かっこいい魔法陣を描くよ!
1、はじめに
魔法エフェクトと言えば魔法陣ということで、CLIP STUDIOの機能を利用した、かっこいい魔法陣の描き方を紹介していきます。
CLIP STUDIOには作画やデザイン作業を助けるためのさまざまなツール機能があります。画像素材レイヤー、同心円定規、対象定規など。これらを活用して、厨二心の満たされる、オリジナル魔法陣を作っていきましょう。
2、魔法陣のイメージを整理する
まずは描きたいもののイメージを整理します。
「かっこいい魔法陣を描きたい!」といざ取り掛かっても、今ひとつ目標が曖昧模糊としてどこから手をつけていいか分からない、という人は多いのではないでしょうか?ぼんやりと多くの人が「こんな感じ」と思っているであろう魔法陣の要素を整理すると、以下のようになるのではないかと思われます。
①何か円が重なったような形
②魔法文字のようなものがちりばめられている
③中央に神秘的なシンボルがある
これらのポイントを一つ一つ解決していきましょう。
3、同心円定規で外形を作る
まずは①の『何か円が重なったような形』、これは同心円定規で解決します。
任意のキャンバスを開き、同心円定規を作ります。
同心円定規を作りには、ツールパネルの三角定規アイコンをクリックし、サブツールパネルの特殊定規を選択。ツールパネルから定規の種類を同心円定規にします。
その状態でキャンバス上の定規を作りたい位置をクリック、ドラッグすると、指定した位置を中心に円をかける定規が出来上がります。
好みのブラシでぐるぐると円を重ねましょう。なんとなく、欲しい魔法陣のイメージに近づいてきたでしょうか。
4、魔法文字ブラシを作る
次に②の『魔法文字のようなものがちりばめられている』を解決するために、魔法文字ブラシを作ります。工程は簡単です。
①任意のキャンバスを作り、一行デタラメな文字を書きます。グリッドを表示するとやりやすいです。
②描いた文字列の半分ほどを選択肢、カット&ペーストします。
③上下に分かれたレイヤーを動かして、左右を入れ替えます。(わかりやすいように上のレイヤーの色を変えています)カーソルボタンを使って、上下にずれないようにしてください。
左右を入れ替えたところ。ちょうど一行に揃うように位置を調整し、二つのレイヤーを統合します。これで非常にシンプルですが、左右に方向にシームレスな画像の単位が出来上がります。
レイヤーの変換→画像素材レイヤーにし、左右方向にタイリングして様子を見ます。綺麗に連続した魔法文字になっているでしょうか?
できた画像を素材として登録します。この時「ブラシ先端形状として使用」にチェックを入れます。そしてリボンブラシに適用すると、魔法文字ブラシが出来上がります。
魔法陣の他、呪文の詠唱表現などにも使えます。
作ったブラシを同心円定規に使ってみます。だいぶそれらしくなってきました。
この魔法文字ブラシには、フォントを打ち込んでラスタライズした画像を使うこともできます。フリーのルーン文字フォントを配布しているページなどもあるので(ライセンスの内容には注意してください)欲しいイメージによっては、そういったものを使ってもいいでしょう。
いろんなタイプの魔法文字を作ってブラシにしておくと便利です。ヨーロッパの中世写本などを参考に、ある程度規則性を持った『文字っぽいもの』を書くとそれらしくなります。
この時注意したいのが、参考元に自分とは異なる文化圏の文字やイメージを使うとき、自分にとっては単に神秘的な記号に見えても、その文化圏の人には何か意味を持ってしまう場合があることです。
私は日本語の文化圏に生まれ育っているので、時々見かけるのが、漢字を記号的イメージとして使った結果、作者が意図していないであろう、奇妙なものになってしまっている作品です。必ずしも悪意を感じるわけではないのですが、その違和感がノイズになってしまい、作品自体が鑑賞しにくくなってしまうことがよくあります。
もちろん日本人が描く作品にもそういったことは多々起きているのだろうとは思います。
その作品を作る意図、公開する範囲や、どの程度歴史上、文化上の事実に取材しているか、などにより対応が変わってくる点だとは思うのですが、個人的には趣味の範囲でファンタジー風のイメージを描きたい場合には、異なる文化圏の文字やイメージを「そっくりそのまま」使う事はせず、ぱっと見て意味が取れないほどに形を変えるか、それらしいものを自分で作ることにしています。
5、対称定規でシンボルを作る
次に魔法陣の中央に配置するシンボルを作っていきます。五芒星や六芒星など幾何学的な図形が定番でしょう。こうした作図には対称定規が便利です。
ここでは定番の五芒星の描き方を例に、対称定規の使い方を説明します。
まず対称定規の作り方です。ツールプロパティから三角定規のマークをクリック、サブツールパネルから対称定規を選択します。ツールプロパティパネルで、対称軸の本数と、線対称にするかどうか選択します。線対称にチェックを入れない場合は回転対称になります。
ここまでの設定をした上で、キャンバスの任意の位置をクリックして中心を決め、軸の方向にドラッグすると対称定規が作成されます。垂直方向に合わせた定規を作りたい場合は、shift キーを押しながら縦方向にドラッグします。
対称軸の本数が同じでも、線対象にチェックを入れるかどうかで描ける図形は変わってきます。
まず対称軸が2本、線対称にチェックを入れた場合。作成された定規の線を軸に、ちょうど向き合うように対称の線が描画されます。この設定は食器や壺などの形を取るのに便利です。
対称軸が2本、線対象にチェックを入れなかった場合。定規の中心を起点に対称軸をはさんで回転したような図形が描けます。飛行機のプロペラの形などを描くのに便利です。
使い慣れて、描きたいものに対して適切な設定が出来るようになると、とても便利なツールです
それでは五芒星を描くのに必要な設定をしていきます。
任意の大きさで、正方形のキャンバスを作ります。
グリッドを表示して中心を見つけておきます。
中心に同心円定規を作り、円を描きます。この円が描く五芒星の大きさの目安になります。同心円定規を非表示にして、このレイヤーは下書きにします。
キャンバスの中心から対称定規を作ります。対称軸は5本です。軸の数が奇数の場合、線対称のチェックは自動的に外れて回転対称になります。ここでは対称軸を強調するためにピンクの線でなぞっています。
これで五芒星を描くための準備ができました。
では五芒星を描いていきます。
①ベクターレイヤーを作り、下書の円と、対称軸の交点に注目します。直線ツールで一つ飛ばした点同士を結びます。この時点でシンプルな一筆書きの五芒星が出来上がります。
②ベクター線つなぎで五芒星の各頂点をつなぎます。その方が角が綺麗に出ます。
この時点で完成にすることも出来ますが、せっかくのでもう少し装飾を加えましょう。
③対称軸上で、少し内側の点に注目し、同じように一つ飛ばしに直線でつなぎます。こちらの頂点もベクター線つなぎでつないでおきましょう。
④ベクター消しゴムの設定を「交点まで」にした状態で、赤丸で囲んだ位置の重なりを消します。二重線の輪郭が絡み合ったような五芒星が出来上がりました。
同じ手順で内側にもう一つの五芒星を重ねた状態。
塗りつぶしを加えた状態。様々なアレンジを加えて、出来上がったシンボルはそれぞれに素材登録しておきます。
もう一つ、対称軸10本、線対象にチェックを入れた対称定規を使う方法があります。
この場合は、適当にぐりぐりと描くだけで、レースペーパーのような星形を作ることができます。
線対称と回転対称を組み合わせる、描いたモチーフを回転して重ねる、塗りつぶしや有機的な装飾を加える……などなどのアレンジで無数のタイプのモチーフを作ることができます。気に入りのものが出来たならそれそれ素材登録しておきましょう。
ちなみに六芒星の場合は、対称軸6本線対称のチェックを外した対称定規、または対称軸12本で線対称の対称定規で描くことができます。
対称軸は16本まで作ることが出来ますので、どんな図形を書く事ができるか、自分のアレンジを見つけてください。
6、魔法陣を完成させる
ここまで出来上がったらあとは簡単です。
同心円定規と魔法文字で作った土台にどのモチーフを載せるのかの組み合わせ次第。モチーフのストックが増えるほどに無数のバリエーションができます。
魔法陣自体も画像素材としてストックしておくと良いでしょう。
7、その他のアレンジ
いくつか他のタイプのアレンジを紹介します。
円形の土台に対称図形のモチーフを載せたタイプを作るのに慣れてきたら、一部対称を外してみたり、複数のタイプの図形を組み合わせてみると凝った印象になります。
中央のモチーフは、星や太陽など、天体をイメージしたものが定番だと思いますが、ここではドラゴンのような生物が絡み合ったところをデザインしています。4本軸、回転対称の対称定規を使ってざっくりとデザインし、書き起こしています。
ストックした魔法陣を組み合わせて発光させたところです。
神秘的なイメージを演出するモチーフを描くためには色々なものが参照できます。私自身はケルト文様や、イスラム建築の装飾、錬金術のモチーフなどをよく眺めます。ただそれらを参照する場合は、文字を使う場合と同様の配慮が必要かと思います。
作品の内容や、発表する場所などにもよりますが、各国の宗教的なモチーフや、民族的なデザインを参考にする場合、たとえ署名のない古代の作品であってもそっくりそのまま流用することは避けたほうが無難でしょう。各自の必要に応じて、参考にするものとの向き合い方は考えて見てください。
8、おわりに
いかがでしょうか?皆様の理想の魔法陣を描くヒントになれば幸いです。
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