トーンの使い方・グラデーション(モノクロ原稿)編

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モノクロ原稿制作時における、[グラデーションレイヤー](トーン)の使い方について解説します。

 

[1] グラデーションレイヤーの基本的な作成方法

グラデーションは[グラデーション]ツールを使用してラスターレイヤー上に直接描画することもできますが、今回は[グラデーションレイヤー]について紹介します。

[グラデーションレイヤー]は、直接描画するグラデーションと見た目は同じですが、あとからグラデーションの色やサイズ、形状などの設定を[オブジェクト]ツールで詳細に変更できる便利なレイヤーです。

 

[グラデーションレイヤー]を作成する方法は、以下の2通りです。

 

 

 

■[A]レイヤーメニューから作成する

 

(1)[レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[グラデーション]を選択します。

 

(2)キャンバスに[グラデーションレイヤー]が作成されます。[レイヤー]パレットでは、選択中のレイヤーの上に作成されます。

 

作成時は垂直のグラデーションですが、角度や形などは [オブジェクト]ツールの[ツールプロパティ]で後から変更できます。

※[オブジェクト]ツールについては[4]で詳しく紹介します。

 

 

 

■[B][グラデーション]ツールで [グラデーションレイヤー]を作成する

 

(1)[ツール]パレットで[グラデーション]ツールを選択します。

 

(2)[サブツール]パレットで使用したい設定を選択します。ここでは、「描画色から背景色」を選択します。

 

(3)[ツールプロパティ]パレットの[描画対象]項目で[グラデーションレイヤーを作成]を選択します。

 

(4)キャンバス上で[グラデーション]ツールを使用すると、[グラデーションレイヤー]が作成されます。

 

(5)[グラデーション]ツールを使用する際のドラッグの向きによって、作成されるグラデーションの角度が変わります。グラデーションの角度は、 [オブジェクト]ツールの[ツールプロパティ]で後から変更できます。

 

【POINT】[トーンレイヤー]を[グラデーションレイヤー]に変換する

[レイヤー]パレットで[トーンレイヤー]を選択した状態で、[オブジェクト]ツールの[ツールプロパティ]パレットを操作します。

[ツールプロパティ]の[塗りつぶし]の項目を[べた塗り]から[グラデーション]に変更します。

 

すると、[トーン]レイヤーが[グラデーションレイヤー]に変わります。反対に、グラデーションをべた塗りのトーンに変更することもできます。

 

[2]グラデーションの描画色を選択する

[1]で作成される[グラデーションレイヤー]の色は、[カラー]パレットなどに表示されている[描画色](下図の赤枠内色)と[背景色] (下図の青枠内色)によって自動的に設定されます。

色が決まっている場合には、あらかじめ描画色と背景色を設定してからグラデーションレイヤーを作成するとよいでしょう。

 

キャンバスの基本表現色が[モノクロ]や[グレー]の場合には、[描画色]や[背景色]に白・黒・グレー以外の青や赤などのカラーを設定すると、[レイヤープロパティ]パレットの[濃度]の設定に従って、自動的に白・黒・グレーに変換されて表示されます。

 

なお、[濃度]の設定を[画像の色を使用]に設定している状態では、[グラデーションレイヤー]は不透明な状態で作成され、背面のレイヤーが隠れます。

 

背面のレイヤーを透過したい場合は、[レイヤー]パレットで[グラデーションレイヤー]の[合成モード]を[乗算]などに変更するか、または[レイヤープロパティ]パレットの[濃度]の設定を[画像の輝度を使用]に変更します。

 

[レイヤープロパティ]について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

 

[3]グラデーショントーンを部分的に貼る

[1]の項目で説明した基本的な方法で[グラデーションレイヤー]を作成した場合は、キャンバスの全面に[グラデーションレイヤー]が作成されます。

 

必要とする場所にだけ部分的に[グラデーションレイヤー]を描画したいという際には、下記の方法で作成します。

 

 

 

■[A]選択範囲を作成してからトーンを貼る

 

(1)[グラデーションレイヤー]を貼りたい場所に、[自動選択]ツールなどで選択範囲を作成します。ここでは、女の子の髪部分にグラデーショントーンを貼りしたいと思います。

※下図では選択範囲がわかりやすいように髪部分をクイックマスク(赤)で表示しています。

 

(2) [レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[グラデーション]を選択します。

 

(3)選択範囲の縦幅に合わせて、[グラデーションレイヤー]が作成され、グラデーショントーンが貼られました。

 

 

 

■[B] グラデーションレイヤーのマスクの内容を消去した後で、ペンなどで塗るように貼る

 

(1) [レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[グラデーション]を選択し、いったん、キャンバスの全面にグラデーションレイヤーを作成します。ここでは、背景の白い部分にグラデーションで模様を付けようと思います。

 

(2)[レイヤー]パレットで、作成された[グラデーションレイヤー]の[マスク]のサムネイルをクリックして選択します。

 

※[レイヤーマスク]について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

 

(3)[編集]メニュー→[消去]を実行するか、または[Delete]キーをクリックし、全面に[マスク]をかけます。

※初期の全面にグラデーションが表示されている状態は、マスクがかかっていません。

 

(4)すると、[レイヤー]パレット上では[グラデーションレイヤー]が存在しているものの全面がマスクされているため、キャンバス上ではグラデーションが消えたように見えます。

 

(5)グラデーションを表示したい場所に、[自動選択]ツールなどで選択範囲を作成します。

※下図では選択範囲がわかりやすいようにクイックマスク(赤)で表示しています。

 

(6)その後、[レイヤー]パレットでグラデーションンレイヤーの[マスク]の側のサムネイルが選択されていることを確認し、[ペン]ツールや[デコレーション]ツールなどの描画系ツールの[描画色]か[背景色]で描画します。

描画した部分のマスクが削られて描画部分のグラデーションが再び表示されます。

 

(7)反対に、すでに表示されている部分の[グラデーションレイヤー]の[マスク]に[消しゴム]ツールや描画系ツールの[透明色]で描画すると、描画した範囲にマスクがかかります。これを利用することで、トーンを削るような表現ができます。

下図では髪のツヤ部分をマスクしました。

 

【POINT】

[グラデーションレイヤー]を選択した状態で、[レイヤープロパティ]パレットの[マスクの表現]→[階調]の設定を[あり]にすると、ぼかしの効いた表現ができるようになりますが、この場合、完成するデータは[モノクロ]にはならず、[グレー]になります。

 

さらに、[階調あり]の[マスク]に[エアブラシ]などの水彩やアンチエイリアスのかかったツールで描画すると、網点自体がグレー色になってしまうため、印刷用のデータとしては不都合が出ることがありますので注意しましょう。

 

[4][オブジェクト]ツールで移動と回転、サイズ変更する

[グラデーションレイヤー]は、 [操作]ツールの[オブジェクト]で柄の移動や回転、描画するサイズの変更などをあとから簡単に変更できます。

 

 

 

■[A]グラデーションの移動

 

[オブジェクト]ツールでグラデーションが描画されている範囲をドラッグすると、トーンの開始点①と終了点②が移動し、それに伴ってグラデーションの描点が移動します。

 

【POINT:[オブジェクト]ツールと[レイヤー移動]ツールの移動の違い 】

[操作]ツールの[オブジェクト]で行うトーン柄の移動と、[レイヤー移動]ツールで行うレイヤーの移動は、似ているようですが微妙な違いがあります。

レイヤーにマスクがある場合に違いがわかりますが、[レイヤー移動]ツールでトーンを移動させようとすると、トーン柄と一緒にマスクも移動してしまうのです。

 

一方、[オブジェクト]で行う場合は、マスクの位置は固定のままでトーン柄だけが移動します。

 

なお、レイヤーとマスクのリンクを解除している場合は、どちらのツールを使用しても結果に差は生まれません。

 

 

 

■[B] グラデーションの向きとサイズの調整

 

[オブジェクト]ツールでキャンバス上に表示されている終了点をドラッグすると、作成後の[グラデーションレイヤー]のグラデーションのサイズや向きを変更できます。

また、終了点②を開始点①に近づけるようにドラッグすると、グラデーションの描画範囲が短くなり、逆に遠ざけるようにドラッグすると、描画範囲は広くなります。

 

 

 

■[C] [オブジェクト](グラデーションレイヤー)ツールの[ツールプロパティ]の詳細

 

[グラデーションレイヤー]の濃度や形状等は、[操作]ツールの[オブジェクト]サブツールを選択し、 [レイヤー]パレットで[グラデーションレイヤー]を選択すると表示される、[ツールプロパティ]で細かく設定できます。

説明を参考に思い通りのグラデーションを作成してみましょう。

ここではグラデーションの設定に関係する項目のみを紹介します。

 

①塗りつぶし設定

[レイヤー]パレットで[グラデーションレイヤー]を選択している場合、自動的に[グラデーション]が選択されています。[べた塗り]を選択すると、[グラデーションレイヤー]が[トーンレイヤー]に変換されます。

 

②カラーバー

設定したグラデーションのプレビューが表示されます。

[1]の項目で解説した方法で[グラデーションレイヤー]を作成した場合は、左端のノード(△)には[描画色]、右端のノードには[背景色]が割り当てられています。

 

ノード(△)をドラッグして左右に動かすと、ノードの位置に従って、グラデーションが変化します。

 

また、ノード(△)は、定規のようなグリッドが表示されている領域をクリックすると自由な位置に追加できます。追加したノードは、画面下に向かってドラッグすることで、消去できます。

 

カラーバーの枠を挟んで、ノード(△)と同じ位置にある□には、設定されている色が表示されています。

 

③詳細設定

[詳細設定]ボタンか、カラーバーの枠内をクリックすると、[グラデーションの編集]ダイアログが表示されます。

 

(A)カラーバー: グラデーションの設定がプレビュー表示されています。

 

(B)ノードを選択:[<]のボタンをクリックすると、現在選択しているノード(△)の左のノードを、[>]のボタンをクリックすると、 現在選択しているノードの右のノードを選択します。

 

(C)グラデーションの反転ボタン: 現在のグラデーションのノード(△)の位置を、すべて左右反転します。

 

(D)ノードを削除: 選択しているノードを削除します。グラデーションにはノードが最低でも2つ必要ですので、ノードが3つ以上ある場合に使用できます。

 

(E)位置:選択しているノードの位置を表した値です。グラデーションの左端が0、右端が100の値になっており、均等にノードを配置したい場合は、この数値を見ながら配置すると便利です。

 

(F)不透明度: 選択しているノードの不透明度の数値です。

[不透明度]の設定値が100に近いほど不透明になり、0に近いほど透明になります。

 

(G)指定色: この項目を選択すると、選択しているノードに、右側のボックスをクリックして指定した色を割り当てます。

 

(H)メイン描画色: この項目を選択すると、選択しているノードに、メイン描画色を割り当てます。カラー系パレットの[描画色]・[背景色]と連動しています。

 

(I)サブ描画色: この項目を選択すると、選択しているノードに、サブ描画色を割り当てます。カラー系パレットの[描画色]・[背景色]と連動しています。

 

(J)混合率曲線: この項目をONにすると、選択しているノードと右側のノード間の色の混合率を曲線で指定できます。曲線で混合率を指定することにより、複数のノードを作成しなくても、複雑な濃度のグラデーションを作成することができます。

 

初期設定では、このような曲線が描かれています。

 

枠内の任意の位置でクリックすると曲線のポイントが追加され、ポイントを枠外へドラッグすると削除されます。ポイントをドラッグすることによって、曲線を自由に変化させることができます。

 

例えば、左端のノードの色が黒、右端のノードの色が白の場合、2つのノードだけでも曲線を変更することで下図のようなグラデーションに設定できます。

 

【POINT】

混合率曲線は、ポイント間でゆるかなカーブを描くように計算されて表示されます。例えば4つのポイントを下図のように配置するとS字状にカーブして表示されます。

鋭角な線を描きたい場合には、鋭角にしたい場所に2つのポイントを配置すると効果的です。下図では、6つのポイントを使用して鋭角な混合率曲線を作成しました。

 

④形状

この項目では、グラデーションの形状とサイズ、角度などを設定できます。

 

(A)直線:グラデーションの形状を直線型に設定します。

 

(B)円:グラデーションの形状を円形に設定します。制御点でサイズを操作すると正円のまま拡大縮小します。

 

(C)楕円:グラデーションの形状を楕円形に設定します。制御点は、横方向、縦方向がそれぞれ対になって変化します。

 

(D)サイズ:グラデーションの描画サイズの数値です。グラデーションの開始点から終了点までの距離を表します。

 

(E)角度:グラデーションの描画角度の数値です。グラデーションの開始点からまっすぐ右側が0度、まっすぐ左側が180度となっていますが、360度表記では示されず、開始点から下半分の領域が正の数値(1~179)、上半分の領域が負の数値(-1~-179)で示されています。形状を[円]にしている場合は角度の設定値は無効です。

 

(F)厚さ:グラデーションの描画の厚さを示す数値です。形状を[楕円]にしている場合にのみ有効です。

 

⑤端の処理

グラデーションをどのように描画するのかを設定する項目です。

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