フキダシをつくろう!-フキダシツールの使い方-
マンガならではの表現「フキダシ」を作る、フキダシツールの使い方とフキダシの小技を紹介します。
[1]CLIP STUDIO PAINTのフキダシ
フキダシはベクター線と内部の塗り(下図では白色で塗りつぶされています)で構成されています。内部の塗りは色や不透明度を自由に設定でき、非表示にしたりトーン化したりすることもできます。また、フキダシを作成するツールも自由な曲線やフリーハンドで描くものなどが用意されています。下図の例は[オブジェクト]ツールで線画部分を選択している状態です。
CLIP STUDIO PAINTでマンガのフキダシとして利用できるものは、大きくわけて「■1.フキダシ(ツールで作成)」・「■2.フキダシ(素材)」・「■3.フラッシュ」の3種類があります。
■1.フキダシ系ツールを使用したフキダシの作成手順
[楕円フキダシ]サブツールを使って、フキダシの作成手順を紹介します。
①文字(テキスト)を入力する
[テキスト]ツールでテキストを打ち込みます。
②フキダシを作る
[楕円フキダシ]ツールでフキダシ本体を作成します。作成したフキダシは、[フキダシレイヤー]に描画されます。
※[楕円フキダシ]サブツールは初期状態の場合、[フキダシ]ツールの[フキダシ]に格納されています。
③フキダシのしっぽを作る
[フキダシしっぽ]ツールでフキダシから突き出た「しっぽ」部分を作成します。
※[フキダシしっぽ]サブツールは初期状態の場合、[フキダシ]ツールの[フキダシ]に格納されています。
【POINT】
フキダシとテキストはどちらが先でもOK
フキダシとテキストはどちらを先に作成しても大丈夫です。フキダシまたはテキスト用のレイヤーが作成されます。同じレイヤー上でテキストやフキダシを追加すると同じレイヤーでまとめて管理できます。
④フキダシを調整する
フキダシを作成した後は[オブジェクト]ツールでフラッシュをクリックして選択すると描くハンドルが表示されます。それぞれのハンドルを調整して大きさや縦横比を変更します。
作成前の[フキダシ]ツール使用時や、作成後の[オブジェクト]ツールでフキダシを指定中のどちらも[ツールプロパティ]や[サブツール詳細]パレットで設定を調整できます。
フキダシ系ツールの設定について詳しくは、 [2]フキダシツールの使い方で解説しています。
■2.フキダシ素材のフキダシ
フキダシはツールで作成するほかに、CLIP STUDIO PAINTにあらかじめ用意されいてるフキダシ素材を[素材]パレットの[漫画素材]→[フキダシ]から選択してキャンバスに貼り付けて使用することができます。
キャンバスに貼り付けたあとの操作は、フキダシツールで作成したフキダシと同様です。
■3.フラッシュのフキダシ
フラッシュはベクター線の効果線部分と内部の塗り(下図では白色で塗りつぶされています)で構成されています。フキダシと同じく、内部の塗りは色や不透明度を自由に設定でき、非表示にしたりトーン化したりすることができます。
フラッシュは[ツール]パレット上では[フキダシ]ツールに格納されていますが、機能は[集中線]ツールの仲間です。
※[フラッシュ]サブツールは初期状態の場合、[フキダシ]ツールの[フラッシュ]に格納されています。
フラッシュを作成する手順①②は通常のフキダシと同じですが、作成されたフラッシュは集中線レイヤーに描画されるため、フキダシツールで作成したフキダシとは操作方法が異なります。
①フラッシュを作る
[サブツール]パレットの[フラッシュ]を使ってフラッシュを作成します。
②テキストを打ち込む
[テキスト]ツールでテキスト(文字)を打ち込みます。[フラッシュ]ツールは[フキダシ]ツールと違ってテキストレイヤーとして統合せず、別々の状態のまま利用します。
③フラッシュの調整をする
フラッシュを作成した後は[オブジェクト]ツールでフラッシュをクリックして選択すると描くハンドルが表示されます。それぞれのハンドルを調整して大きさや縦横比を変更します。
作成前の[フラッシュ]ツール使用時、作成後の[オブジェクト]ツールでフラッシュの指定時のどちらも[ツールプロパティ]や[サブツール詳細]パレットで効果線の長さや線の密集度などを調整することが可能です。これらの使い方は[集中線]ツールと同様です。
[2]フキダシツールの使い方
[フキダシ]ツールのサブツールを使ったフキダシの作成方法を紹介します。
■1.楕円フキダシ
[楕円フキダシ]はドラッグアンドドロップで始点と終点の2点を指定して、楕円の比率と大きさを決定します。[Shift]キーを押しながらドラッグすると正円を描画できます。
サブツール[楕円フキダシ]の[ツールプロパティ]です。
①[線の色][塗りの色]
フキダシの線画と塗りの色を変更します。最初にフキダシを作成するときは、キャンバスの作成時、またはメニュー[編集]→[キャンバス基本設定]またはメニュー[ページ管理]→[ページ基本設定](CLIP STUDIO PAINT EXのみ)で設定する[基本表現色]によって作成できる色がグレーや白黒のみに制限されてしまうことがあるので注意しておきましょう。
②[追加方法]
既にテキストレイヤーを選択している場合、[選択中のレイヤーに追加]を選択しておくと同じレイヤーにフキダシを追加できます。
③[トーン化]
フキダシの作成時にレイヤーの[レイヤー効果]→[トーン]をONにして[①塗りの色]で設定した色をトーン化します。トーン化する場合は⑥アンチエイリアスを[無し]に設定しておきます。
④[図形]
フキダシの形を選択します。図形が変更されても同様の手順で作成できます。
⑤[ブラシサイズ]
線の太さを調整します。
⑥[アンチエイリアス]
アンチエイリアスを付加するかどうかを設定します。
⑦ブラシ形状
ブラシ先の形状を選択します。
[ペン]/[点線]/[波線]それぞれの描画例です。
■2.曲線フキダシ
曲線を作成して自由な形のフキダシを作成します。作成方法は①[曲線]の選択内容で変化します。
①[曲線]
線を作成する手法を選択します。
・[直線]
ポイントをクリックするたびにポイント同士の直線が描かれます。最後のポイントでダブルクリックして確定します。
・[スプライン]
ポイントをクリックして、そこを通る曲線が描かれます。最後のポイントでダブルクリック(またはEnterキー)して確定します。
・[2次ベジェ] [3次ベジェ]
2次ベジェ、3次ベジェを使ってフキダシを作成します。
②角をとがらせる
線に角がある場合、拡大するとブラシの形を反映して丸くなる場合があります。こういった角で線をとがらせるかどうかを選びます。
①②以外の[ツールプロパティ]の項目は[楕円フキダシ]のものと同様です。
■3.フキダシペン
[ペン]ツールで描くようにフキダシを作成します。筆圧にも対応しているので、タッチを活かした描画が可能です。
設定項目は[ペン]ツールと同様に線の太さや筆圧について調整する項目があります。
①ブラシサイズ
[ペン]ツールと同様、ブラシサイズの変更で線の太さを変更します。
②ブラシサイズコントロール
アイコンをクリックするとブラシサイズに影響させる要素を調整します。[ペン]ツールと同様に筆圧を効かせたい場合は[筆圧]のチェックをONに。筆圧を反映させたくない場合はすべてのチェックをOFFにします。
③[後補正]
線を滑らかに補正します。
■4.フキダシ作成時の設定:その他
[フキダシ]ツールの[サブツール詳細]には[ツールプロパティ]に表示されていない項目があります。その他の設定について紹介します。
①[線・塗り]
フキダシの線と塗りを描画するか選択できます。フキダシの内部を透かせて、文字と画像を重ねるときはフチをつけて読みやすくする工夫をしておくといいでしょう。
②[追加方法]
・レイヤーを新規作成
・選択中のレイヤーに追加
既にフキダシやテキストがある場所の近くにフキダシを作る場合に、新しいレイヤーにフキダシを作成するかを選択します。
③描画位置のテキストに結合
入力されたテキストの上にフキダシを作成すると同じテキストレイヤーにまとめられます。複数のテキスト/フキダシレイヤーは後から結合して1枚にまとめることもできます。
[3]フキダシしっぽの作り方
フキダシからでているしっぽを作成します。[曲げ方]で[直線]/[折れ線]/[スプライン]から描画方法を選びます。
[曲げ方]
[直線]/[折れ線]/[スプライン]から選択します。
A [直線]直線的なしっぽを作成します。始点1~終点2をドラッグで指定して直線的なしっぽを作成します。
B [折れ線]角のついたしっぽを作成します。角部分を始点1~順にクリックして、最終点ではダブルクリックで確定します。
C [スプライン]曲線的なしっぽを作成します。始点1~順にクリックして、最終点ではダブルクリックして確定します。
[4]フラッシュツールの使い方
サブツールに登録されている設定によって上図のように描画内容が大きく変わります。
フラッシュの作成方法は、[楕円フキダシ]と同じ要領で開始点から終点までドラッグ&ドロップで大きさを設定します。
■1.フラッシュの作成
サブツール[ウニフラ]を使ってフラッシュを作成します。
■2.フラッシュの調整
作成されたフラッシュを調整します。この例では描画したい大きさに対して「線が長すぎる」「線が太い」「内部の空白がない」という状態です。
[オブジェクト]ツールを選択するとフラッシュのパスが表示されます。
■3.線の太さと密度を調整
[ツールプロパティ]でフラッシュの状態を調整します。
・[ブラシサイズ]で線を細くします。
・[線の間隔(距離)]で線の密度を調整します。
線が細くなると線と線の間に隙間が開いてしまうためです。
■4.線の長さを調整
・[長さ]を短くします。
■5.「ギザギザ」の調整
[基準位置をギザギザにする]の項目左側にある[+]マークをクリックして、さらに詳細な設定を行えるようにします。[高さ]の数値を低くして、ギザギザを短くすると雲丹フラッシュらしくなってきました。
■6.フラッシュの大きさを調整する
フラッシュのパスに対して表示されているハンドルを利用して、テキストにあうようにフラッシュの大きさを調整します。
[5]フキダシ/フラッシュの応用
■1.複数のフキダシを合成する(※フキダシのみ)
1枚のレイヤーにまとめられた複数のフキダシは、重なった部分が合体します。分離された状態で表示するのであれば、レイヤーを別々にしておき、合成したい場合には同じレイヤーに作成します。
すでに作成した複数あるフキダシのレイヤーをまとめる場合は、まとめたいレイヤーを選択した状態で [レイヤー]メニュー→[選択中のレイヤーを結合]や[下のレイヤーと結合]を利用します。
■2.フキダシをコマ枠に収める-レイヤーマスクの活用
作成したフキダシやフラッシュはそれぞれ専用のレイヤーで管理されます。このレイヤーは[ペン][消しゴム]ツールなどの描画系のツールは使えません。一部を消したい場合はマスクを利用します。また、[レイヤー]メニュー→[ラスタライズ]でレイヤーをラスタライズすれば、直接描き足したり消したりすることができるようになりますが、あとから編集することはできなくなります。
フキダシやフラッシュツールを使うと、コマ枠からはみ出してしまうことがあります。その際は[マスク]を利用すると便利です。
※レイヤーマスクについて詳しくは、「レイヤーマスクを使いこなす1」をご覧ください。
① 表示する範囲を指定
コマ枠の外側と人物にはみ出さないようにマスクします。[自動選択]ツールなどで範囲を指定します。
[選択範囲]メニュー→[クイックマスク]を使用すると、[塗りつぶし]ツールや描画系ツールなどで選択範囲を作成できるため便利です。
② レイヤーマスクを作成
選択範囲を作成したら[レイヤー]メニュー→[レイヤーマスク]→[選択範囲外をマスク]を選び、レイヤーマスクを作成します。選択範囲部分を隠したい場合は[選択範囲をマスク]を選びます。作成されたマスクは[レイヤー]パレット上にもサムネイルが表示され、確認できます。
【POINT】
マスクは、[レイヤー]メニュー→[レイヤーマスク]→[マスク範囲を表示]で表示できます。
マスクの表示は以下の操作でON/OFFを切り換えられます。
・マスク部分の色表示:[ALT]+マスクサムネイルをクリック
・マスクそのもののON/OFF切り換え:[SHIFT]+マスクサムネイルをクリック
③フラッシュがマスクされた状態で完成
作成したフラッシュが一部分マスクされて表示されない状態になれば完成です。この後フラッシュのレイヤーをラスタライズ(画像の統合など)しなければ、あとから調整することもできます。
・複数のフラッシュをマスクする場合
[フキダシ]ツールで作ったフキダシは1枚の専用レイヤーに複数のフキダシを登録できますが、[フラッシュ]ツールで作成したフラッシュは1つでレイヤーを1枚ずつ利用しています。
複数のフラッシュに同じマスクを適用したい場合は、複数あるフラッシュのレイヤーをフォルダー化してフォルダーにマスクを適用します。
コマ枠を作成する際に[コマフォルダー分割]を利用するとコマごとにマスクが作成されるのでフキダシやフラッシュを利用するときに便利です。コマ枠フォルダー内にフキダシやフラッシュを作成すれば、コマ枠外にはみ出した部分はマスクで隠されます。
※[コマフォルダー分割]サブツールは初期状態の場合、[コマ枠]ツールの[コマ枠カット]に格納されています。
これでフキダシツールの使い方の解説は終わりです。実際にフキダシを作る際は、「テキストツールの使い方」も合わせてご覧ください。
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