デコレーションブラシを使いこなす(モノクロ背景)後編

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デコレーションブラシ]ツールは、装飾やキラキラとした光といった画面効果の描画によく使いますが、ブラシの作り方と使い方次第では背景の作画にも力を発揮します。

 

この講座では、次のような「草原と木」のモノクロイラストをデコレーションブラシを使って描画する方法をご紹介します。

 

後編では下の絵の前景の柵、中景の木、遠景の空ブラシの作成方法や使い方を解説します。

前編は以下をご覧ください。

 

デコレーションブラシの作り方の基本について詳細は、以下をご覧ください。

 

講座内で使用しているブラシをCLIP STUDIO ASSETSで無料公開しています。設定等参考にしてください。

 

素材のダウンロード方法、使い方については以下をご覧ください。

 

[1]木と茂みを描く

木と茂みを描くための「木の葉(黒)」ブラシを作成します。

 

 

 

■1.画像を描く

 

新規レイヤーを作成し、木の葉が3〜4枚集合したような画像を[ペン]ツールを使用して描画します。

 

「木の葉(黒)」ブラシには次の4種類の画像と、それぞれを左右反転させたものの計8つの画像を用意しました。

画像のサイズはおおよそ各4mm×4mmです。

 

 

 

■2.オプションを設定する

 

画像を素材として登録し、新しく作ったサブツール「木の葉(黒)」の先端形状の画像として設定したら、[サブツール詳細]パレットでオプションの設定を行います。

 

(1)[散布効果]を有効にする

[散布効果]の項目にある[散布効果]を有効にします。

[散布効果]を有効にすると、設定したブラシサイズの範囲の中に、エアブラシで粒子をスプレーするようにブラシ画像が散らばって描画されるようになります。

 

広範囲にランダムにパターンを描画したい場合に便利な設定です。

 

(2)ランダムに設定してより自然な変化をつける

[散布効果]を有効にした場合は、画像のサイズは[粒子サイズ]で設定します。不揃いな大きさで描画するためにランダムに設定します。

 

さらに、[粒子の向き]と[繰り返し方法]もランダムに設定します。

 

ランダム設定を加えることで、自然なばらつきを表現できます。

 

 

 

■3.ブラシで描画する

 

「木の葉(黒)」ブラシでは木や植え込みなどを描くことができます。ここでは丸い植え込みを描いてみます。

 

新規レイヤーを作成し、まずは「木の葉(黒)」ブラシで植え込みの輪郭部分と影となる部分を描画します。

 

続けて、植え込みの影ではない部分にトーンを貼ります。

これで植え込みの完成です。

 

同様の手順で四角く描けば道路脇の植え込みにもなりますし、木の幹を描けば樹木を描くこともできます。

 

[2]グレーブラシを使って雲を描く

モノクロ原稿には[表現色]モノクロの素材のみを使わなければいけない、というわけではありません。

CLIP STUDIO PAINTには、グレーやカラーのレイヤーをスクリーントーンのように2値に変換する[トーン化]という機能があります。

 

ここでは、グレー画像を元にした「雲」ブラシの作り方と使い方を解説します。

 

 

 

■1.画像を描く

 

[表現色]グレーの新規レイヤーを作成し、雲の形状を白色で描画します。使用するツールは[エアブラシ]などでも構いませんが、ここでは[水彩]ツールを使用して描画します。

 

[用紙]レイヤーの色が白のままでは雲の形状がわかりませんので、一時的に[用紙]レイヤーの色を変更するか、下に黒く塗ったレイヤーを配置しておくと作業しやすくなります。

 

「雲(グレー)」ブラシには次の6種類の画像と、それぞれを左右反転させたものも合わせた計12個の画像を用意しました。

なお、1つあたりの画像のサイズはだいたい115mm×47mmです。

 

 

 

■2.オプションを設定する

 

画像を素材として登録し、新しく作ったサブツール「雲(グレー)」の先端形状の画像として設定したら、[サブツール詳細]パレットでオプションの設定を行います。

 

「雲(グレー)」ブラシは、次のようにとてもシンプルに設定しています。

 

 

 

■3.ブラシで描画する

[表現色]グレーの新規レイヤーを作成し、「雲(グレー)」ブラシを白色で描画します。

ブラシ画像を作成した時と同様、雲の形状がわかりませんので、空となるグラデーションレイヤーを下に配置して作業します。

 

レイヤーに描画しただけではまだ画像が[表現色]グレーのままなので、[レイヤープロパティ]の[トーン]を有効にするのですが、この際、2通りの方法があります。

 

A)空と雲のレイヤーそれぞれに対して[トーン]機能を使用する

この方法で注意しなければならないのは、空と雲のトーンの網点の位置です。

初期設定では同じ線数の場合、同じ位置に網点が発生するため、それぞれの濃度次第では空の網点が雲の小さい網点にドーナツ状にくりぬかれるという状況が発生してしまいます。

 

このような画像の場合、トーン化前後で印象が変わったり、印刷の結果が意図したものと変わってしまう可能性があるため、[レイヤープロパティ]パレットの[網の設定]→[網の位置]で空か雲の網点の位置を移動させておきます。

※初期状態では、X:0、Y:0になっています。

 

B)空と雲のレイヤーをレイヤーフォルダーに入れ、レイヤーフォルダーに対して[トーン化]機能を使用する

先述の方法の問題点を踏まえた方法がこちらです。

レイヤーフォルダーに対して[トーン]機能を使用することで、網点の位置を調整する手間が省けます。

 

この方法では空や雲のレイヤーのどちらか片方の角度や線数を意図的に変えることはできません。

演出意図などがあり、厳密に調整したい場合にはAの方法を使用すると良いでしょう。

 

[3]手前の柵を描く

最後に、木製の柵を描く「木目の柵」ブラシを作成します。

画像が切れ目なく、ループして延々と続いていくブラシになるように作成します。

 

 

 

■1.画像を描く

 

新規レイヤーを作成し、柵を描画します。

縦軸の木の数を増やすほど、ループした時に繰り返しの画像になっているという感じはなくなりますが、この画像のサイズは大きめだったこともあり、縦軸の木は2本としました。なお、この画像の最終的なサイズは126mm×97mmです。

 

柵の木と木目を描き終えたら、柵の左側半分を囲む矩形の選択範囲を作成し、[レイヤー移動]ツールで、水平に右側に移動します。

 

中心部分の木目がきれいにつながるようにきれいに間を埋めます。

 

ループする柵の線画を描き終えたら、柵の内側を白く塗ります。これで柵の画像の完成です。

 

 

 

■2.オプションを設定する

 

画像を素材として登録し、新しく作ったサブツール「木目の柵」の先端形状の画像として設定し終えたら、[サブツール詳細]パレットでオプションの設定を行います。

 

(1) [リボン]を有効にする

[ストローク]の項目にある[リボン]を有効にします。[リボン]を有効にすると、画像がつながって描画され、ストロークに沿って画像が変形するようになります。

 

(2)[向き]を変更する

[リボン]を有効にすると、タブレットペンのストロークに沿った、自然に連続する模様を描画することができますが、この設定だけではまだ「木目の柵」ブラシは完成しません。

この段階で試しに描画してみると、横につながった柵にはならず、おかしな角度でブラシ画像が描画されます。

 

意図した向きでブラシ画像を描画するために、[ブラシ先端]の項目の[向き]を90度に設定します。

これで「木目の柵」ブラシの完成です。

 

 

 

■3.ブラシで描画する

 

「木目の柵」ブラシは、各種定規にスナップさせることを想定して作成したブラシなので、手書きで描くとふにゃふにゃと歪んでしまい、きれいに描くことはできません。そのため、用途に応じて定規を作成しましょう。

 

(1)水平に描く

水平に描くには、角度0の平行線定規を作成し、定規にスナップさせて描画します。

 

(2)ややカーブして描く

講座冒頭の作例では柵を水平に描いていますが、山の斜面などでゆるめのカーブをさせたい場合もあるかもしれません。その際には、平行曲線定規や多重曲線定規を作成し、定規にスナップさせて描画します。

 

(3)奥行きをつけたい

[ブラシサイズ]の影響元を筆圧にしたり、[入り]や[抜き]を有効にすることで疑似的な奥行きをつけることはできますが、このようなやり方では、次の画像のように画像がやや湾曲してしまいます。

 

そのため、奥行きをつけたいという場合には、いったん水平に柵を描画してから、[編集]メニュー→[変形]→[自由変形]を行うと良いでしょう。

 

[4] 最後に

次の画像は、この講座で解説したデコレーションブラシを使って仕上げた作例です。

 

木の幹と山、トーン以外は、すべてデコレーションブラシを使用して作画しました。

なお、山のふもとの黒い森は、CLIP STUDIO PAINTに初期収録されている「樹木」ブラシを使用しています。

 

デコレーションブラシでの背景作画、ぜひ活用してみてください。

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