レイヤー移動を爆速にするTIPS - テンプレートとオートアクションを活用しよう
はじめに
デジタルで漫画を描くとき、アナログと比べて面倒な点が「レイヤー移動」の操作です。
レイヤー数が多いと、レイヤーパレット上で目的のレイヤーを探すのは大変です。「レイヤー選択」ツールでは、まだ何も描かれていないレイヤーに移動することができません。
「ひとつ上・ひとつ下」のレイヤーに移動する初期ショートカットはありますが、これだけで多くのレイヤーの間を移動するのはやはり大変です。
このTIPSでは「レイヤーテンプレート」と「オートアクション」を活用して、レイヤーの移動や参照設定を「片手のキーボードショートカットのみで行う」方法について解説します。
慣れれば、特殊なトーンや画像素材を貼り付ける場面以外は、ほとんどレイヤーパレットに触らずに原稿を仕上げることができるようになります。
準備:レイヤー名が重複していない原稿ファイルを用意する
まず、いつも使っている原稿サイズにあわせて、よく使うレイヤーのセットをあらかじめ用意しておきます。
このとき、重要なのは「まったく同じ名前のレイヤーやフォルダ」が無いようにすることです。
同じ名前のレイヤーが複数存在すると、ショートカットで移動先を指定しても、その中で「もっとも上にあるレイヤー」が選択・参照されてしまい、うまく移動できません。
後からレイヤーの名前を変更すると、移動用アクションの記録もやり直しになってしまうので、よく考えて設定してください。
私の場合は、モノクロ漫画用として以下のようなレイヤーテンプレートと、これに対応した移動用アクションを用意しています。
「枠線分割」ツールを使って、1つの大きなコマを、小さなコマに分割していく前提のレイヤー構成です。
日本語版:
英語版:
※上の素材セットをそのまま使う場合は、次の項目の(1)と(3)はスキップしてもかまいません。
1:レイヤー移動時の動きをアクションに記録する
レイヤーテンプレートの準備ができたら、レイヤー移動時の動きをオートアクションに記録します。
オートアクションのパレットを開き、赤い●のボタンを押すと記録を開始します。
そのレイヤーに移動する動きだけでなく、参照レイヤーを設定し直したり、下描き用のフォルダをロックしたりする動きも、同時に記録する必要があります。
私の場合は、コマ内にある「ベタ(Fill)」のレイヤーに移動するとき、以下のようなアクションを設定しています。
このアクションでは、目的のレイヤーに移動する前に
・原稿の一番上に配置されている、青と黄色の「選択範囲」レイヤーの表示状態を切り替えることで、「いま編集しているのがベクターレイヤーなのか、ラスターレイヤーなのか」を区別する
・描画に干渉する可能性のある「下描き」レイヤーをロックする
・コマ内のキャラクターの線を含み、背景の線は含まない範囲で参照レイヤーを設定する
といった処理を行っています。
記録が終わったら、■を押して次のレイヤー移動の記録に進みます。
2:記録したアクションをキーボードショートカットに設定する
オートアクションが記録できたら、「ファイル>ショートカットの設定」から、それぞれのアクションをキーボードショートカットに割り当てていきます。
単一のキーや、Ctrl・Altキーとの組み合わせは初期設定のショートカットと重複しがちなので、基本的にはShiftキーとの組み合わせで考えていきます。
下記は、右手でペンを持つ人向けの一例です。レイヤーとキーボードの配置に一定の法則性をもたせ、すべて左手だけで入力できる位置に寄せてあります。
Shift + 2 コマ内のマット(背景が透けないように、下に敷く白レイヤー)
Shift + W コマ内のホワイト
Shift + S コマ内のライン
Shift + X コマ内のベタ
Shift + 1 コマ上のマット
Shift + Q コマ上のホワイト
Shift + A コマ上のライン
Shift + Z コマ上のベタ
Shift + 3 背景のマット
Shift + E 背景のホワイト
Shift + D 背景のライン
Shift + C 背景のベタ
Shift + 4 コマ上の20%トーン
Shift + R コマ上の10%トーン
Shift + F コマ内の20%トーン
Shift + V コマ内の10%トーン
Shift + 5 下描きレイヤー
Shift + T 描き文字レイヤー
Shift + G ひとつ上のレイヤーに移動
Shift + B ひとつ下のレイヤーに移動
Shift + 6 コマ上背景マット
Shift + Y コマ上背景ホワイト
Shift + H コマ上背景ライン
Shift + N コマ上背景マット
Shift + 7 フキダシ上マット
Shift + U フキダシ上ホワイト
Shift + J フキダシ上ライン
Shift + M フキダシ上マット
3:確定したレイヤーテンプレートを素材登録しておく
オートアクションが正常に動作することを確認したら、ウィンドウ最上部にあるメニューの「編集」>「素材登録」>「テンプレート」から、現在のキャンバスを登録します。
4:新規作成時の設定に、素材化したテンプレートを登録しておく
素材化したテンプレートは、上のように新規作成時のプリセットに保存しておけば、最初からすべてのページに導入された状態で描き始めることができます。
現在開いているキャンバスのレイヤーパレットに、ドラッグ&ドロップして使用することもできます。
素材:モノクロ漫画用のテンプレートとオートアクション
「準備」の項目にも掲載しましたが、私が実際に使用しているテンプレートとオートアクションを元にした素材セットは、以下から無料でダウンロードできます。
おわりに
あなたの描き方のスタイルや、原稿の種類によっては、レイヤー構成をほとんど固定して描くのは向いていないかもしれません。
しかし、「決まった名前のレイヤーに移動するアクションと、ショートカットを設定する」方法だけでも、覚えておくと役立ちます。
たとえば「下描き」や、「下塗り」という名前のレイヤーにジャンプするアクションを作っておくと、活用する機会は多いでしょう。
著者について
漫画「勇者のクズ」を描いています。
日本語版:
英語版:
Twitter:
Comment