1)はじめに、フライヤーに入れたい装飾のサイズよりも少し大きいくらいのキャンバスを作成します。
今回は、横200mm×縦50mm、350dpiのキャンバスにしています。
背景が透明のキャンバスにするため[用紙色]のチェックは外しておきます。
(2)左右対称の模様を作成するときは、キャンバスの中心位置の目安があるとわかりやすいため、作成したキャンバスにグリッドを設定しておきます。
[表示]メニュー→[グリッド]を選択してグリッドを表示してから、[表示]メニュー→[グリッド・ルーラーの設定]を選択して[グリッド・ルーラー設定]ダイアログを表示します。
ダイアログで以下のように設定します。
・[グリッド・ルーラーの原点]→[中央]
・[グリッド設定]→[間隔]→「20.00mm」 ※任意の間隔でかまいません。
・[グリッド設定]→[分割数]→「1」
[OK]をクリックすると、プレビュー表示されていたグリッドが確定されます。
※上図では、講座用にグリッド位置がわかりやすいように赤い色で表示していますが、初期設定では灰色です。
グリッドの色は[ファイル]メニュー→[環境設定]→[定規・単位]から任意の色に変更できます。
[2]下描き・ファイルオブジェクトを配置する
(1)作成したキャンバスの右半分に装飾の下描きを描きます。
下描きに使用するツールは[鉛筆]ツールなど、自分が描きやすいものでかまいません。
(2)下描きを描いたレイヤーを[ファイルオブジェクト]に変換します。
[レイヤー]メニュー→[ファイルオブジェクト]→[レイヤーをファイルオブジェクトに変換]を実行します。
今回は、[範囲]を[キャンバスサイズ]にしておきます。
変換の工程では、レイヤーをclipファイルに保存するウィンドウが表示されます。
わかりやすい名前を付けて保存しましょう。ここでは、「装飾.clip」にしています。
[保存]すると、以下のようなメッセージが表示されるので、[OK]をクリックします。
変換が終わると、[レイヤー]パレット上に「装飾」ファイルオブジェクトレイヤーが作成されます。
(3)[レイヤー]パレットに作成された「装飾」ファイルオブジェクトレイヤーを選択して複製します。
また、元の下描きレイヤーを残していた場合は非表示にしておきます。
(4)複製した「装飾のコピー」ファイルオブジェクトレイヤーを[オブジェクト]ツールで選択し、[ツールプロパティ]パレットの[左右反転]をクリックして左右反転させます。
下図のような左右対称の模様が表示できました。
※Ver.1.9.1から、操作ハンドルのデザインが変更されています。
現在の講座内の画像には、Ver.1.9.0以前の画面を使用しています。
[3]連続曲線を使用した装飾描画
(1)[レイヤー]パレットの「装飾」ファイルオブジェクトレイヤーを選択し、[レイヤー]メニューから[ファイルオブジェクト]→[ファイルオブジェクトのファイルを開く]を選択して、参照元になっている「装飾.clip」ファイルを開きます。
(2)下描きを参考に、装飾の線画を描いていきます。[レイヤー]パレットに、清書用の[ベクターレイヤー]を作成します。
ベクターレイヤーは、[レイヤー]パレット上部の[新規ベクターレイヤー]アイコンか、または[レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[ベクターレイヤー]から選択して作成できます。
「下描き」レイヤーは、[レイヤープロパティ]パレットで[レイヤーカラー]を水色に設定しておくと見やすくなります。
描画するツールは、ペンやブラシツールではなく、[図形]ツール→[直接描画]→[連続曲線]を使用します。
[連続曲線]には、[直線][スプライン][2次ベジェ][3次ベジェ]の4種類があります。
[連続曲線]ツールを使い慣れていない場合は、直観的に線が描ける[スプライン]を使用するとよいでしょう。Illustlatorの[パス]と同じように描画したい場合は、[3次ベジェ]を選択します。
※[2次ベジェ][3次ベジェ]の使い方について詳しくは、以下のTIPSをご覧ください。
(4)作成した[ベクターレイヤー]が選択されていることを確認したら、[連続曲線]ツールで描画していきます。
線の太い部分は、[ブラシサイズ]を20.0px、細い部分は10.0pxに設定しています。
カーブのポイントになる部分をクリックしながら、線を描いていきます。クリックするポイントを増やしすぎないようにすると、滑らかな線を描くことができます。線の最後でダブルクリックするか、または[Enter]キーを押して確定します。
線はあとから調整できるため、多少ずれても気にしないで進めます。
(5)[オブジェクト]ツールで描いた線をクリックすると、下図のように複数の制御点で構成されていることがわかります。
表示されている緑色の制御点を[オブジェクト]ツールで動かして、線を微調整できます。
【POINT】
ベクターレイヤーに描いた線は、[オブジェクト]ツールで後から位置を調整したり、簡単に線の幅や線の種類・色を変更したりできるため、このような装飾を作成する際はベクターレイヤーで描いておくのがおすすめです。
拡大・縮小しても線が荒れないため、ストックしておけば、他の作品でもアレンジして使うことができます。
(6)その他の線や細い線を描き足して、以下のように線画ができました。
(7)最後に、線の中を塗りつぶします。
[ベクターレイヤー]では塗りつぶすことができないため、通常のラスターレイヤーを新規作成し、[塗りつぶし]ツールの[他レイヤーを参照]サブツールで塗りつぶします。
※塗りつぶし作業をする際は、「下描き」レイヤーを非表示にしておきます。
(8)これで装飾部分が完成しました。[ファイル]メニュー→[保存]から、ファイルを保存しておきます。
[4]装飾を結合してグランジ加工する
[2]で作成したキャンバスに戻り、[3]で清書した装飾を反映させます。
(1)[レイヤー]パレットの「装飾」ファイルオブジェクトレイヤーを選択し、右クリックで表示されるメニューから[ファイルオブジェクト]→[すべてのファイルオブジェクトを更新]をクリックします。
「装飾」ファイルオブジェクトレイヤーが、下描きから清書した状態に更新されます。
【POINT】
本講座では、装飾部分の制作が終わってから[ファイルオブジェクトを更新]していますが、下描きや途中段階など、都度更新しながら進められるのが[ファイルオブジェクト]の利点です。
途中段階で確認しておけば、「レイアウトしてみたら思っていたのと違った」「思っていたよりも小さい」ということを防ぐことができます。
(2)[レイヤー]パレットで、「装飾」と「装飾のコピー」ファイルオブジェクトレイヤー以外のレイヤーが非表示になっているのを確認したら、[レイヤー]メニュー→[表示レイヤーのコピーを結合]を選択して結合したレイヤーを作成します。
(3)結合したレイヤーを[選択範囲]メニュー→[すべてを選択]で選択したら、第4回で作成したキャンバスにコピー&ペーストします。
(4)[レイヤー]パレットで、ペーストした装飾のレイヤーを選択し、[レイヤー移動]ツールや、[編集]メニュー→[変形]→[回転・縮小・拡大]を使用して、フライヤー上にレイアウトします。
(5)場所や大きさが確定したら、[レイヤー]メニュー→[レイヤーから選択範囲]→[選択範囲を作成]をクリックして、描画部分の選択範囲を作成します。
選択範囲が作成できたら、装飾のレイヤーは非表示にしておきます。
(6)タイトルロゴを作成した「ロゴ」フォルダーのレイヤーマスクを選択し、[編集]メニュー→[塗りつぶし]で選択範囲を塗りつぶします。
塗りつぶすと、下図のように装飾の模様がタイトルロゴと同じようにテクスチャが反映された状態になります。
必要があれば、タイトルロゴと同じ様に可読性の調整を行います。
[5]仕上げ
最後に、全体を見て調整を行います。フライヤーのメイン要素であるタイトルロゴがもう少し目立つように、文字の下にブラシで色を塗ります。
(1)「ロゴ」フォルダーとテキストのレイヤーの下に黒の[べた塗りレイヤー]を作成し、第4回と同様にレイヤーマスクを設定しておきます。
作成した[べた塗りレイヤー]は、「可読性」と名前を変更しました。
(2)「可読性」レイヤーの合成モードを[焼き込みカラー]に変更します。
(3) [筆]ツール→[墨]→[濃い滲み]でレイヤーマスクを塗ります。塗る前に[ツールプロパティ]を調整しておきます。
・[不透明度]→30%
・[透明度影響]→10
・[明度影響]→0
・[ドラッグ後に処理]→ON
・[ぼかし幅]→7.0
(4)「可読性」レイヤーのレイヤーマスクに、黒色で描画していきます。
▲左は塗った部分がわかりやすいように「可読性」レイヤーのみを表示した状態。右はすべてのレイヤーを表示した状態。
(5)これで完成です。
【補足】作成したフライヤーのデータの書き出しについて
今回の作例では、塗り足しを上下左右それぞれ3mm設定しているため、A4ピッタリのサイズで描きだす場合は[書き出し設定]ダイアログの[出力範囲]を[トンボの内側まで]に設定してから書き出します。
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