キャラクターを引き立てる漫画の背景の仕上げ方

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ユキノコ(Yukinoco)

ユキノコ(Yukinoco)

はじめに

それではいきなりですが、こちらのパネルをご覧ください。

朝の通学路で女学生が[おはよう]と挨拶をしている状況です。

少しキャラクターが背景に埋没していて見辛いのが分かると思います。

葉っぱと髪の黒が重なって見辛いですし、レンガの線の太さがキャラクターの線の太さと差が無く、キャラクターと背景の境界が曖昧で識別しにくいです。

 

今回はこのパネルを加筆修正しながら、キャラクターを引き立てる漫画の仕上げ方をいくつかご紹介していきます、あなたの漫画に合う方法があれば幸いです。

 

ちなみにレンガには下記の素材を使っています。

キャラクターの周りは背景を描かないでスペースを作る。

葉っぱと髪の黒が重なってしまうと見辛いので、キャラクターの髪の毛の周りには葉っぱを描かないで、スペースを作っておきます。背景を描き始める前に注意したいです。

キャラクターと背景が識別しやすくなります。

両者を比較すると下記のようになります。

背景の線の太さをキャラクターの線より細くする。

背景の線の太さは、キャラクターの線の太さと差をつけた方が、背景とキャラクター同士を識別しやすくなります。

このパネルのようなレンガの線は、背景を描く時には細い線で描くのが良いです。

 

 

背景の線は後からでも[線幅修正ツール]で太さを変える事が出来ます。

このようにラスターレイヤーでも使う事が出来ます。

キャラクターの線を太くする。

先ほどは背景の線を細くしました。

今度はキャラクターの線を太くして、さらに背景の線との太さの差を大きくします。

 

キャラクターを選択範囲で囲い、[編集]メニューの[フチ取り]でアウトラインを太くしています。

ただし、髪の毛周りの線は邪魔なので消しゴムで消します。

キャラクターを白い線でフチ取りする。

先ほどと同様に、キャラクターを選択範囲で囲い、描画色を白にして、[編集]メニューの[フチ取り]でアウトラインに白い線を描画します。

 

これによってキャラクターの視認性が向上します。

キャラクターと背景の間にホワイトを描画する。

キャラクターと背景の間に、ガーゼのブラシを使ってホワイトを描画します。

背景を加筆・修正する必要が無いので手軽に出来る処理です。

キャラクターと背景の間にホワイトのハッチングを描画する。

流線ブラシ(Speed line brush)は一度にたくさんの線を描くことが出来るブラシで、平行線定規にスナップすることが出来るので、ハッチングを描画するのに最適です。

 

この流線ブラシを使って、キャラクターと背景の間に白のハッチングを描画します。

ガーゼでの描画より、自然な印象の描写をすることが出来ます。

まず、ベクターレイヤーを作成して、水平方向に平行線定規を設置して、ホワイトのハッチングを描写します。

次に、別のベクターレイヤーを作り、垂直方向に平行線定規を設置してハッチングを重ねます。

このハッチングはベクターレイヤーに描画されているので、線を一本一本、あるいは複数をまとめて調整することが出来ます。

[線幅修正ツール]や[オブジェクトツール]で自由自在にパラメーターを変更することが出来ます。

詳細は以前のTIPSでご紹介したのでそちらを参照してください。

背景の文字の視認性を落とす。

このパネルにはもう一つ問題点があります。背景に書かれた文字の視認性が高い事です。

赤で覆われた部分です。

画面中央左の防火に関するスローガンの文字と、電柱に書かれた商店名の文字です。

 

 

文字は高い視認性と思考処理における優先性を兼ね備えています。

これは読者の漫画のキャラクターやセリフに対する集中力を著しく奪います。

 

その為、背景の文字を崩して、視認性を落とす処理を行う必要があります。

その方法をいくつかご紹介します。

文字の黒をホワイトのハッチングで薄くする。

白のハッチングで文字の黒を削り、薄くします。

黒が弱くなることで、文字の印象や存在感が薄れて、背景に馴染むようになります。

文字をフチ取りして、削る。

新しいレイヤーを作成し、文字のレイヤーのサムネイルを[Ctrl]を押しながらクリックして、選択範囲を作って、[編集]メニューの[フチ取り]でフチの文字を作ります。

文字がギリギリ読めないくらいに、交点部分や先端、長い線の中間部を消していきます。

文字と認識できないように文字を崩すと、背景によく馴染みます。

文字を白文字にしてハーフトーンと組み合わせる方法

まず文字の下に、ハッチングを描いて、ハーフトーンの土台を作ります。

次に、文字を[編集]メニューの[フィルタ]-[階調の反転]で白文字に変えます。

最後にちょっとだけ部分的に加筆して、文字が書いてある感を出します。

 

 

いずれの方法も重要な事は、文字のコントラストを減らして視認性を落とす事です。

キャラクターから離れた位置を暗くする。

ここで一度パネル全体の陰影のバランスを考えてみましょう。

キャラクターにスポットライトが当たってるような明度のバランスの方が、キャラクターを目立たせることが出来ます。

 

キャラクターから離れた場所がキャラクター周りと同じ明るさなのは良くありません。

ほんの少しでも明度に差をつけた方が良いです。

 

パネルの両端の下部が少し明るいので、ハッチングを施して明度を下げました。

これでキャラクターの周りと明度に差が生まれ、視線がキャラクターに集中しやすくなりました。

キャラクターをパネルの上に配置する。

ホワイトの下地を施したキャラクターのフォルダーを、パネルのレイヤーの上に配置する事で、キャラクターが飛び出しているような効果を得る事が出来ます。

この技術の事を「ぶち抜き(Buchi-nuki)」と言います。「仕切りを貫通する」というような意味の日本語から来ています。

 

 

分かりやすく色分けするとこのような感じです。

終わりに

今回一番伝えたかった事は、線一本単位で、漫画の見やすさ・読みやすさが変わってくるという事です。

漫画が読み辛いと読み終える前に読者は離れていってしまいます。

お話の面白さにたどり着くまで読んでもらえないという事です。

今回紹介した技術や視座を参考に、プロの漫画を見てどのような仕上げをしてるのかをよく観察して自分の漫画を描くのに活かしてください。

 

線の一本でさえ読みやすさに影響するという事を忘れないで下さい。

 

 

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